10年前、パクチー料理の専門店を開店しようと思い立ったという、メルマガ『佐谷恭の「パクチー起業論」』の著者で日本パクチー狂会会長の佐谷さん。しかし当時、コンサルなどの専門家たちは口を揃えてやめたほうがいいと「完全否定」しました。それでも佐谷さんはパクチー専門の料理店を開業し、大成功を収めることが出来たのは一体ナゼでしょうか? 飲食業界に革命を起こした男による講演録から、奇跡の軌跡を辿ります。

未経験だからできる〜“ありえない”をブームにするニッチ戦略

「好き嫌いのはっきりしているパクチーで専門店だなんてありえない」

「パクチーを知っている人がどれだけいると思ってるんだ。知名度が低過ぎる」

「あまりに危険だ。まずは業態として確立した焼鳥屋などで経営者としての経験を積んで、余剰資金で趣味に走ればいい」

飲食業の経験が全くない僕が「パクチー料理専門店」を開くと聞き、多くの友人が目を丸くして驚きました。友人の伝手を辿って、中小企業診断士や外食コンサルタントなどに数多く会い、恐る恐る僕の構想をぶつけてみたところ、合計10人以上のいわゆる専門家に「ダメ出し」というか「完全否定」されました。

成功事例からアドバイスする彼らからすると、至極真っ当な意見だと思います。しかし僕は「誰もやっていないこと」をやるのが起業であり、自らの体験・思いを形にしたいと思っていたので、既存の業態で経験を積めという意見に同意できませんでした。

その当時、起業経験のない僕は「いいね!」を求めていました。一人でもそう言ってくれれば気が休まったでしょう。次から次へ相談に行ったのはそのためです。しかし、期待していた答えは得られませんでした。そして「完全否定」を繰り返されてようやく、あることに気づきました。僕は2年以上さまざまな方法で「パクチー」に真剣に接していたのですが、当たり前ですが僕が相談した人は「パクチー」についてじっくり考えたことのある人はいませんでした。「私は好きですがね」と言ってくれる優しい人はいましたが。

「完全否定」が続くと、やがて僕は目の前にグリーンフィールドが広がるのが見えました。

「専門家」も気づいていない新たな分野を切り開けることに気づいたのです。2年半ほど「日本パクチー狂会」の活動を通して僕だけが実感してきたパクチーの可能性。世界で食べられているパクチーが、日本にも千年以上も前に渡来していたにも関わらず広まっていないのは奇跡的だし、柔軟な日本の食文化がそれを受け入れないわけがないと確信しました。

それから10年が経ち、「専門家」が僕のビジネス案をなぜ完全否定したかがよく分かります。

日本における飲食業という文脈に、パクチーはありえなかったのです。僕が焼鳥屋から商売を始めていたら、少し小賢しくなって、パクチー屋には手を染めなかったことは確信を持って言えます。でも僕は何も知らなかったのです。「立地産業」という言葉は勉強しましたが、家賃をたくさん支払う余裕も勇気もなかったのでそのセオリーは無視しました。2階に店舗を構えたら目的来店でも見逃されてしまうことなど想像すらしませんでした。10年間自分の店にたくさんのお客さんを迎え入れ、他店舗の事例も見聞きしました。その上で10年前の意思決定を振り返ると鳥肌が立ちます。

「変化を起こす」にはパッションが必要です。「行動を起こす」には勇気が必要です。

常識や流れを理解しすぎていると、その勇気が引っ込んでしまうかもしれません。経験を積めば慣れることはできますが、経験を積んだからと言って成功するかどうかは別ですし、経験が奇抜な発想を阻害するかもしれません。未経験であること、知らないことは、パッションを行動に移すには最高の条件だと思います。

新しいアイデアを思いつきそれに興奮したら、上司に意見を求めるべきじゃないし、専門家に相談すべきでもないし、経験を積むまで後回しにすべきでもないし、家族の同意を取り付けようとしてもいけません。イノベーションの第一歩には他人の「いいね!」は不要なのです。(つづく)

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出典元:まぐまぐニュース!