アンチェロッティはいかにしてバイエルンの愛とサポート、そして職をなくしたのか?

写真拡大 (全3枚)

2017年9月28日、カルロ・アンチェロッティは突然、監督の職務を解かれ、バイエルン・ミュンヘンより追い出されることとなった。

決定はパリ・サンジェルマン戦での0-3の敗戦から24時間経たずして、また同時にアンチェロッティがバイエルンをブンデスリーガ優勝に導いてから5カ月後に下された。

彼は一部の選手から信頼を失い、非難にさらされている中で職を失ったが、ヨーロッパのサッカー界でも最も成功を収めてきた監督の一人である彼がどのようにしてこの状況に陥ったのだろうか。

初期段階

バイエルンは2015年12月にアンチェロッティを新しい監督に任命したが、それは当時の監督であったペップ・グアルディオラがマンチェスター・シティの監督就任がうわさされたことに対して即座に手を打った形であった。

一般的な見解は、バイエルンがヨーロッパ最高の監督の一人を招き入れたということである。元選手やいわゆる専門家たちはアンチェロッティがミラン、チェルシー、レアル・マドリーやパリ・サンジェルマンといったスター軍団で実績を残した手腕を称賛していたためだ。

そしてしばらくの間はすべてが順調に進んでいた。アンチェロッティ初陣のバイエルンはヴェルダー・ブレーメンを6-0と粉砕し、かつてバイエルンの人気選手としてプレーしたメーメット・ショルは、チームがグアルディオラ体制下の厳しく管理されたサッカーから解き放たれたとさえ称えた。

選手たちも満足していたことは間違いない。フランク・リベリは昨年9月に行われた『Goal』のインタビューに対してこのように答えている。

「カルロは落ち着いた、話しやすい人だね。彼は選手たちのことを愛しているし、それにはみんな気がついているよ。コミュニケーションを取ろうとするし、俺たちと一緒に笑うこともある。毎日のように俺たちの調子を聞いて来るんだ。こうした関係性は重要なものだ。アンチェロッティはすべての面で成功者だね。そうでなければ、こうしたみんなが調和した雰囲気を作り出すことは不可能だろう。それがあるからこそともに成功できるんだ」

また、1カ月後の『Goal』のインタビューで、アンチェロッティはチームの仕上がりについて満足感を得られていることを明かしている。

「このチームは本当に良い状況にあるし、コンディションも良いし、サッカーのことをよくわかっているという印象だ。ベースがしっかりしているので、それを変えようと思ったことはないね。監督というものはそれぞれ自分の哲学をもっているものだから、私はそれを大きな変化をもたらすことなくチームに落としこもうとした。過去3年で、チームは非常に多くのことを学んだ。とても良い状況だが、私も何か新しいことをもたらそうと思う。新たなアイデアを伝えることで、選手たちはより集中して取り組むことができるようになるものなんだ」

この段階では、選手たちはピッチ上に新たに持ち込まれた自由を歓迎し、要求の少なくなったトレーニング・セッションを楽しんでいた。しかしながら、グアルディオラのより厳格なメソッドは批判的に捉えるべきだったのか今となっては疑問が残る。

ターニングポイントは?

アンチェロッティが選手たちからの信頼を維持できないでいることは徐々に露呈されていたが、結果が出ていることでチームのムードは悪くなく、同じ方向を向いて進んではいた。

2016年4月にブンデスリーガ優勝を果たしたことでアンチェロッティ体制の欠陥は隠される形となったが、DFBポカール準決勝でライバル、ボルシア・ドルトムント相手に2-3で敗れたことは一つのターニングポイントだったと考えられる。そこで、アンチェロッティの古いスタイルとそれが長期に渡る成功をもたらすものかどうかについての疑念が生じたのだった。

選手たちとクラブ首脳陣は、2017-18シーズンには事態が好転することを願っていたが、9月上旬にはホッフェンハイムに予期せぬ敗北を喫し、ヴォルフスブルクには2点のリードを追いつかれ引き分けに持ち込まれるなど、すぐにそうはならないことが証明されてしまった。

トーマス・ミュラーはブレーメン戦で勝利した後に彼が”必要とされていない“ことに不満を募らせ、リベリはアンデルレヒト戦の際にユニフォームを脱ぎ捨て、アンチェロッティはロベルト・レヴァンドフスキによるクラブの補強ポリシーへの批判について議論するのにうんざりしているなど、グループ内での欠陥が突如として明るみとなった。

終焉へ近づいたとき

このように彼の手腕に関してすでに疑念が生まれていたが、アンチェロッティはチャンピオンズリーグ・パリの地でとどめを刺されることとなった。

バイエルンはヨーロッパにおいて一躍名を上げてきたチーム相手に、自分たちの力を改めて示す格好の機会であったが、それをすることはできなかった。

アンチェロッティはその日の先発メンバーを試合開始直前に選手に伝えた。何の説明もなしにマッツ・フンメルス、ジェローム・ボアテング、アリエン・ロッベン、そしてリベリが先発の11人に含まれなかったことで、大きな波紋を呼んだ。

屈辱的な敗戦のあと、解任の決断は下され、クラブの会長であるウリ・ヘーネスはアンチェロッティが選手たちを管理できなくなったことを認めざるを得なかった。

「我々は試合に負けたからこの決断を下したわけではない。クラブとしては、チームがこの数カ月に渡り間違った方向に進んでいるという判断をした。そこまで悪いことではないのかもしれないが、事実としてカルロは5人の選手をもはやコントロールできていなかった。キングスレイ・コマンに関してもそうだ。状況を改善不可能なものにしてしまった。監督の立場で、最も重要な選手たちから敵対を受けることなどあってはならない」

ヘーネスは『シュポルト1』のインタビューで解任の理由をそう説明した。

アンチェロッティの最期は

アンチェロッティの失敗は長い間隠されていたように感じる。就任以来開幕から8連勝を飾っていても、チームは期待以上の水準のパフォーマンスは見せることができておらず、選手個々のクオリティが戦術によってカバーされていたのだ。

彼の前任である、完璧を求めたグアルディオラと比べ、アンチェロッティは“そこそこ”でも満足しているようだった。イタリア人指揮官は試合後のインタビューでしばしメディアに対して、選手たちの平均点以下のパフォーマンスに対しても満足している様子を見せ、また細かい戦術に対してあまりに重きを置いているようであった。

アンチェロッティは対峙する相手には目を向けず、そしてクラブの核となるメンバーたちからのサポートが受けられなくなると途端にトラブルに陥るのだった。最も頼りにし、彼がチームを強化する際に最も重要視していた選手の能力を活かすことは最後までできなかった。多くの点でアンチェロッティはバイエルンにフィットすることができなかったのである。彼にとってバイエルンでの挑戦が監督キャリア最後の戦いとなることはないだろうが、失望とともにチームを去ることとなったことは、彼がこれまで残してきた輝かしい偉業に泥を塗ったとも言えるだろう。

文=ニクラス・ケーニッヒ/Niklas Konig