ドリカムの“サブスク全解禁”が日本の音楽市場に与える影響は? 新アルバム発売方法から考える

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 10月1日、DREAMS COME TRUEの全シングル、アルバムが主要サブスクリプション(定額聴き放題)型のストリーミング配信サービスにて配信された。

 これまでデジタル配信ではダウンロード配信中心でサブスクリプションには限定的にしか音源を提供していなかったドリカムだが、今回のタイミングが“サブスク全解禁”となる。10月10日にリリースされるニューアルバム『THE DREAM QUEST』もCD、ダウンロードに加え、ストリーミング配信も決定。加えて、新作のCDは全国の郵便局でも発売される。

 2016年9月に世界最大シェアを占めるSpotifyが日本でのサービスを開始し、Apple Music、LINE MUSIC、Google Play Music、AWA、KKBOXなども含めて年々利用者が増えているサブスクリプション型ストリーミング配信サービス。音楽市場の情勢を大きく変えつつあるこのサービスにDREAMS COME TRUEがこのタイミングで音源を提供したことは、筆者としては「ようやく」という感慨もありつつ、おそらく今後の日本の音楽市場の先行きにとって明るい影響を与えることになるだろう。

 というのも、もはや主要国においていまだに“音楽不況”なのは日本だけであるからだ。世界の音楽市場はサブスクリプションの普及によってV字回復を果たしている。国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によると、2016年の世界の音楽市場は約157億ドル。前年比5.9%とプラス成長を見せている。それを牽引するのが躍進するサブスクリプションの収益だ。

 アメリカではその兆候がより顕著だ。全米レコード協会(RIAA)の発表によると、2016年のアメリカ音楽市場は約77億ドルと前年比11.4%増を記録。さらに2017年上半期は前年比17%増と飛躍的な伸びを示している。市場の6割以上をストリーミング配信が占め、CDなどのパッケージメディアが占める割合はもはや16%ほどだ。チャンス・ザ・ラッパーのように、一度も音楽を「売った」ことのないアーティストが巨額の収入を得ることも当たり前になっている。音楽市場の約8割をCDが占め、いまだ「CDが売れない」ことが問題視される日本の状況とは対照的だ。

 もちろん日本においてもサブスクリプションのユーザー数は伸びつつあるが、普及の決め手に欠けていたのは「ヒット曲が網羅されているサービス」ではなかったこと。海外においては、ヒットチャート常連の若手人気アーティストだけでなく、ビートルズやローリング・ストーンズを筆頭に多くの大物アーティストも過去の音源をほぼすべて提供している。そういう意味では、出荷累計100万枚突破のベスト盤『私のドリカム』や裏ベスト『私だけのドリカム』が大きなセールスを記録したDREAMS COME TRUEが今回サブスクリプションに楽曲を提供したことは、日本の音楽業界の潮流が変わる一つのきっかけになりそうな気がする。

 ただし。筆者としては、単純に「これからの音楽業界はサブスクが主流」「CDの時代は終わり」のようなことを言いたいわけではない。ストリーミング配信が当たり前になった時代には、手にとって所有することのできるパッケージメディアの価値は再び増していくはずだ。たとえば、昨年に亡くなったデヴィッド・ボウイの楽曲がSpotifyで累計の再生回数10億回を突破し、その一方で豪華なボックスセットのリリースが続いていることがその象徴でもある。

 そういう意味で言えば、ニューアルバム『THE DREAM QUEST』が全国の郵便局で発売されるというのも、非常に興味深い。ドリカムと郵便局には、かんぽ生命キャンペーンソングに起用された「あなたのように」や、コンサートツアーのタイアップなど、近年深い結びつきがある。ニューアルバムに「あなたのように」も収録されている。そういう意味では、新作が郵便局の窓口で「手渡し」されることにも、単なる販促やマーケティングだけでない意味性があると言えるだろう。

 過渡期の続く音楽業界。いろいろな意見があるが、筆者の予測としては、この先数年で、日本と同じくパッケージメディアが大きなシェアを占めていたドイツと同じように、CDと配信が共存しながら市場が徐々に回復していく未来に向かっていくのではないかと思っている。そして、リスナーに対してより自由な「音楽の聴かれ方」の選択肢が提供されるようになっていくのではないだろうか。そのうえでも、DREAMS COME TRUEの今回のリリースは一つの分水嶺になる可能性を持っている。(文=柴 那典)