“プラチナ世代”の選手たち。左からとりわけ、杉本健勇、車屋紳太郎、昌子源、遠藤航、小林祐希、武藤嘉紀【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

「他にもいっぱいいい選手はいるぞ」。ハリル監督の檄

 2018ロシアW杯アジア最終予選を勝ち抜き、本大会への出場権を獲得した日本代表。10月からは代表メンバー23名の座を争うサバイバルが本格化する。そのなかで注目したいのが92年組、いわゆる“プラチナ世代”だ。W杯での躍進のために、ハリルジャパンでも最大勢力となった現在24〜25歳の選手たちの台頭に期待したい。(取材・文:元川悦子)

----------

 2018年ロシアワールドカップ出場権獲得から1ヶ月。日本代表が10月1日から愛知県内で10月2連戦(6日・ニュージーランド=豊田、10日・ハイチ戦=横浜)に向けた強化合宿に入り、9ヶ月後の本大会へ本格的なサバイバルをスタートさせた。

 初日は昌子源(鹿島)ら国内組9人のみの参加だったが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は約20分間の冒頭ミーティングを実施。前日のJリーグでのパフォーマンスにダメ出しをしたうえで、「それじゃあワールドカップには行けない。他にもいっぱいいい選手はいるぞ」と檄を飛ばした。

 6月の最終予選・イラク戦(テヘラン)から吉田麻也(サウサンプトン)のパートナーに定着した格好になっている昌子も「序列的に僕が(センターバックの)2番目なのかって言ったら、全然そうは思ってないんで」と危機感を露わにしたが、出場機会の少ない選手はなおさらだ。

 8月31日の最終予選・オーストラリア戦(埼玉)のゴールで時の人になった井手口陽介(G大阪)のように急成長する新戦力が次々と出てこないと、ロシアでの躍進は難しいだろう。

 とりわけ、最大勢力に躍り出た92年生まれのプラチナ世代には奮起が求められる。昌子を筆頭に、杉本健勇(C大阪)、欧州組の武藤嘉紀(マインツ)と小林祐希(ヘーレンフェーン)、93年早生まれの遠藤航(浦和)、初招集の車屋紳太郎(川崎)と今回の2連戦には6人のメンバーがいる。

 ケガで見送りとなった柴崎岳(ヘタフェ)と大島僚太(川崎)、欧州での出場機会減で遠ざかっている宇佐美貴史(デュッセルドルフ)も含めれば、9人は名を連ねていた可能性があったのだから、彼らの存在は見逃せない。

 10代の頃から怪物扱いされてきた宇佐美と柴崎、高校や大学でチャンスをつかんだ昌子や車屋、海外へ出て大きく飛躍した武藤と小林など、92年組の成長過程はさまざまだ。

「俺なんか、高校の時はホント無名やった。大津の紳太郎と練習試合で対戦したことがありますけど、トップ下をやってて、『あいつヤベえな』と感じたのを覚えてます。大島僚太もそうやけど、すごいやつはいっぱいおった」と昌子がユース時代を述懐するほど、才能にあふれた選手が多かったのは確かだ。

まだA代表では思うように地位を築けていない

 その彼らも24〜25歳。サッカー選手としての絶頂期を迎えているが、今の日本代表では思うように地位を築けていない。森重真人(FC東京)の不振とケガで昌子がレギュラーの一角を崩したものの、それ以外は出場機会すら満足に得られていない。

 オーストラリア戦で武藤と杉本が揃ってベンチ外になったのを見ても、厳しい現実がよく分かる。ここからその立場をどう変えていくのか。そこは日本代表にとっても重要なテーマと言っていい。

 まずFW陣だが、武藤と杉本が絶対的1トップ・大迫勇也(ケルン)に挑む形となる。大迫の前線でボールを収める力、時間を作るうまさは傑出しており、ハリルホジッチ監督も高く買っている。

 右サイドに久保や浅野拓磨(シュツットガルト)、左サイドに乾貴士(エイバル)や原口元気(ヘルタ)ら矢のように突き進むタイプを置く場合は大迫の重要性が一段と増す。その役割に近い仕事をこなしつつ、それぞれの個性を出すことが武藤と杉本には求められている。

「(前線で)戦うところは監督もつねに求めている。ただ、世界へ行けばもっと強い選手がいる。まずはニュージーランドであったり、ハイチであったり、そういう試合でやれるところを見せないといけない。起点になることだけじゃなく、チームプレーも大事ですし、守備の面も動き出しも点を取ることも全てが大切」とハリルホジッチ監督から「もっとできる」とハッパをかけられた杉本は意気込みを新たにしていた。

 彼の強みは187cmの高さがありながら、技術と速さに優れている点。欧州ではバイエルン・ミュンヘンのロベルト・レヴァンドフスキのような確固たるターゲットマンを擁するチームもあるが、ハリルホジッチ監督もそういう選手がほしいのか、以前から杉本への期待を公言してきた。

 今季J1でのゴール量産でそこに一歩近づいたわけだが、欧州で活躍している岡崎慎司(レスター)、大迫、武藤を超えられるかは未知数。ここでやらなければ先がないというくらいの迫力を見せてほしい。ヴォルフスブルク戦で今季3点目を叩き出した武藤にしても同様だろう。

最大勢力となった“プラチナ世代”。存在感を示せるか

 中盤の小林は香川、遠藤は長谷部誠(フランクフルト)不在のボランチ陣に挑戦状を突き付けることになる。小林はオランダへ渡ってチームプレーに徹することができるようになり、課題だった守備面も大きな改善が見受けられる。

 遠藤は最近のJリーグでDFに入っているため、ボランチとしての戦術眼を磨けないのがマイナス面ではあるが、統率力や発信力は今のボランチ陣の中でも長けている。そういう長所を前面に出して、生き残りを賭けるしかない。

 ハリルホジッチ監督のメンバー固定が最も顕著な最終ラインにも、昌子と車屋が挑むことになる。昌子は前述の通り、完全にレギュラーをつかんだという自覚はない様子。「槙野(智章=浦和)君や弦太(三浦=G大阪)もおるし、森重君もケガが治ったら戻ってくる。絶対に負けたくない」と負けじ魂をむき出しにしている。

 アジア勢以外のゲームは2016年6月のブルガリア戦(豊田)の終盤6分間プレーしただけで、国際経験値は極めて少ないだけに、昌子自身もここから真価を問われることになる。本人は「世界トップレベルを肌で感じたい」と11月のブラジル戦(リール)出場を熱望しているが、それを果たすためにも今回2連戦でやれるという確証を指揮官に与えなければならない。ここは重要な関門になる。

 初参戦の車屋は、長友佑都(インテル)との差は現状では大きいと言わざるを得ないが、左利きの特性を生かして果敢にアタックするしかない。高校、大学を経て、プロになって左サイドバックとして開花したという意味では長友と似たところがある。「いろんなことを話してみたい」と本人も熱望するだけに、先輩のいいところを盗むことから一歩が始まりそうだ。

 この面々が日本代表をかき回してくれれば面白い。10月2連戦は最大勢力の92年組に大いに注目したい。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子