LINE公式の人気キャラクター、ブラウン&コニーも初期は無言(画像左)。新しいスタンプではよくしゃべるように。

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文字のかわりに、キャラクターの画像を送りあう「スタンプ」。LINEがはやり始めたとき、多くのスタンプには文字がなく、画像だけだった。しかし、現在主流のスタンプには「了解」や「ありがとう」といったセリフが付いている。いつから、なぜスタンプに文字が入るようになったのか。ブロガーのいしたにまさき氏がLINEの担当者に聞いた――。

■「文字がない」ことが衝撃だったのに……

LINEのスタンプに、最初は文字がなかったことを覚えているでしょうか。

スタンプでは、筆者はいまだに「横山光輝『三国志』」と「ゴルゴ13」を愛用しています。どちらも2014年リリースとだいぶ前のものですが、なぜ今でも使っているのかといえば、マンガそのものが好きなことと、そこから引用されているセリフと絵のバランスが絶妙だと思っているからです。

でも、12年にLINEがリリースされた直後、配信されていたスタンプは文字がないものばかりでした。絵文字や顔文字しかない時代にLINEスタンプが登場したとき、「文字がない」というスタンプにはそれなりの衝撃がありました。文字がなくても会話が成立している非言語コミュニケーションは、それ以前のネットではほとんど見かけなかったからです。「スマホネイティブ」という言葉が出てくるようになったのも、この時期だと思います。

■いつの間にか「文字入り」ばかりに

ところが、文字を使わないコミュニケーションツールとして登場したスタンプは、いつの間にか「文字入り」のものばかりになってしまいました。人気のスタンプも「文字入り」ばかりのようです。いつからLINEのスタンプは、こうなったのでしょうか? 

ということで、LINEの人に聞いてみました。

「サービスとしてのLINEは、リリース当初からグローバル展開を前提にしていました。それが理由で、公式で出すスタンプは簡単な英語くらいしか文字がなかったのです。特定の言語の文字を入れてしまうと、グローバル運用では邪魔になりますから」(LINEスタンプ事業部・石川康さん)

その前提が大きく変わったきっかけは、14年にスタートした「LINE Creators Market(クリエイターズマーケット)」でした。ユーザーが自分でスタンプや「着せかえ」を制作し、LINEの審査を通ればアプリ上のショップなどで販売できる仕組みです。

「クリエイターズマーケット」では当初から、文字入りのスタンプを審査で制限することはしていなかったそうです。その結果、あいさつや敬語、人名といった文字入りスタンプがどんどん生まれていきました。

「クリエイターズマーケットが登場してからは、その動向がスタンプの流行を左右するようになっています。公式スタンプがその流れに乗っかる場合もあります」(石川さん)

■方言、敬語、吹き出し…四半期に一度流行が誕生

15年からはやり始めたのが、方言ネタを使ったスタンプです。続いて敬語ネタのスタンプもどんどん増えました。その次にはやったのが、「吹き出し」のついたスタンプだったそうです。

「スタンプ自体がトーク画面の吹き出しの形をしており、吹き出しにキャラクターなどが入っています。これまでと少し違う、グラフィカルな表現が受けたようです。最近ではこの吹き出しの中に顔文字が入っていて、その顔文字がちょっと動くものも登場し、より発展をとげています。だいたい四半期に一度ぐらいの割合で何かしらのブームが起きていますね」(石川さん)

なぜ「文字なしスタンプ」は、数を減らしてしまったのでしょうか。その理由を、石川さんは「意味の取り違えが防げるからではないか」と分析します。「たとえば『おじぎ』をしているスタンプがあって、そこに文字がなかった場合、『ありがとう』なのか『ごめんなさい』なのかわかりにくい場合があります。文字が入っていれば、そういうニュアンスの取り違えを防げますよね」。

LINEの公式キャラクターを使ったスタンプや、アニメ・マンガ作品などのIP(知的財産権)コンテンツでも、今や「文字入り」が当たり前です。『スター・ウォーズ』のダースベイダーが「御意」や「NO」と話しているスタンプまで登場しています。これもスタンプがユーザーのニーズに応えてきた結果と言えるでしょう。

そして、今年7月に登場した「デコ文字」では、さらなる文字への回帰が起き始めています。これはLINEの絵文字を文字にしたもので、懐かしのガラケー時代の「デコメ」が再来したようにも思えます。

「デコ文字は、現段階では『将来的に表現の幅を広がられればおもしろいかな』という試験的なものです。表現が広がっていくと、さらにコミュニケーションも豊かになりますので、いろいろなものを試しています」(石川さん)

LINEスタンプの流行の歴史を振り返ってみると、つねにシンプルな表現とリッチな表現の間で「揺り戻し」が起きているのがわかります。テキストから画像、動く画像という動きがあれば、「顔文字」が復活する動きもあるのです。ちょっと動くだけの顔文字が、いまさら流行している。そんな21世紀は想像していませんでした。まさか、ここまで顔文字というカルチャーが不死鳥のようによみがえるとはびっくりするしかありません。

■ユーザーが遊び、公式が追う

有料のスタンプを購入しているユーザーの場合、「友人から送られてきたものを気に入って買う」というパターンも多いそうです。

「LINEはやはり10代・20代の利用がアクティブですが、スタンプを購入するのは10代・20代だけではありません。やりとりにカドが立ちにくいものが好まれるようで、白くて丸っこいキャラクターの人気が出やすいですね」(石川さん)

スタンプの種類を増やすほどに、以前に買ったものは奥に移動していくUIを見ればわかるように(編注:設定で並び替えの変更は可能)、LINEというアプリはたくさんのスタンプを使いこなす設計にはなっていません。

それでもこれだけの人が遊んで、はやりすたりの歴史が生まれています。その動きが「クリエイターズマーケット」というユーザー主導の場から勝手に生まれ、運営はそれを追う立場にあるというのは、実に今のネットサービスらしい姿です。

私はそれほどスタンプにこだわりがあるタイプではないと思っていますが、それでもスタンプを1日に1つも使わないことはありません。いまでは当たり前のようにスタンプを使っていますが、これはすごいことです。なぜなら毎日使うものこそが偉大な発明であり、日々の生活を変えていくものだからです。

たかがスタンプ、されどスタンプ。今のスタンプのカルチャーを生み出しているのは、クリエイターズマーケットであるということ、これだけはぜひ覚えておいていただきたいです。

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いしたにまさき
ブロガー、ライター、WEBマーケティングアドバイザー。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Webサービス、ネット、ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』運営。共著に『ツイッター 140文字が世界を変える』(マイコミ新書)、『クチコミの技術』(日経BP社)など多数。そのほかに、内閣広報室IT広報アドバイザー、Evernote コミュニティリーダー、ScanSnapアンバサダー、ひらくPCバッグなどカバンデザイナーも手掛ける。

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(ブロガー、ライター、WEBマーケティングアドバイザー いしたに まさき)