無印良品の店舗(「Wikipedia」より)

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「無印良品」は、それほど安いわけでもないにもかかわらず、好調のようだ。商圏は日本国内に限定されず、海外にも418店を出店し、国内の店舗数を上回る勢いとなっている。筆者のような中年男性ですら、確かに無印良品の店や商品に対して、良い雰囲気を感じてしまう。

 こうした無印良品の魅力は、どのようにして生まれているのだろうか。

 無印良品は1980年に西友のプライベートブランド(PB)として誕生し、1989年に良品計画として独立している。40品目からスタートし、現在は7000品目にまで拡大している。多くのPBが単に低価格のみを訴求してきたなか、いかにして無印良品は徹底した低価格とは一線を画し、おしゃれな人気ブランドになり得たのか。

●無印良品のコンセプト

 筆者はまずコンセプトに注目したい。

 無印良品の有名なコピーである「わけあって、安い」をご存じの方も多いだろう。たとえば、初期のヒット商品である「こうしん われ椎茸」という干し椎茸の安さの秘密は、形の不揃いさや割れているためであり、ダシをとったり切って使う場合が多い干し椎茸において、こうしたポイントはなんら消費者の不利益にならないことが謳われている。

 ホームページには、誕生から続く3つの原則として、「素材の選択」「工程の見直し」「包装の簡略化」が記されている。また、「極めて合理的な生産工程から生まれた商品はとても簡潔です。言わば『空っぽの器』のようなもの。単純であり空白であるからこそ、あらゆる人々の思いを受け入れられる究極の自在性がそこに生まれます」というコンセプトは、実際の店舗や商品に見事に反映されているといえるだろう。

 実に立派なコンセプトだが、このような理想は多くの企業において単なる絵に描いた餅に終わってしまい、具現化できていないのが現実だ。では、なぜ無印良品は実現できているのだろうか。

●シンプルなデザインを生かす業態

 もちろん、経営陣やスタッフたちが強く理念に共感し、全力で取り組んできたというマネジメント的要素もあるだろうが、筆者はSPA(製造小売)という業態に注目したい。

 無印良品のすべての商品は、自社で企画・開発され、流通・販売まで行われている。同様のビジネスモデルには、ユニクロやニトリなどがある。こうしたSPAの強みとして、しばしば中間コストの削減による低価格が指摘されるが、これ以外にも大きなメリットがある。

 1990年代に大ヒットした無印良品のシンプルなCDプレイヤーに関して、仮に量販店で販売するとなると、他社商品との差をつくるために追加的機能を加えなければならない。また、商品を目立たせるためのPOP広告によりシンプルなデザインが台無しになってしまうといった問題が生じてしまう(「モノ・マガジン」<ワールドフォトプレス/775号>より)。

 つまり、必要な機能以外は大胆に削除する、徹底したシンプルなデザインを特長とする無印良品の商品は、企画から販売までをトータルにコントロールできるSPAだからこそ、成立しているというわけだ。

●ユニークな商品開発

 商品開発に関しても、無印良品はユニークだ。

 たとえば、ベッドの改良といえば、「より寝やすく」といった睡眠に関する要素に注力してしまいがちだが、無印良品ではワンルームマンションに暮らす単身者にスポットを当てる。こうした消費者は、ベッドをソファ代わりに使う場合も多いというニーズにこたえ、端に腰かけても深く沈みこまないといった改良を実施している。

 現代の日本社会における低価格化の進展は、技術の成熟化により他社商品との機能的な差別化が困難となるコモディティ化の影響によるところが少なくはない。こうした脱低価格競争の切り札として、しばしばブランドが注目される。しかし、商品やサービスと切り離して語られることが多いブランドに対して、筆者は否定的である。

 無印良品は、日本国内はもちろんのこと海外でも“MUJI”として人気のブランドとなっている。これは単にイメージアップを図るような広告展開を行ったからではなく、自社が消費者に提供したい商品のコンセプト、それを見事に具現化させる仕組みや組織力により、実現している。無印良品の事例は、真の差別化を検討する多くの企業に有益な示唆を与えてくれるだろう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)