配偶者が原因でうつ病に!その時、離婚を切り出されたら成立する?

写真拡大

先日、「教えて!gooウォッチ」で「認知症の夫と離婚したい!必要な条件を弁護士が解説」という記事をリリースした。そのなかで、裁判上で離婚が認められる原因として、民法770条1項4号で、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」と定められていることを紹介した。この記事では認知症がテーマであったが、もしそれ以外の「強度の精神病」になり、その原因は配偶者にあるにも関わらず、離婚を切り出されたとしたら離婚は認められるのだろうか? 弁護士に詳しく聞いてみた。

■「強度の精神病」にうつ病は該当するのか

お話を伺ったのは、弁護士法人みずほ中央法律事務所の林誠吾弁護士。そもそも、「強度の精神病」とは解釈の範囲が広そうだが、民法770条1項4号には社会病理である「うつ病」も該当しうるとのこと。

「『強度の精神病』とは、夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たすことができないほどの重症を指す、と解釈されます。『回復の見込みがないとき』とは、治療を継続しても夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たすことが見込めないときをいいます。うつ病と一言で言っても、その症状には軽度から重度まで相当バラつきがあり、通院して服薬治療を行えば社会生活に復帰できる程度のものもあります。このような場合には770条1項4号による離婚請求は認められないでしょう」(林弁護士)

では、重度のうつ病と判断された場合はどうなるのだろうか?

「うつ病が重度になると、自殺衝動や幻覚・幻聴等の症状が現れ、入院が必要となる場合があります。このような状態では、もはや夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たすどころではないケースもあるでしょう。そのような場合には、民法770条1項4号により、離婚請求が認められる可能性があります」(林弁護士)

しかし、裁判所の裁量によって離婚請求が棄却される場合もありえるとのこと(民法770条2項)。

「判例は、精神病となった配偶者の今後の生活・療養等について『具体的方途』の見込みが立った上でなければ、770条1項4号による離婚請求は許されない、としています。例えば離婚を請求した配偶者が、重度のうつ病となった配偶者の今後の生活を金銭的にサポートすることを約束しているなどの事情があれば、770条1項4号による離婚請求が認められる可能性があります」(林弁護士)

このほかにも、最終的に離婚が認められるかどうかは裁判所の心証によるところが大きいため、あくまでケースバイケースのようだ。

■配偶者のモラハラが原因でうつ病になった場合はどうなる?

では、日常的な罵詈雑言など、配偶者からのモラルハラスメントが原因で重度のうつ病となり、夫婦間の同居・協力・扶助義務を果たせない状況になったとする。本人としては、モラルハラスメントが原因とはいえ今後の生活のことを考えると、離婚を拒否するケースもありそうだ。この状況で配偶者に離婚を切り出されたら、離婚は成立してしまうのだろうか?

「結論として、このようなケースの場合、離婚請求が認められることは極めて稀であろうと考えられます。夫(妻)が強度の精神病になり、回復の見込みがないと判断されれば、形式的には770条1項4号には該当します。しかし、このようなケースであっても、770条2項の適用はありますので、『具体的方途』の見込みが立たないときには離婚は認められません。さらに、これは離婚を請求する側が離婚原因(夫婦関係の破綻の原因)を作り出したケースといえます。そこで、いわゆる『有責配偶者からの離婚請求』と判断され、離婚請求が認められるハードルが極めて高くなると考えられます」(林弁護士)
 
うつ病になるほど追い込んできた配偶者と今後も結婚生活を継続する意義はあるのか……という問題もあるが、看病を放棄され、離婚して逃げられることで何もかも一度に失う事態は避けることができそうだ。もし似たような状況に悩んでいる人がいたら、まずは病気の治療を優先に、元気になってから、今後の行く末をゆっくり考えてみて欲しい。

(酒井理恵)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)