攻撃面では「もっとクロスを入れるべき」と述べたパトリック。空中戦での強みをより活かしたいところだ。写真:田中研治

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[J1リーグ28節]広島 1-1 札幌/9月30日/Eスタ
 
「動いてもボールが来ない」
 
 ミックスゾーンに現われたパトリックは失望した表情で語った。ガックリと肩を落としていた様子が、広島の攻撃が停滞していたことを如実に物語る。背番号39のブラジル人アタッカーを狭いスペースで窮屈にプレーすることを強いた札幌守備陣の勝利とも言える試合だったが、最大の矛でなければならないパトリックが封殺されてしまい、本人も不満を抱えている。広島は攻撃の構成を考え直していくべきなのかもしれない。
 
 現状で最も効果的な攻撃の形はカウンターだ。スペースがあればパトリックはもちろんフェリペ・シウバも違いを生み出す力を持っており、推進力のある柏好文とアンデルソン・ロペスの特徴も存分に引き出せる。ただ札幌戦がそうだったように、対戦相手は簡単にスペースを与えてはくれない。カウンターを発動できなかった時にどうするか。その策を見出せていないことが札幌戦で浮き彫りになった。
 
「もっとクロスの本数を増やすべき」とパトリックが提言したように、空中戦で無類の強さを発揮するパトリックを活かす策は積極的に取り入れるべきだろう。そのためにはサイドバックとサイドハーフがいい関係を築いてサイドで数的優位を作りたいが、柏好文とアンデルソン・ロペスは流動的に動くことが多いため、どうしてもその場の即興になってしまいがちだ。
 
 もっとも、それがヤン・ヨンソン監督の目指している方向性である。きっちりとした約束事を設けてオートマチズムに攻撃を組み立てるのではなく、2列目の選手は流動的に動くことが推奨されている。
「縛られていなくて自由があるのでやりやすい」(アンデルソン・ロペス)
「ロングボールだけでなく、見ていてワクワクするような面白い攻撃ができてくると思う」(柏好文)
 
 2列目の選手たちは意欲的に取り組んでいるが、コンビネーションが具現化されて結果に結実するようになるまでは少なくない時間が必要だろう。
 
 ならば、やはりもっとダイレクトにパトリックを活用すべきではないか。ラフにでもパトリックにどんどんボールを入れることで、ディフェンスラインは圧力を感じて後退する。そこで生まれたスペースを2列目が活用していけば、広島の攻撃にはよりダイナミズムが生まれるはずだ。パトリック頼みでは攻撃は単調になるし、狭いスペースを打開していく力を養っていくことは必要だが、パトリックの強さ、高さを生かさない手もない。
 
 膝の状態は決して万全ではない。それでも「痛みはあるが、チームが自分を必要としてくれている。シーズンが終わった時に『痛くても頑張ってきて良かった』と言えるように頑張っている」と、ブラジル人FWは男気に溢れている。もっと彼に託してもいいのではないだろうか? 残り6試合は、綺麗事を言っていられるような戦いではない。
 
取材・文:寺田弘幸(フリーライター)