目の醒めるような鮮やかなループシュートだった。ブンデスリーガ第7節アウクスブルク対ドルトムント。ドルトムントがアンドリー・ヤルモレンコのゴールで先制したものの、早々に追いつかれ、ホームのアウクスブルクが勢いづくかに見えた23分だった。


アウクスブルク戦に先発、勝ち越しゴールを決めた香川真司(ドルトムント)

 ドルトムントの中盤からのロングパスの処理にもたついたマルティン・ヒンテレッガーとフィリップ・マックス。その隙をついてオーバメヤンがプレスをかけてボールを奪い取ると、マイナス方向にパス。これをヤルモレンコがゴール中央に横パスを送ると、香川真司が右足ダイレクトでシュートした。

「あの瞬間に、ループを狙える(と思いました)。(2016年4月、香川がループシュートを決めた)シャルケ戦じゃないですけど、そういうイメージが湧いて、ムダな力も入らなかったです。あのゴールも素晴らしかったんですけど、あれ以上に、自分で美しいといったらヘンですけど、(美しい)ゴールが決まったと思っている。よかったと思います」

 自画自賛するのもわかるビューティフルゴールに、自ら昨年のルールダービーで決めたゴールを持ち出した。現地ドイツのメディアも「夢のようなゴール」と、やや大袈裟に称えている。

 試合はこのまま1-2でドルトムントが勝利。だが、意外にも香川の様子は歓喜の明るさというよりも、どこか深刻なムードが漂っていた。「いい場面でいいゴールだったのでは?」というのがこの日の最初の質問だったが、答えはこうだ。

「うーん、そうですね。いい入りをしましたし。個人としては、この前のレアル(・マドリード)戦を踏まえて、(レアル戦が)自分自身の現状、評価がわかる試合だったぶん、今日の試合は大事でした。いろいろな葛藤はありましたけど、何しろ監督が代わったということで、自分たちに(影響が)くるのは当たり前で、それ(自分の力)を証明するしかない。そういう意味ではいい結果だったと思います」

 3日前のチャンピオンズリーグ(CL)レアル・マドリード戦で出場機会がなかったことがよほど悔しかったのだろう。

 先週末の前節ボルシアMG戦では途中出場にとどまっていたが、レアル戦要員だからだという見方もあった。本人も「世界一のチーム相手にどこまでやれるか」をとても楽しみにしていた。3-1で完敗したレアル戦後の香川は確かに悔しそうな表情をしていたが、その思いはこちらの予想以上だった。

「レアル戦を見たら、誰もが現状がわかる。なので、自分としてはすごく悔しかったですし、逆にそういう現状だとわかったぶん、それを受け入れるしかなかった。それを踏まえての今日の試合でしたけど、やるしかなかったですし、(実力を)見せるしかなかったです。

 ただ、自分のプレーをすれば必ずチャンスには絡めるし、その基盤がある意味でここ1、2年はしっかりできているので、そこまで焦りはない。(トーマス・)トゥヘル(前監督)のときもそうですけど、結局は勝ち残ってきたという自負もある。新しい場所でも新しい監督でも同じなので、そこはここ2年の経験が生きていると思います」

 香川は6月の日本代表戦で負った脱臼からのリハビリ中にシーズンが開幕した。コンディションだけでなく、プレシーズンのチーム作りにも出遅れたことになる。シーズンが始まっても「少しずつプレー時間を増やそう」と、出場時間について考慮されていると話していたこともある。実際、リーグ戦はここまで7戦のうち先発は2試合のみ。フル出場はない。そんな状態にあっても、レアル戦はあらためて現状を考え直す機会になったというわけだ。

 しかし一方で、今季の香川は先発した試合では必ず結果を出してもいる。やはり先発したハンブルガーSV戦でも得点を挙げているし、CLのトッテナム戦でもアシストを記録している。完全なレギュラーでなくても、ここぞという場面では結果を出す集中力のようなものが見える。

 案外、香川は追われる立場よりも追う立場の方が合っているタイプなのかもしれない。ポジションを守らなくてはいけないというときよりも、「奪い返してやる!」という反骨心を持ったときの方が力を発揮するタイプなのではないだろうか。

 W杯アジア最終予選、香川はオーストラリア戦では出場がなく、サウジアラビア戦には同行せずドイツに戻っている。日本代表でもベンチを温めることが増えてきた香川は、これからレギュラーポジションを奪い返す立場にある。今なら日本代表でも巻き返しが期待できると思わせるだけのパフォーマンスだった。

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