金正恩氏

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朝鮮半島情勢が緊張の度合いを増す中、中国では北朝鮮での軍事衝突、金正恩政権の崩壊、その後の対応について準備を進めるべきという議論が拡散しつつある。

国際政治学者で北京大学国際政治学院の賈慶国院長は、オーストラリアのイースト・アジア・フォーラムへの寄稿文で、「朝鮮半島での戦争の可能性を認め、米国、韓国とコミュニケーションを保ち、北朝鮮の難民と核兵器の問題に備えるべき」と主張した。

中国は双中断、つまり北朝鮮には核兵器・ミサイル開発の放棄を、米国と韓国には軍事演習の中止を求めているが、北朝鮮が応じる気配はなく、軍事衝突の可能性が高まりつつあるとした上で、賈氏は次の5つの項目について中国、米国、韓国で協議を始める必要があると主張した。

◯核兵器・ミサイルの国外流出、拡散を防ぐための管理

◯中国東北への難民収容施設の設置

◯北朝鮮の社会秩序の回復

◯危機が去った後の朝鮮半島における政治のあり方

◯高高度防衛ミサイルシステム「THAAD」の撤去

このような金正恩政権の崩壊を前提にした議論について、中国は北朝鮮をさらに孤立させるとタブー視してきたが、現在の情勢はこのような主張が敢えて論じられる状況に至っているということだ。

実際、賈氏の主張に同調する声が中国の専門家の間から上がっている。

中国人民大学の成曉河教授は香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙とのインタビューで、中国は制裁の最終段階、つまり石油の完全禁輸が行われるまではコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)について米国との協議を行わないだろうと見ている。

しかし、完全禁輸が実施されれば、北朝鮮による先制攻撃の可能性が高まると指摘し、そうなった場合にどちらによる攻撃かを問わず、国益へのダメージを最小化すると同時に、危機後の発言権を最大化するため、中国の素早い行動が求められると主張した。

つまり、朝鮮半島の危機を収拾する過程で中国が発言権を得るためには、核兵器の除去に携わり、中国が最も嫌う米軍の北朝鮮進駐が起きないようにすべきだということだ。

しかし、安易な議論の拡大に釘を刺す向きもある。

吉林大学の孫興杰教授も「中朝国境地帯で核兵器や難民の危機に対する備えをすべきというのはいい考え」だと述べている。同教授はその一方、「北朝鮮はすでに核兵器を保有しており、核武装をしている国で戦争が起きたことはない」として核戦争の可能性は高くないと見ている。

遼寧社会科学院の呂超教授は「難民の大量流入は大きな懸念」としつつも「それについて話し合うのは時期尚早だ。金正恩政権が崩壊する兆しはない」と述べている。

また、中国を代表する国際政治学者として名声が高い賈氏だが、中国政府の政策立案に及ぼす影響力は弱いとの指摘もなされている。