ここ数年、雑誌の付録として万年筆が付くというのも、それほど珍しいことではなくなった。思い出してみれば、かつて『中一時代』とか『中一コース』なんて雑誌の4月号には、万年筆が付いているのが恒例だったりした筆者の世代からすると、懐かしい気にもなるが、万年筆が実用的な筆記具の第一線から離れていた時期の長さを考えれば、万年筆好きとしてはうれしい時代になったものだ。

 

とはいえ、付録に万年筆が増えると、こちらにも欲が出てくる。最初は、どんなものでも「万年筆が付いてくる」というだけでうれしかったのだけど、徐々に見る目が厳しくなっていく。

 

金属軸の重いやつはもういいかなあ、とか、しかし樹脂だと安っぽくならないように作るのは大変かなあ、とか、でも重厚なデザインのものばかりより、普段使えるようなカジュアルなタイプも欲しいなあ、とか。そういう欲が出てきたところで、「GetNavi 2017年11月号」の付録の万年筆である。

↑これが『GetNavi』11月号の付録だ!

 

これが意外というか何というか、軸は金属軸だけれど軽快なアルミ製で、ツヤ消しのマットブラックというシックな仕上げ。しかも、軸が細い。見た感じは、最近の高級ボールペンのような趣で、普段使っているペンケースに入れていても、浮かずに馴染む感じなのだ。

↑付録というと、それなりの個性が大事になるからか、こういうさりげないデザインの万年筆は、かなり珍しい

 

こういう細い軸の万年筆は、昔、まだ万年筆が日常の筆記具として当たり前に使われていた頃は結構種類もあったし、最近でも、セーラー万年筆の「ハイエース・ネオ万年筆」や「DAKSレジェンド万年筆」などがある。だがこの付録の万年筆がうまいのは、マットなブラックという男性的なデザインと、この細身の軸という女性的な形状を組み合わせたことだろう。しかも、スワロフスキーのクリスタルが1粒付属していて、それをキャップの先端などに接着剤で貼り付けることで、さらにガーリーに装飾することができるようになってもいる。

↑付録として、万年筆のほかにスワロフスキーのクリスタルが1粒付いてくる

 

この幅広いユーザー層に対応する構成も、付録の万年筆には珍しい配慮だろう。もっとも、スワロフスキーに関しては、クリップに平らな部分を用意してもらえていれば、よりカッコいい装飾として使えたのに、とは思う。上手く貼れば、クリップの先をスワロフスキーで光らせることも出来るのかも知れないが、手先に自信がない筆者は、スワロフスキーは貼り付けずに使うことになると思う。

 

インクはいわゆるヨーロッパタイプ、「欧州共通規格」のカートリッジがひとつ付属している。替えのインクとなるヨーロッパタイプのカートリッジは、エルバンやウォーターマン、カランダッシュ、モンブランなど多くの海外メーカーが扱っているので、入手は容易だ。国産ではオートやトンボ鉛筆も作っている。特徴としては、ヨーロッパ共通の規格だけあって、インクの色が豊富に揃っていることだ。

↑今家にあったのがブラックとブルーブラックだけだったのだが、さまざまな色のカートリッジをそろえて遊んでみるのもいい

 

ペン先は、パイロットの「キャップレス」よりもさらに小さく、昔のパーカーの万年筆を思わせる形状だけれど、書いてみると、これが普通に書ける。もちろん、ペン先がしなるようなこともないし、筆圧で線の太さが大きく変わるようなことはない。しかし、そもそも筆圧をかけて太い線を書くのはペン先を傷めるだけだし、筆圧をさほどかけなくてもきちんと書けるので、ペン先がしなる必要もない。

↑ペン先は、根元部分をカバーしたデザインだ

 

そう、書いてみると、思いのほかスムーズに書けてしまうのだ。ペン先が小さいため、小さな文字を書くのも簡単だし、ゆっくりと大きな文字を書けば、ペン先の動きやインクフローの加減で、濃淡のある万年筆らしい文字も書ける。アルミの軸は軽く、マットな塗装は滑り止めにもなって、手に良く馴染む。

↑ペン先の平たくなっている面を上にして、ペンをやや寝かせて書くと、よりスムーズに書ける。ペン先の方向とクリップの方向を合わせておけば、正しい位置で書き始めやすい

 

もちろん、“素晴らしい書き味”と言う気はない。でも、普通に筆記具として使える水準には達しているし、持ち歩きやすいデザインなので普段使いのペンの仲間に入れても問題ないレベル。初めての万年筆としても悪くないと思う。

 

もし、使っていてインクの出があまり良くないと感じたら、カートリッジをしっかりと押さえて、奥まで差し込むようにしてみるといいかも知れない。個体差かも知れないが、筆者の場合、カートリッジをしっかりと差し込むのに、それなりの力が必要だったし、丁寧に真っ直ぐ差し込まないとうまく装着できなかった。しかし、いったんきちんと差し込めれば、インクはスムーズにちょうど良いくらい出て、キャップを外せばすぐに書き出すことができた。

 

個人的には、十分実用に耐える万年筆に仕上がっていると思った。キャップに施された「gn」のロゴもかわいい。もともと、こういう飾り気のない細身の軸が好きなのだ。

↑『GetNavi』2017年11月号(税込・780円)は現在、大好評発売中だ

 

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※電子版には万年筆は付属しません

 

商品撮影/高原マサキ(TK.c)