アンチェロッティだけに負わせられない責任…バイエルンが抱える問題の所在とは?

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カルロ・アンチェロッティの終焉は突然やってきた。時折噛み合っていないところも見せるネイマール、キリアン・ムバッペ、エディンソン・カバーニのパリ・サンジェルマン(パリSG)の誇るオールスターがとどめを刺した形とはなったが、実際にはその前兆はすでに起きていた。 

バイエルンはアンチェロッティの下では、ブンデスリーガで3連覇を果たしたペップ・グアルディオラ監督時代に見せたようなインテンシティや流れるようなプレーを最後まで見せることはできなかった。

昨シーズン、アンチェロッティはバイエルンに新たなリーグタイトルをもたらしたが、ロベルト・レヴァンドフスキやチアゴ・アルカンタラのような素晴らしい選手を抱えたチームでは、アンチェロッティがもたらしたもの以上の何かを求めていたというのが関係者の共通認識であった。

さらに、チャンピオンズリーグでの競争力は落ちてしまい、アンチェロッティに率いられたバイエルンはCLにおける6つのアウェーゲームでわずか2試合しか勝利することができなかった。その他4試合は全て敗北を喫し、その中にはパリSG戦での衝撃的な敗北も含まれる。

「あれはバイエルンではない」

パリSGとの試合後に、CEOのカール・ハインツ・ルンメニゲはチームのことをそう評した。フランスで今シーズン最悪のパフォーマンスを披露したとともに、イタリア人監督の下での15カ月において最後の日となった。

今季の国内リーグでの出来はアンラッキーだったということで済ませられるかもしれないが、パリSG戦でのあまりに安定感の欠いたパフォーマンスは、それが次からも続いてしまうかもしれないという兆候のようなものだった。

一貫性があるわけではないが、ホッフェンハイム戦での敗戦とヴォルフスブルク戦で2点リードから追いつかれてのドローは、その先にやってくるトラブルを暗示した。

パリSGはバイエルンの選手たちに時間を与えないほど激しいプレスを巧妙に仕掛け、前半45分間のみでドイツ王者を打ちのめした。そして、その苦しい状況の中で、アンチェロッティはハーフタイムに何の手を打とうともしなかった。より正確に言えば、打てなかったのだ。

試合後、アリエン・ロッベンは監督を支持することを拒否し、57歳の指揮官は戦術について多くのことを語りすぎだと言い放った。

ロッベンはショッキングなことに、試合開始をベンチで迎え、彼の脇にはフランク・リベリやワールドカップ優勝コンビのマッツ・フンメルスとジェローム・ボアテングも座っていた。

代わりにセンターバックを務めたハビ・マルティネスと新加入の二クラス・ズューレは、彼らの代わりに選ばれたことが正解だったと証明するプレーを見せることはなかった。マルティネスはネイマールのゴールにつながるミスを犯し、ズューレは試合を通してムバッペを自由にやらせすぎた。

アンチェロッティは彼の選んだメンバーに関して山ほどの批判を浴びた。攻撃においては幅もスピードも作ることができず、ロベルト・レヴァンドフスキはゴールを生み出すマシーンのような存在であるが、ボールが入らなければ何もできない。

アンチェロッティの下でのバイエルンはスピードとシャープさに欠けていたが、クラブ内部の人間によればそれはグアルディオラ時代に比べて、緩いトレーニングが原因であるようだ。

疑いなく今のバイエルンは成功を収めてきたチームであるが、同じメンバーで年を重ねてきた。それに関してアンチェロッティに非があるわけではない。ルンメニゲとウリ・ヘーネス会長はまるで無関心を装っているようだが、この2年間の夏の移籍市場で獲得した選手のうち満足できるパフォーマンスを見せているのはフンメルスだけだ。アンチェロッティが望んで獲得したハメス・ロドリゲスも、現所属選手以上のプレーを見せているとは言い難い。

バイエルンは、昨今の移籍金が高騰した市場においてトップクラスのタレントの獲得に巨額な移籍金を費やしていない数少ないトップクラスのうちの一つである。それは間違いなく称賛されてしかるべきことではあるが、レヴァンドフスキが警鐘を鳴らしたように、それによる影響はいずれ出る。いやすでに少しずつ出始めているといえる。

そしてレヴァンドフスキだけが不満を持っているわけではなく、リベリ、ロッベン、ミュラーも今シーズンここまで、監督に対して批判的であった。パリSGはネイマールとムバッペという若きクラック獲得におよそ4億ユーロを費やした一方で、バイエルンはいまだに33歳のロッベンと34歳のリベリが不可欠な存在である。ドグラス・コスタは移籍し、キングスレイ・コマンも彼のポテンシャルを発揮できずにいてベテラン2人の後継者探しは難航している。

さらに、昨シーズン通してのトーマス・ミュラーのスランプは今シーズンも続いている。フィリップ・ラームは、彼の後継者となるヨシュア・キミヒがビッグゲームで信頼できる存在だとアンチェロッティが納得できる前に引退しなければならなかった。負傷による長期離脱を余儀なくされているゴールキーパー、マヌエル・ノイアーと2番手のスヴェン・ウルライヒの間にはクオリティにおいて大きすぎる差がある。またレヴァンドフスキのバックアップを務めるワールドクラスのストライカーもいないのだ。

この点に関しては、ルンメニゲ、ヘーネス、そしてスポーツ・ディレクターのハサン・サリハミジッチが責任を取るべきである。

グアルディオラとユップ・ハインケスの下で残したブンデスリーガでの成功により、おそらくバイエルンは間違った安心感を持ってしまったのだろう。アンチェロッティの柔らかいやり方がチームを成功に導くものと勘違いしたのかもしれない。こんなにも早くボロが出てしまうというのは予想外だったはずだ。
 
しかし真実は、クラブがアンチェロッティに真のハイレベルな選手たちを用意しなかったのと同様に、アンチェロッティは成功に不可欠な独自のアイデンティティをチームに植え付けることもなかったのだ。

いずれにせよ、アンチェロッティによる失敗は現在のバイエルンが組織として団結していないということの兆候である。グアルディオラ時代にスポーツ・ディレクターを務めたマティアス・ザマーや、今夏にシュトゥットガルトへと移り、かつてテクニカル・ディレクターを務めていたミヒャエル・レシュケのようなキーパーソンの穴埋めも十分にはなされていない。クラブは国内のライバルから主力選手を引き抜くことで、ライバルを弱体化させ、それによって称賛を手にしてきたのだ。 

しかしその戦略にも限界がある。バイエルンは昨夏、チームを一新する必要があったが、それを軽視した。アンチェロッティはその代償を被った形となったが、新しい監督を任命し、クラブを元の位置に戻すだけでは、単に急場凌ぎにすぎない形となるだろう。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton