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もくじ

ー 「テクノ」満載 当時の未来
ー パワーにまかせてリアを流す
ー BMW 850CSiのスペック

「テクノ」満載 当時の未来

1989年フランクフルト国際モーターショーで発表された8シリーズは、フェラーリとM635CSiをミックスしたかのようにフレッシュでシャープに見えた。それでも、かつて流行ったグローバルテクナカラーのTシャツよりも早く時代遅れになってしまった。

自分も1台欲しくて堪らないのだが、テクニカル面のトラブルがどうも気になる。CSi用にM70ユニットが5576ccまでボアを拡大し、さらに徹底的に手を加えてS70というエンジンコードを与えられた。

ゲトラグ製の6速マニュアルギアボックスを装備するCSiは、フロントハブが強化され、ダンパーは硬くなり、スプリングが短くカットされている。

しかし、最大の特徴は、リアを操舵してステアリングアングルを同じ方向に向ける、新設計の車速感応式油圧4輪操舵システムだ。

ピラーレスのプロフィールを自信満々に発表したBMWだったが、フロントエアダム、ディフューザー付きリアスカート、そしてエンジンの「Powered by M」のバッチを除けば、CSiをほかのモデルと区別する目印はほとんどない。

インテリアに関しても、違いは同じように控え目で、シフトレバーとステアリングホイールのエンブレム、計器の赤い指針を除けば、ほかは全て標準装備と同じなのだ。

ただし「標準装備」と言ってもこれには特別な意味がある。

パワーにまかせてリアを流す

このクルマはテクノ満載と言えるほど、本当に至る所にスイッチがあるのだ。全てのスイッチに精通するのに、正直なところ2日間もマニュアルに取り組まなければならなかった。

がっしりしたシフトレバーを1速に入れ、スロットルを踏み込むと、V12エンジンのトルクは爆発的に解放される。1975kgと重いため、今回の4台の中で0-96km/h加速は最も遅いが、その差はわずか0.1秒だ。

スポーツモードに切り替え、スロットルのセッティングをアグレッシブにしても、ベルベットのように滑らかに走ってゆく。優れた加速性能とキャビンの中の静謐さは驚くほど対照的だ。

ステアリングギアレシオが高いため、低速時にも意外なほど操舵性に優れている。コーナリングでは、4輪操舵とASC+T(オートマティックスタビリティコントロール+トラクション)のお陰で、予想を遙かに超えたハンドリングを示す。

フロントが重いためにフェラーリのような本質的なバランスの良さはないが、心ゆくまで楽しめるクルマだ。フロントが突然グリップを失うことはないから、パワーにまかせてリアを流してコーナーを抜けられる。

550psのエンジンを搭載したM8プロトタイプを生産化しなかったのはまことに残念だが、当時の厳しい市況を考えればやむを得ない。

一方で850CSiは、Mの文字を与えられていないが、事実上のMカーだと言うひともいる。このBMWは、今でもヨーロッパ大陸を制覇できるだけのポテンシャルを持つが、コンディションの良い中古車を見つけるのはなかなか難しい。

BMW 850CSiのスペック

■生産期間 1992〜1995年 
■生産台数 1510台 
■最高速度 250km/h 
■0-97km/h加速 5.9秒 
■乾燥重量 1975kg 
■エンジン V型12気筒5576ccガソリン 
■最高出力 377ps/5300rpm 
■最大トルク 55.6kg-m/4000rpm 
■ギアボックス 6速マニュアル