『将棋めし』は『月刊コミック フラッパー』(KADOKAWA)にて連載中

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 内田理央主演で放送中のドラマ『将棋めし』(毎週水曜日26時半〜、フジテレビ系)。原作となった同名漫画の著者・松本渚氏は、藤井聡太四段の快進撃でマスコミ各社が対局中のメニューに注目する前から、「将棋とめし」を題材に作品を描いてきた。

 同作の主人公は女性プロ棋士・峠なゆた六段。盤面を睨みながら昼食に思いを馳せ、食事をきっかけに糸口を見出したり、対局者が何を注文するかで相手の手の内を分析したりという、心理戦の様子などを描く。自身も10年ほど前から将棋に触れ、主に「観る将」(スポーツ観戦のように見て楽しむファン)として将棋を楽しんでいるという松本氏だが、この作品を描くようになったきっかけは何だったのか。

「盤面を解説するには膨大な時間がかかります。例えば藤井四段がどう強いのかという説明をする際、“ここでこの手を指すから強いんです”という話をされても、将棋のわからない人にはさっぱりだと思う。どうすれば将棋の面白さをわかってもらえるか、なかなか難しいと思っていました。

 そんな時、対局を見ていて閃いたんです。中継では棋士が昼食に何を食べるかのアンケートやクイズをしていたりする。食事に関するエピソードや逸話を持っている棋士が多くて、これなら個性を出せるし、将棋がわからない人でも入りやすい入り口になるかもしれないと思いましたね」

 対局中の食事はその棋士の人となりを表現する。それを裏付けるエピソードがある。

「例えば加藤一二三先生が引退まで昼夜、鰻を食べ続けたというのは有名ですね。ある意味、棒銀一筋だった一二三先生の棋風を象徴する話だと思います。賛否両論あると思いますが、一つのことにこだわるタイプの方だと感じました。他には佐藤康光先生。冷やし中華に餅を追加して注文したことがありました。何を考えているんだろうと思いましたが、先生の棋譜自体が独特な『緻密流』。不思議な手を指されて勝たれる方なので、それもまた先生なのかなと思いましたね」

 作中に出てくる店はすべて実在の店とあって、将棋ファンだけでなく、将棋をあまり知らない層にも楽しめるようになっている。今のところ、架空の店を作品内に登場させる予定はないという。

「できる限りリアリティを保ちたいというのもありますし、せっかく読者が将棋とめしの漫画を読んでくださったなら、自分も食べてみたいという気持ちになってほしいので、その時にその店があればと思います。そういう楽しみ方もできれば、また漫画の楽しみ方も広がると思います」

 将棋は対局だけではないと感じているという松本氏。

「対局中に棋士が食べる食事もまた対局の一部だと思います。これから将棋を観てみようという方には、そういうところを見て楽しんでいただけたら嬉しいですね」

※週刊ポスト2017年10月6日号