2018年9月をもって引退することを発表した、歌手の安室奈美恵さんが9月26日、公式サイトに「マスコミの皆様へ」と題する文書を発表。「家族、スタッフに対する過度な取材を止めていただけないでしょうか」と、過熱する報道陣の取材に配慮を呼びかけました。芸能人やその家族のプライバシーと報道との関係はどのようなものでしょうか。アディーレ法律事務所の時光祥大弁護士に聞きました。

芸能人は「みなし公人」とする考え方

 まず、安室さん本人は「公人」として、ある程度の取材を受け入れなければならないのでしょうか。

「一般的に、議員や公務員など公務に関わる職種は、公人にあたると言われていますが、芸能人は公人にはあたりません。しかし『みなし公人』という言葉があり、芸能人などの有名人も公人に準じて扱うべきだとする考え方や、自身の私生活を切り売りして活動する芸能人は取材に対して、一般人よりも受忍すべき範囲が広いとの考え方もあります。芸能人は公人に準じて扱う余地が残るのです。しかし、芸能人本人ではない家族やスタッフは、公人に準じて扱うべきではありません。特に、芸能人本人の活動と関わっていない家族は完全に私人として扱われるべきです」(時光さん)

 とはいえ、安室さんが発表した文章は法的拘束力を持つものではなく、あくまで「お願い」に過ぎないとのこと。自粛を促すのが精いっぱいのものといいます。

「ただし、家族やスタッフの取材に際して建造物に無断で侵入すれば犯罪(建造物侵入罪等、刑法130条前段)となりますし、犯罪にはならなくても、プライバシー侵害で損害賠償請求(民法709条、710条)ができる可能性もあります」

 これまでも、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが妻の故・小林麻央さんのがん発表に際して、同様の訴えをして話題となりましたが、一般に芸能人とプライバシーの関係については、どのようなことが言えるのでしょうか。

「個人的には、これまで顔を売ってきた芸能人本人のプライバシーは一般の方よりも制限されることはやむを得ないこともあるかと思います。また、スタッフでも、芸能人と深く関わって一緒に顔を売ってきた場合、受忍すべき範囲が多少は広がるのではと思います。ただし、関わりの深くなかったスタッフや家族は一般の方と同じく、そのプライバシーは最大限尊重されるべきだと思います。少なくとも、取材にあたってはできる限りの配慮が求められるべきではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)