9月29日に発売したホンダのミニバン「ステップワゴン スパーダ」。派生モデルながら、ノーマルモデルを上回る売れ行きだ(写真:ホンダ)

看板車種を不振から挽回させられるか。ホンダはミニバン「ステップワゴン」を一部改良し、9月29日に発売した。

今回の改良で力を入れたのが、派生車種の「SPADA(スパーダ)」だ。2016年度の販売実績では、丸みを帯びたノーマルデザインのステップワゴンの割合が実は2割にとどまる。残り8割と圧倒的なシェアを占めたのが、スパーダだった。

ミニバンはいかついデザインが人気

スパーダは、”いかつい”スタイリッシュなデザインが特長の「エアロタイプ」と呼ばれる種類のミニバンだ。ステップワゴンの2代目から登場した派生車種だが、2003年の発売当初から年間販売台数でステップワゴン全体の過半を占める勢いがあった。ここ5年ほどで、スパーダの比率が一層高まっている。


(出所)ホンダ

エアロタイプが支持されているのはホンダだけではない。ステップワゴンの開発責任者を務めた齋藤葉治氏は、「ミニバン市場全体がエアロモデルに移行している」と分析する。

特にステップワゴンのほか、トヨタ自動車の「ヴォクシー」や日産自動車の「セレナ」といった中型ミニバンでその傾向が強く、中型ミニバン市場の7割がエアロタイプだという。「実用性が重視されたのは昔の話。今はデザインや安全性がより求められている」(齋藤氏)。

今回のマイナーチェンジでは、ノーマルモデルは旧型の丸みのある優しいデザインに手を加えなかった一方で、スパーダはヘッドライトやフロントグリルのデザインを洗練させた。


ノーマルモデルのステップワゴンは、丸みを帯びたデザインだ(写真:ホンダ)

ノーマルとの違いを際立たせるための設計過程では、「ステップワゴン スパーダ」の車名から「ステップワゴン」の冠を外すことも社内で議論されたという。結局、ステップワゴンの知名度の高さを考えて見送られたが、それだけスパーダの存在感が大きくなっている証だろう。もはや単なる派生車種ではない。

「スパーダ」にはモデル初のハイブリッド搭載

スパーダ重視の姿勢は、デザイン以外にも見て取れる。今回のマイナーチェンジでは、ステップワゴンとして初めてのハイブリッドモデルをスパーダにのみ追加したのだ。


「スパーダ」は内装もシャープな印象だ(写真:ホンダ)

スパーダに搭載したのは「スポーツ ハイブリッド i-MMD」と呼ばれるホンダのハイブリッド(HV)システムで、セダン「アコード」やミニバン「オデッセイ」といったステップワゴンよりも上位の車種向けのシステムだ。

ワンランク上のシステムを採用したことで、「同車格の他車のHVよりも仕上がりや質感を高めることができた」と開発責任者の齋藤氏は自信を見せる。実際、同等サイズの他社のミニバンを上回る、ガソリン1リットルあたり25キロメートルの燃費を実現した。齋藤氏は一方で、「燃費そのものよりも電動車ならではの加速感も楽しんでもらいたい」と強調した。

HVシステムの搭載で上乗せされるコストは約50万円だ。ノーマルモデルは主婦層など価格にシビアな顧客が多いため、「収益性を考えると、ノーマルにHVを載せるのは難しかった」(齋藤氏)。

加えてスパーダHVには、従来の安全運転支援システム「ホンダセンシング」に、時速0キロメートルから前方の車に自動追従できるアダプティブ・クルーズ・コントロール機能を追加して搭載。改良点は盛りだくさんとなった。

近年のステップワゴンは販売が低迷

1996年に初代が発売され、国内のミニバンブームを牽引したステップワゴン。当初は年間10万台前後の販売台数をたたき出してきたが、近年は4〜6万台の水準だ。2015年度に5代目を発売したものの、販売が不発だったことが大きい。


5代目はトランクがドアのように開く「わくわくゲート」をアピールしたが、販売は振るわなかった(写真:ホンダ)

他社がHVのミニバンを相次ぎ投入する中、ステップワゴンにもHVを待望する声が高まっていた。今回、売れ筋のスパーダにHVモデルを用意したことで、日本本部営業企画部の澤本正悟主任は、「他社からの乗り換え客を引っ張りたい」と大きな期待を込める。

スパーダの販売台数がノーマルモデルを上回るようになったのは、2008年度から。およそ9年を経て、ホンダはようやく消費者のニーズに寄り添う決断をした。存在感の薄くなったかつての看板車種へのテコ入れは、吉と出るか。