太古インド発祥の「人間の取説」とは? アーユルヴェーダ専門家に話を聞いた

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ホットヨガにオイルマッサージ、オイルプリングに体幹ストレッチ……広く知られる美容法の多くが、インドの伝統医療「アーユルヴェーダ」を基にしている、と言ったらみなさんは驚くだろうか。美容だけではない。現代日本の外食やコンビニ飯でさえハーブやスパイスを効かせた料理が充実している点を見ても、日本人の日常にアーユルヴェーダはじんわりと根付いてきたように思われる。

「教えて!goo」にも「アーユルヴェーダの体質診断」について専門的な質問が寄せられており、関心の高さがうかがえる。そこで今回、アーユルヴェーダスクールなどを主宰するジヴァ・ジャパン・アーユルヴェーダ代表、文分千恵さんに詳しく話をうかがった。

■アーユルヴェーダとは「人間の取扱説明書」

ジヴァ・ジャパン・アーユルヴェーダによると、アーユルヴェーダとは、いまから5000年前に遡るといわれる太古のインドで発祥した「生命とヒーリングの科学」で、医療システムであると同時に人間科学でもあるという。その範囲は食事、ライフスタイル、日々の過ごし方、季節の過ごし方、年齢層別の過ごし方、心のあり方、精神性など多岐にわたり、生きていく上での指針を与えてくれるそうだ。

文分さん曰く、「予防医療として世界的に注目されて」おり、日本でもよく知られているオイルマッサージは心と体の不調を癒す治療法の一つ。アメリカで流行したココナッツオイルでうがいするオイルプリング(本家ではごま油を使う)も健康維持法・口腔衛生法の一つだ。

文分さんによると、アーユルヴェーダには「人間の取扱説明書」という面もある。「人間が生涯を通じて健康と幸福を得るための方法を追求した医療であり、また生き方でもある」とし、「体、心、意識という人間を成す全てが取り扱いの対象となります」と続ける。

■「おばあちゃんの知恵袋」から「学問」へ

昔のインドにおいては医療の全てだったというアーユルヴェーダ。その衰退と復興の経過については諸説あるようだが、文分さんは「19世紀後半頃からインドがイギリスの統治下におかれると同時に西洋医療が流入。無意味な民間医療と見做され排斥されていったのです」とみている。

ただし、「その間もインドの家庭では『おばあちゃんの知恵袋』のように一部は実践され続けた」と文分さん。その民間医療が「20世紀後半、ヨーロッパやアメリカで注目されるようになり、インド国内でも脚光を浴び始めた」と現在に至る経過を説明する。

かつてはヴァイディアと呼ばれるアーユルヴェーダ医が一家相伝で継承していた治療ノウハウも、現代では多くの大学に学科が設けられ、「アーユルヴェーダ医師免許」をもつ医師が大手アーユルヴェーダ病院に勤めたり開業したりしているという。

インドでは医療の一つとして定着した現状が分かったが、さらに「個人個人の体質に合わせたアドバイスを行うため、カスタマイズ医療の元祖と考えられており、いまや世界保健機関(WHO)も認める伝統医療なのです」(文分さん)とのことだ。

■アーユルヴェーダに学ぶ

日本では美容面ばかりがクローズアップされがちなアーユルヴェーダだが、忙しい現代社会に疲れた心身を癒やす方法としても、学べることがあるのではないだろうか。

あるインドの著名なアーユルヴェーダ医は日本人の姿をみて、こう言ったという。
「日本には何でもある。豊かさ、清潔さ、整った制度、テクノロジー、高度なシステム。しかし日本人は幸福そうにみえない」−。

「多くの日本人がストレスに苦しみ、体調不良に悩み、生きる方向性を見失っているように見える」と文分さんも指摘する。「ライフスタイルや食べ物に関して、あまりにも自然からかけ離れた生活を送っています」とも。

「人間の内臓やホルモンは自然のリズムのなかで働いているので、自然のリズムを無視した生活は細胞の知性を狂わせ、心と体の調和を乱します」と、知性と自然の調和を重視するアーユルヴェーダの必要性を説く。自然とともに生き、五感の研ぎ澄まされていた太古インドの人々だからこそ気づくことのできた体感だろう。便利なものばかりのあふれた現代の日本人には知覚すらできない。

いま先進国を中心にアーユルヴェーダが世界で注目されている理由について、文分さんはこのように語った。
「生きる土台を見失っているように見える現代人に、命が宇宙とつながっていることを気づかせてくれるからかもしれません」

アーユルヴェーダ……それは現代社会を生き抜く「取扱説明書」であり「知恵袋」であるのかもしれない。

●専門家プロフィール:文分千恵(もんぶ・ちえ)
ジヴァ・ジャパン・アーユルヴェーダ代表。アーユルヴェーダ・エデュケーター。2006年からジヴァ・ジャパン・アーユルヴェーダスクールを主宰。インドのアーユルヴェーダ医師ドクター・パルタップ・チョハンに師事。

●ジヴァ・ジャパン(株式会社ヘルス・プロモーション)
アーユルヴェーダを通してすこやかな健康維持に貢献するため、さまざまな活動を行っている。アーユルヴェーダを学ぶためのスクール運営、健康でハッピーな生活を営むための各種セミナー、元気な赤ちゃんを出産するための赤ちゃん講座、健康カウンセリング、健康マッサージ、アーユルヴェーダの専門雑誌翻訳など、活動は多岐にわたる。一人一人が健康でハッピーになれば、社会全体が健康でハッピーになれるという思いがジヴァ・ジャパンの活動を支えている。

(オダギリ)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)