ビジネスマンにおすすめの秋ドラマ3作の見どころとは?(撮影:今井康一、尾形文繁)

9月も本日で終了。テレビ業界は秋の改編期で、まもなく新番組が次々にスタートしていきます。今秋は民放各局ともに動きが少なかった分、新番組の中で注目を集めているのが連ドラ。実際、私のもとには、各局から何度となく力の入ったリリースが届いています。

リリースを見ると、「池井戸潤原作」「ドクターX続編」「クドカン×6人の女優」「櫻井翔校長」「篠原涼子市議」など、キーワードを聞くだけで期待感が募る作品ばかりでした。なかでも象徴的なのは、テレビ局ごとにビジネス的な戦略がきれいに分散していること。各局にどんな事情や狙いがあるのでしょうか。さらに、「これを見ておけば間違いない」というビジネスパーソンにおすすめの3作を挙げていきます。

話題性の日テレ、化学反応を狙うTBS

民放各局の主なラインナップを挙げていきましょう。

まず視聴率トップをひた走る日テレは、ワケありのセレブ主婦が、近所の主婦たちが抱えるトラブルを解決する「奥様は、取り扱い注意」(水曜22時〜、綾瀬はるか主演、10月4日スタート)。商社マンが校長となって高校の立て直しに挑む「先に生まれただけの僕」(土曜22時〜、櫻井翔主演、10月14日スタート)。人を脅迫することで依頼を解決する“脅迫屋”と女子大生が事件に巻き込まれるクライムミステリー「今からあなたを脅迫します」(日曜22時30分〜、ディーン・フジオカ、武井咲主演、10月15日スタート)。

櫻井翔=校長、綾瀬はるか=奥様、ディーン・フジオカ=脅迫屋という強力主演に話題性をかけ合わせたラインナップ。奇をてらわず連ドラの王道をゆくような戦略は、いかにも業界トップらしい安定感と余裕を感じさせます。

地道な挑戦を続け、視聴率や視聴者からの支持をジリジリ上げているTBSも、“らしい”ラインナップ。老舗足袋企業の社長が、会社の生き残りを賭けて奮闘する池井戸潤さん原作ドラマ「陸王」(日曜21時〜、役所広司主演、10月15日スタート)。6人の演技派女優が、仲間の冤罪を晴らすために大企業の社長を誘拐する宮藤官九郎脚本ドラマ「監獄のお姫さま」(火曜22時〜、小泉今日子主演、10月17日スタート)。産婦人科の医師や看護師らが命と向き合う医療ドラマ「コウノドリ」(金曜22時〜、綾野剛主演、10月13日スタート)。

戦略として見えてくるのは、池井戸潤×役所広司、宮藤官九郎×6人の演技派女優、綾野剛×命という化学反応。その結果、「陸王」はどこまで熱さを生み出せるのか、「監獄のお姫さま」はどこまで脱力を呼べるのか、「コウノドリ」はどこまで感動を誘えるのか。いずれも野心的な作品であり、会社全体の上昇ムードを象徴する攻めの姿勢が感じられます。

シリーズのテレ朝、硬派路線のフジ、わが道のテレ東

TBSが攻めなら、テレビ朝日は守り。しかも、かなり堅固であり、なおかつ手堅くもあるシリーズ作をそろえました。シーズン16に突入する「相棒」(水曜21時〜、水谷豊主演、10月18日スタート)、17シーズン目を迎える「科捜研の女」(木曜20時〜、沢口靖子主演、10月19日スタート)、5シーズン目の「ドクターX〜外科医・大門未知子」(木曜21時〜、米倉涼子主演、10月12日スタート)。

もはや説明無用の強力シリーズであり、「固定ファンをガッチリ囲い込もう」という狙いが見えます。これは「もともと固定ファンの多い刑事・医療ドラマを量産し、なかでも反響の大きい作品を選んで長期シリーズに育てあげる」というロングスパンの戦略。他局がさまざまなジャンルの連ドラを制作する中、「マンネリ」などの声にもブレない姿勢は特筆すべきものがあります。

視聴率やイメージの低迷が続くフジテレビは、夏期にヒットした「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」に続きたいところ。市議を目指す主婦が、社会問題に切り込む政治エンターテインメント「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜」(月曜21時〜、篠原涼子主演、10月16日スタート)。スクールカウンセラーが生徒の死を究明するサスペンス「明日の約束」(火曜21時〜、井上真央主演、10月17日スタート)。凸凹コンビの刑事が事件解決に挑む「刑事ゆがみ」(木曜22時〜、浅野忠信主演、10月12日スタート)。

政治、学校、事件がテーマの硬派路線であり、「視聴者の身近な問題に寄り添ったドラマを作ろう」という戦略が見えます。「業績が苦しいときほど、取引先や消費者の声に耳を傾ける」というビジネスセオリーとしては正解。しかし、視聴者に身近なテーマは、少しでも方向性を間違えると、「全然わかっていない」と言われるなどシビアな目で見られるだけにリスクもあります。

最後に、わが道をゆくテレビ東京は、弱小広告会社に勤めるコピーライターの活躍を描いた「ユニバーサル広告社〜あなたの人生、売り込みます!〜」(金曜20時〜、沢村一樹主演、10月20日スタート)。質店を営む鑑定士が依頼人の問題や事件に立ち向かう「新宿セブン」(金曜24時12分〜、上田竜也主演、10月13日スタート)、通称“愛人教授(ラマン・プロフェッサー)”が愛人の作り方を教える「フリンジマン〜愛人の作り方教えます〜」(テレビ東京系、板尾創路主演、10月7日スタート)。

今秋もテレビ東京は、「絶対に他局とはバッティングしない」オリジナリティで勝負。最初からマスを捨ててコアを狙う戦略ですが、ネットの普及で「コアの熱が発信力となってマスに到達する」というケースもあるだけに、今やアウトサイダーとは言えません。実際、民放他局はテレビ東京の連ドラ作りに注目しているという声をよく聞きます。

ビジネスパーソンにおすすめの3作

ここからビジネスマンにおすすめの3作を挙げていきます。

1作目は、「陸王」。ビジネス界を舞台にした小説と言えば、池井戸潤さん。ドラマとの相性は「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」(TBS系)で実証済みであり、それらと同じスタッフが手がけるだけに、今作も期待していいでしょう。

主なあらすじは、「埼玉県行田市にある老舗足袋業者『こはぜ屋』の4代目社長・宮沢紘一(役所広司)は、業績不振や資金難に悩んだ末に新規事業への参入を決意する。それは、足袋作りのノウハウを生かし“裸足感覚”を追求したランニングシューズの開発だった。しかし、従業員20名あまりの地方零細企業にとって、資金、人材、開発力、大企業との競争力……いずれにおいても困難な挑戦となる」。

テーマは、企業再生と働く人々の絆。「下町ロケット」らと同様に、今作でもビジネスシーンのディテールには池井戸作品らしいリアリティを感じます。たとえば、池井戸作品では恒例とも言える銀行担当者と融資交渉するシーン。「宮沢は銀行担当者の言葉で危機感を募らせ、新規事業への参入を考えはじめる」という心理描写が丁寧に描かれています。

役所さん自身、「宮沢社長は、決して経営者として才能ある人物ではないけれど、彼には人を惹きつける不思議な魅力がある」とコメントしていました。能力のあるエリートの物語ではないだけに、ビジネスパーソンにとってはインスパイアされるところが多いでしょう。

同作は、今年1月1日の「ニューイヤー駅伝2017」で早くも撮影を行うなど、力の入り具合は相当なもの。役所広司さんや寺尾聰さんらベテラン俳優の重厚な演技、竹内涼真さんや和田正人さんらのダイナミックなランニングシーンなども含め、見て損はないドラマと言えます。

35歳の商社マンが学校改革に挑む

2作目は、「先に生まれただけの僕」。こちらも10月スタートにもかかわらず、半年前の4月に放送内容が発表されたほどの力作。高校校長の辞令を受けるエリート商社マン・鳴海涼介に櫻井翔さん、鳴海に反発しながらも目の前の問題と向き合う高校教師・真柴ちひろに蒼井優さん、鳴海の出向に戸惑う恋人・松原聡子に多部未華子さんら豪華キャストが集結します。

主なあらすじは、「とある民間企業が運営する私立高校は、勉強もスポーツもパッとせず、定員割れギリギリで“不採算部門”とみなされていた。学校の経営を立て直すために商社マンの鳴海が送り込まれたが、教育現場をまったく知らない彼は困惑し、コスト削減や受験生集めの営業すらままならない。現場の教師たちにも反発されるなど、『学校の常識は社会の非常識だ!』とストレスを募らせる中、どう打開策を見つけていくのか」。

制作サイドが、「この作品は、教師と生徒たちの友情・愛情を描くありきたりな学園ドラマではありません。未来を支える子どもたちのために、まずは、自分たち教師が意識革命しなくてはならない――。教育を施す、教師たちの人間物語を描きます」と宣言しているように、同作はあくまで“働く側”の人々を描くドラマ。35歳の商社マンが見た教育現場はどんなものなのか? そして、商社マンはどんな方法で学校を改革していくのか? 教育関係者だけでなく、ビジネスパーソンにとっても「僕ならこうするかな」と考えるなど、見応えのあるものになりそうです。

脚本の福田靖さんは、「HERO」「海猿」「ガリレオ」(フジテレビ系)、「DOCTORS 最強の名医」「グッドパートナー 無敵の弁護士」(テレビ朝日系)などを手がけた職業ドラマのスペシャリスト。さらに、演出の水田伸生さんは「Mother」「Woman」「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)などを手がけた社会派の名手だけに、学校や企業に潜む問題をシビアに描いてくれるでしょう。

地位や名声ではなく、仕事の本質を問う

3作目は、「ユニバーサル広告社〜あなたの人生、売り込みます!〜」。朝ドラ「ひよっこ」(NHK)でヒロイン(有村架純)の父親役を演じている沢村一樹さんが、同作の脚本を手がけた岡田惠和さんと早くも再タッグを結成します。

原作は、直木賞受賞作家・荻原浩さんが手がけるユニバーサル広告社シリーズの「花のさくら通り」。荻原さんが「広告の会社に勤めていた頃のことを思い出しながら書いた小説」「自分も周囲もみんなおバカで、なんとなく負け組で、毎日死ぬほど忙しく、それなのにとっても面白い日々でした」と語っているように、苦しくも楽しい仕事の日々がリアリティたっぷりに描かれるようです。

主なあらすじは、「杉山(沢村一樹)は、かつて一流広告代理店の売れっ子コピーライターだったが、自分の力を信じて独立を考えたものの失敗し、弱小会社ユニバーサル広告社に拾われる。さらに不運は続き、会社は寂れた港町のシャッター商店街に移転してしまった。失意の杉山は、シャッター商店街の店や人々を再生できるのか」。

ビジネス目線でのポイントは、「元売れっ子のコピーライターが寂れた町の小さな仕事に向き合う」という設定。どんな町でも人が住んでいる以上、喜怒哀楽につながる仕事があり、地位や名声ではない、働くことの本質を描くような物語になりそうです。

脚本の岡田惠和さんは、「ひよっこ」を見ればわかるように、市井の人々の日常風景を描く名手。「いかにもドラマ」という大きな事件を起こしたり、極端な悪人などを登場させたりしないため、ビジネスパーソンにとっても身近な物語になるでしょう。

各局のエース級スタッフがズラリ

ビジネスパーソンにおすすめの3作は、いずれも仕事や人生のヒントになるほか、笑いなどの癒し要素もあるだけに、ぜひ1話の放送を見てほしいですし、見逃した人もTVerや各局のオンデマンドでチェックしてみてはいかがでしょうか。

ここまで挙げなかった作品にも、ねつ造されたスキャンダルで夫を失ったヒロインが、週刊誌ライターとなり、復讐へと突き進む「ブラックリベンジ」(日本テレビ系木曜23時59分〜、木村多江主演、10月5日スタート)。国が性経験のない30歳以上の男女を集めて教育するというファンタジー作「オトナ高校」(テレビ朝日系土曜23時5分〜、三浦春馬主演、10月14日スタート)、BS放送ではありますが、ひさびさの新シリーズとなる「水戸黄門」(BS-TBS水曜19時〜、武田鉄矢主演、10月4日スタート)などもあり、バラエティ豊かなラインナップがそろいました。

すべてのドラマを視聴している私から見て、今秋は各局とも、近年で記憶にないほどの力作ぞろいです。昨秋は「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)がブームになりましたが、今秋は全体のレベルが高そうという印象。脚本家、演出家、プロデューサーにエース級のスタッフがそろっていることもあり、忙しいビジネスパーソンのみなさんが「わざわざ見る価値がある」作品が多いことは、ここで約束しておきます。