“日本のポピュリスト”小池VS安倍、海外も注視 「政策大差なし、印象の勝負」

写真拡大

 新党「希望の党」を立ち上げ、衆院選に挑む小池百合子東京都知事が、海外メディアでも注目されている。米大統領選のドナルド・トランプ氏の当選は、大衆の支持を得た「ポピュリズム」の勝利だという見方が強いが、小池氏についても、早くも「日本のポピュリスト」だと表現するメディアが目立っている。

 先のドイツの総選挙でも極右政党が台頭し社会民主主義が衰退したように、世界の政治トレンドは、従来の左右のイデオロギー対立から、支配者層VS一般大衆という上下の階層対立に移行したと言えよう。今度の衆院選の海外報道からは、日本でもそのパラダイムシフトが起きているという視点が伺える。

◆ポピュリスト・小池氏は選挙の「ワイルドカード」
 英字アジアニュースサイト「アジア・タイムズ」は、小池氏の動きをズバリ『日本のポピュリズムか?』という見出しで報じている。ロイターも、『日本で新たな政党がポピュリスト・スローガンを掲げて安倍に挑戦』と題した記事を出している。

 ポピュリズムとは、体制側の権力や知識人によるエリート主義と対立する、一般大衆の利益や願望に寄り添った政治信条だと説明されることが多い。この場合の大衆は「純粋な普通の人たち」、エリートは「既得権を手放さない腐敗した人たち」と位置づけられる。

 この観点を小池氏に当てはめると、各メディアが政策面で象徴的だとするのが「反原発」と「消費税増税の凍結」だ。フィナンシャル・タイムズ(FT)は、安倍首相が小池氏を直接批判することを避けているのに対し、小池氏側は「これは“安倍ファースト”の解散だ」と、体制側の利益を守るための大義なき総選挙だとするなど、政権批判を繰り広げていることを強調する。こうしたポピュリズムにより、小池氏が大衆の支持を得れば、「安倍氏の政権は危機にさらされるかもしれない」とFTは書く。アジア・タイムズは、小池氏のポピュリズムが「日本の権力を固めようという安倍晋三首相の野望をひっくり返す可能性がある」とし、同氏を「選挙のワイルドカード」だと表現している。

◆政策面では大差なし
 その一方で、希望の党と自民党とは、政策の違いが少ないという見方も強い。ロイターの記事の『日本で新たな政党がポピュリスト・スローガンを掲げて安倍に挑戦』というタイトルにも続きがあって、『しかし、政治的な違いは少ない』と付け加えられている。「反原発」と「消費税増税の凍結」以外に、憲法改正や安全保障など、これまで与野党で対立していた問題についても、希望の党と自民党の間には明確な政策の違いが見いだせないという見方だ。FTは「彼女の政治信条の多くは、安倍氏のそれの映し鏡だ。彼女は憲法改正を支持し、議論を呼んでいる靖国神社参拝の常連だ」としている。

 シンクタンク、テネオ・インテリジェンスのトビアス・ハリス氏は、そもそも小池氏には違いを作り出す時間がなかったと指摘する。同氏は、これからいかに政策を固めて違いを打ち出すかが小池氏の「本当の試練」だとしている。東京大学の内山融教授も、「タイミングという点では、小池さんはもっと早く党に関わるべきだった。私は希望の党には十分な準備期間はないと思う。彼女が思っていたよりもずっと早く安倍さんが衆院を解散したのかもしれない」と、小池氏が解散総選挙の時期を見誤っていた可能性を指摘する(アジア・タイムズ)。

 ハリス氏は、候補者の人数をどれだけ確保できるかも、希望の党の命運を左右するとしている。そして、小池氏の支持層が集中する首都圏の外に立てる候補者は「他の党からの離脱者になるだろう」と予測する。つまり、民進党が事実上希望の党と合流する動きを見せている中、地方の希望の党候補者は、民進党が最大野党だった従来と代わり映えしないのではないかという見方だ。

◆「安倍対小池の政治ショー」を煽る日本メディア
 希望の党が今のところ「政策」と「候補者」の面で大きな個性を打ち出せていない中で、今度の衆院選は「安倍VS小池」という個人戦の様相を呈しているという見方が強い。FTは、「小池氏のドラマチックな発進は、10月22日の選挙を安倍晋三首相の信任投票から、日本で最もパワフルな2人の政治家の競争に変えた」とし、「日本のメディアは、選挙を安倍対小池のショーであるかのように煽っている」と書く。日本通のジェラルド・カーティス氏(コロンビア大名誉教授)は、「小池氏の党と自民党にはそれほど大きな明暗差はない。(安倍氏と小池氏が)どちらがより有能だという印象を与えるかにかかっている。能力と人柄が問われるのだ」とロイターに語っている。

 また、小池氏が肝心の大衆の支持を得られるかは、都政をないがしろにしているという批判をかわせるかどうかにもかかっている。FTは、都議会で連立を組む公明党から「知事は我々を裏切った」という強い憤りの声が上がっていることを取り上げ、「大衆がその気持を分かち合えば、安倍氏は安堵のため息をつくことになるだろう」と書く。小池氏は今のところ、都知事を辞任する考えはないとしているが、同紙は、小池氏の愛犬の名前が「総理」の略である「そうちゃん」だというエピソードを挙げ、彼女の総理への野心の強さを指摘している。

 FTは、小池氏の「トレードマーク」は、「リスクを負えること」「無慈悲さ」「反体制の劇場型政治」の融合だと書く。10月22日の投開票まで、1ヶ月を切った段階での小池氏の“宣戦布告”は、大きなギャンブルなのか。それとも十分な勝算あってのものなのか。選挙戦が進むにしたがい、それが次第に明らかになっていくであろう。