中高生は専用アプリでさまざまな動画を作成し、SNSで公開する(筆者撮影)

小学生の将来の夢に「YouTuber」が入る今、文字や写真だけではなく、動画や音声を発信することも特別なことではありません。Instagramのストーリーのように気軽なものから、リップシンク動画をトランジションを駆使して作ることも。何のことやらと思った方に、最近のショートムービー事情をお伝えします。

Vineから受け継がれるショートムービー文化


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若い女性たちから始まった「インスタ映え」という言葉は、いまやInstagramを使っていない層にまで浸透しています。カラフルなパステルカラーで彩られた綿菓子、派手に盛られた料理、最高に眺めがいい海辺など、「インスタ映え」する商品や場所が大人気です。はっきりと定義されているわけではないのに、なんとなく共通の認識がある「インスタ映え」をみんなで追いかける面白い現象ですよね。

しかし「インスタ映え」に縛られてばかりでは、少々息苦しくなってしまいます。そこに登場したのがInstagramの「ストーリー」機能です。24時間で自動的に消えるため、盛れていない日常やおどけた動画も発信することができます。また、ストーリーにはスマホに保存している動画も投稿できるため、SNOWやSnapChatなどほかのアプリで作ったムービーも使われます。

短い動画の発信は、ストーリー以前にも行われていました。6秒の動画が無限にループされる「Vine」は2012年に始まり、Twitterを中心に拡散されていきました。当時女子高生だった大関れいかさんをはじめとした人気配信者を生み出しましたが、2016年にサービスを終了しています。

その文化はさまざまな動画配信サービスへと派生しました。中高生に人気のMixChannelもそのひとつで、スマホで撮影した動画を10秒のショートムービーにして発信することができます。中でも人気なのは「双子ダンス」。本当に双子、もしくは仲よしの友達が服装や髪型をそろえて双子のように見せて、振り付けに合わせて踊ります。体全体を使うダンスではなく、手や表情など上半身のみの振り付けが多いのも特徴です。

さらに少し系統が違うショートムービーも人気を集めています。それは、リップシンク、つまり口パクの動画です。

リップシンク動画は専用アプリで作る

中高生を中心に人気のリップシンク動画ですが、ピンと来ない人はタレントの渡辺直美さんがビヨンセをまねする芸を思い出してください。音楽に合わせて、まるで本当に歌っているかのようなそぶりをする口パク動画のことです。

口パク動画は専用のアプリを使うと簡単にできます。Musical.lyはミュージックビデオ専門のアプリで、曲を選んで口パクを自撮りするだけで動画が作成できます。GMOメディアによる「10代女子のスマホアプリに関する調査2017」で、「2017年に流行しているスマホアプリ」の9位にもランクインしています。ただ音楽と自撮りを合成するだけでなく、曲や動きを早送りした動画を作れる機能もあり、コミカルなムービーがあっという間に仕上がります。さらにフィルターや絵文字などで飾ったり、トリミングなど動画を編集する機能も用意されています。


「Tik Tok」で人気の配信者、ねおさん

同様のアプリにTik Tokがあり、こちらは映像をズームイン・ズームアウトさせたり、揺らしたりするような効果を動画の一部に施すことができます。

どちらのアプリも15秒間の短いムービーを作成するため、普段聞いている人気の曲に合わせて口パクするというよりも、同じ音が繰り返されるラップやサビが特徴的な歌が人気です。

ここでも双子ダンスは人気です。また短い動画をつなぎ合わせて画面をどんどん切り替えていく「トランジション」効果のムービー、顔にめちゃくちゃな化粧をしての口パク動画、ボサボサ頭で登場して最後はお化粧して別人のようにキレイになる動画などがはやっています。誰かがやっていると自分もまねをして作る、というパターンが多く、同じ楽曲で何パターンもの動画がアップされています。

両アプリともアプリ内にSNS機能があり、投稿された動画を閲覧することができます。「いいね」やフォロワー数が多い配信者、渡辺リサさんやねおさんは中高生です。彼らはひとつの配信先にとどまらず、YouTubeやMixChannel、LINE LIVEなどの動画配信プラットフォームや、TwitterなどのSNSも駆使して活動しています。

普通の中高生も友達と動画を作っています。人気の配信者が公開した面白動画をまねしてみたり、おそろいの服で双子ダンスを踊ってみたりと楽しんでいます。公開先は動画作成アプリ内ではなく、InstagramのストーリーやTwitter、LINEのタイムラインなど、知り合いに見てもらえるSNSが多いようです。気軽に作れるので、高校生は学校で休み時間に作ることもあるそうです。

「歌ってみた」もスマホで手軽に

自分のダンスを公開するといえば、ニコニコ動画の「踊ってみた」を思い出すかもしれません。ニコニコ動画で配信するには、基本的にパソコンや動画編集ソフトが必要になるため、短い動画を手早く作って配信できるアプリに人気が集まっているのでしょう。

「歌ってみた」もスマホで手軽に楽しめます。音楽でつながるコミュニティアプリ「nana」は、誰かの演奏に歌を入れたり、さらに誰かがコーラスを入れたりと、ユーザー同士で重ね録りすることが簡単にできるサービスです。


nanaの画像。コラボしている人のアイコンが表示される。この曲はボーカル、ギター、ベース、打楽器のコラボで実現されている

一般的に音楽を重ね録りするには、パソコンで音楽制作するDTM(Desk Top Music)の知識が必要です。DAW(Digital Audio Workstation)という専門ソフトやオーディオインターフェース、マイクなどの機材も必要で、初心者にはハードルの高い作業です。しかし、nanaではコラボしたい音源を探して、スマホのマイクに音を吹き込むだけで「歌ってみた」ができるのです。

「nana」は15歳以下のユーザーが26%、16〜18歳のユーザーが38%と、中高生に圧倒的な支持を受けています。ユーザーは世界113カ国、400万人を超えているとのこと(2017年6月 nana公式ブログより)。アプリ上の交流だけでなく、実際に楽器を持ち寄って演奏する「nanaフェス」も開催されています。さらに、本格的に音楽制作をしているDTMユーザーのためにウェブからのアップロードにも対応しました。

nanaで録音できる長さは90秒。1曲すべてを入れることはできません。音楽に本気で向き合っている人には物足りない仕様です。nanaブログによると、【90秒という制約を設けることで歌う/弾く/聴くといった音楽体験への"手軽さ"を追求しています。そうすることで、ひとりでも多くの人のライフスタイルの中に音楽を楽しむ時間が生まれ、毎日が豊かに楽しくなればいいなと願っています。そんな想いから、歌う/弾くのも聴くのも無理なくちょうどいい時間ということで、"90秒"にこだわりを持っているのです。(nanaブログより引用)】と、手軽さを優先している姿勢がうかがえます。

スマホを使って「短く」「手軽に」楽しめる動画・音楽サービスがどんどん生まれています。とはいえ、作り込みたい人には加工できる機能も用意されており、また制限があったからこそ生まれた文化もあります。専門家にしかできなかった動画作りや音楽制作への入り口がスマホで開けるなんて、夢のある時代になりましたね。