小池ゆりこオフィシャルウェブサイトより

写真拡大

「(リベラル派は)排除する」「全員を受け入れることはさらさらない」──民進党の合流決定から一夜明け、本日、小池百合子・希望の党代表はリベラル議員の入党拒否を宣言。このことで民進党の最大支持組織である連合からも「話が違う」という反発の声があがるなど、小池新党をめぐってゴタゴタがつづいている。

 いまこそ良識あるリベラル派議員は第二自民党でしかない小池新党を批判し、本来の「野党共闘」の道を決断すべきだが、一方で問題なのがメディアによる報道だろう。ニュースやワイドショーでは小池代表の一挙手一投足に大騒ぎし、話題も「民進分裂」「小池代表は国政進出するか」などに集中しているからだ。

 だが、こうして"小池劇場"に振り回されつづけるなかで、重要なことが忘れ去られようとしている。「国難」であるはずの安倍晋三首相の問題についてだ。

 今回、安倍首相が解散を決めた理由は森友・加計学園疑惑潰しであるが、同時にこのタイミングであれば、小池新党も準備が整わないまま選挙にもち込めると踏んだことも大きい。しかし、小池はなりふり構わない戦法に出た。安倍首相の解散会見にわざとぶつけて、新党結成と代表就任の会見で先手を打った。しかも、当初20日におこなう予定だった赤ちゃんパンダの命名会見までをも直前にもってくるという「パンダの政治利用」までやってのけたのだ。

 そして、小池の目論見は見事に当たり、同日夜の各局報道番組には安倍首相の生出演のあとに続けて小池代表も出演し、たった1日で「安倍自民党vs.小池新党」という構図をつくりあげ、メディアを利用して世間にすり込むことに成功。翌日には新党旗揚げ会見を大々的に開き、昨日も日本記者クラブ会見にテレビ出演と、完全に新党の話題でメディアをジャックした。

 こうして、「安倍政権打倒」を掲げ、選挙の主人公と言わんばかりにスポットライトの奪取を果たした小池には、リベラル派からも「安倍政権を倒してくれるなら」と期待する声もあがっている。

 しかし、この状況に溜飲を下げていていいわけがない。なぜなら、「打倒安倍」としながら、そのじつ、小池の行動はことごとく安倍首相を利するものだからだ。

 現に、昨日開かれた臨時国会では安倍首相が衆議院を冒頭で解散し、解散後には記者会見すらおこなわないという無責任ぶりをみせたが、メディアは小池、小池の一辺倒。26・27日におこなわれた朝日新聞の世論調査では、安倍首相の消費増税分の使い道を変えるという解散理由に対し「納得しない」と答えた人が70%にものぼり、「納得する」と答えた人はわずか18%という結果が出たように、安倍首相の自分勝手な「大義なき解散」には批判が高まっていたのに、そうした責任論はものの見事に小池旋風によって掻き消されてしまった。

 しかも、小池代表が口にするのは「しがらみのない政治、大胆な改革を築いていく」「日本をリセットする」などと言った曖昧模糊としたスローガンだけで、その一方、安倍首相にとっていちばん大きな急所である森友・加計学園問題は、不思議なほど話題にもち出さない。
 
 さらに小池は、野党4党共闘をぶちこわし、民進党を解党に追いやった挙げ句、「リベラル派拒否」によって民進内部のゴタゴタまで演出してみせた。この泥仕合にもっともほくそ笑んでいるのは、間違いなく安倍首相である。

 ようするに、「打倒・安倍政権」を掲げながら、小池はけっして本気で安倍首相を潰しにかかっていない。その理由は、選挙後を睨んでのことなのは明らかだ。

 本サイトでは既報の通り、自民党も希望の党も、現在の目算では単独過半数の議席をとることは難しく、連立を組まざるを得ない。そして、自民党と公明党で過半数を超えない場合、あるいは希望の党と維新の党で過半数が獲れない場合は、自民=希望の大連立という事態が必ず起きる。

 無論、安倍首相もそうしたことをすでに見越している。実際、解散発表をした25日夜に出演したNHKの『ニュースウオッチ9』でも、「与党だけで憲法改正の発議ができるとは考えておらず、多くの党の賛成を得たい。東京都の小池知事も、日本維新の会も憲法改正には前向きだと思う」と発言し、改憲を目指して協力していくことに前向きな姿勢を見せている。

 小池も同様だ。表向きには「憲法改正は9条にとどまらない」などと安倍首相との違いを強調しているが、改憲に向けた姿勢はまったく同じ。事実、小池は自民党で下野時代の2012年、〈自民党の「憲法改正草案」を丸のみすべし〉とTwitterに投稿。平和主義も、基本的人権も、国民主権もなくして独裁を許す憲法に書き換えたいという欲望は、安倍と何も変わらないのである。

 このように、小池に乗っかって踊るということは、結局は安倍首相を倒すどころか、問題にすべき問題をなかったことにし、悪政に対する責任もとらせないことになる。

 いや、安倍首相だけではない。明日、小池代表は大阪府の松井一郎知事と愛知県の大村秀章知事との会談で衆院選での連携を打ち出す見込みだが、松井知事といえば森友問題における説明責任をまったく果たしていない。大阪府の私学課が小学校設置の基準を満たしていないにもかかわらず審査を受け付けたことに対しても、大阪府の監査委員が疑義を呈する監査結果をまとめたばかりだ。しかし、松井知事は「改革者」ヅラして小池旋風にあやかろうというのである。

 あらゆる問題を消し去り、なかったことにしようとする。まさに小池百合子は「安倍首相のアシスト役」であり、その存在自体が「争点隠し」なのである。倒すべき敵であるはずの安倍首相こそが、いまこの瞬間、笑みを浮かべているであろうことを、わたしたちは想像しなければならない。
(編集部)