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IIJ(インターネットイニシアティブ)が音楽配信事業に注力している。将来のサービス化に向けて、現在はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(以下、ベルリン・フィル)の演奏会をハイレゾの高音質でライブ配信するなどの試みを繰り返している。都内で27日に開催されたメディア向け説明会では、サービスの詳細と今後の展開について熱く語られた。

○DSD11.2MHzの実力はいかに?

今回の説明会では、9月16日にベルリンで行われた、ベルリン・フィルのコンサートを録音した音源を披露。プログラムはマレク・ヤノフスキ指揮、ブルックナーの交響曲 第4番変ホ長調「ロマンティック」。"ブルックナー開始"と呼ばれる弦楽器セクションにおけるトレモロの粒の細かさ、ホルンが奏でる主題の音の柔らかさ、フルートをはじめとする木管楽器群のアンサンブルの美しさを怖ろしいほどの解像度と迫力で楽しむことができた。

実はこの音源、日本時間で9月17日午前2時から無料でライブ配信されたものだ。IIJによれば、リアルタイムで音楽プレイヤーの視聴ボタンを押したリスナーは100名弱ほどだったという。"世界初の超高音質ライブストリーミング配信"との説明通り、DSD11.2MHz / 1bitのハイレゾ音源で提供されている。ではDSD11.2MHzとは実際、どのくらい高音質なのだろうか? IIJ 配信事業推進部の冨米野孝徳氏が詳しく説明した。

上の写真は、商用配信で使用される音源について表にまとめたもの。赤の囲みで示されているのがCD音質のPCM音源で、これより音質が良い(データ量が多い)ものが一般的にハイレゾと呼ばれている。この表では、基本的に下にいくほど高音質となっているが、もっとも下に記載されているのがDSD11.2MHz / 1bitだ。これほど高音質な音源のデータを約2時間、約10,000km離れた外国から日本にライブ配信するわけで、当然ながら相当なネットワーク設備と帯域が必要になる。どのように収録し、どのように送ったのだろうか。

IIJ 配信事業推進部の西尾文孝氏によれば、演奏はホールに吊したSennheiser(ゼンハイザー)の無指向性マイク「MKH8020」×2本で収録したという。音源は現地でエンコードして、ロンドンのIIJサーバへアップロードしてから、IIJバックボーンネットワークを通じて日本のCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サーバに送られた。

「DSD11.2MHz / 1bit配信のポイントは、エンコーダソフトのPrimeSeat Broadcaster、音楽プレイヤーソフトのPrimeSeat、IIJ配信ネットワークだった」と西尾氏。ここでソフトを担当したコルグ 執行役員の大石耕史氏が説明を引き継ぐ。

PrimeSeat Broadcasterは、ステレオのハイレゾ・ライブ・ストリーミング配信が行えるソフトで、DSD2.8MHz〜11.2MHz、PCM 44.1kHz / 16bit〜384kHz / 24bitに対応している。大石氏は「今回の配信のためにバージョンアップし、UIも含めて様々な点を改善した。いまこれを使っているのは制作側の人間だが、今後サービスが普及した際に、個人ユーザーでも使いやすいように配慮した」と述べた。

PrimeSeatは、ハイレゾ・ストリーミング再生ソフト。過去のバージョンからオーディオエンジンを刷新、DSD11.2MHz、PCM352.8kHz&384kHzに対応したほか、各社ハイレゾ対応DACとの互換性向上なども図られている。

今回の配信に際してIIJでは、11.2MHz / 1bit、5.6MHz / 1bit、96kHz / 24bitという3つのストリームを提供した。これは低帯域の通信環境でも受信できるように、との配慮からだ。なおIIJはベルリン・フィルの協力を得て、今回と同様のライブ配信を今後4回にわたって提供する予定。

特に、2018年6月20日20時(日本時間21日3時)に行われるのは、芸術監督のサー・サイモン・ラトルが指揮する最後の演奏会にあたるもので、音楽ファンの注目を集めるのは必至だ(曲目はマーラーの交響曲 第6番「悲劇的」を予定)。今月の演奏会を聴き逃した人も、これから配信されるライブ配信(および聴き逃し配信)を楽しみにしたい。

○遅延は? マネタイズは?

質疑応答にはIIJの冨米野氏、西尾氏が対応した。遅延はあるのか、という質問に冨米野氏は「1分ほど」と回答。これはバッファリングのため。マネタイズについて聞かれると「これから色々と考えないといけない。今後の課題」と答えるにとどまった。

IIJが提供するハイレゾストリーミングサービスPrimeSeatでは、すでに有料配信がスタートしており、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(オランダ)など、世界のオーケストラの演奏を楽しむことができるとのこと。

2本のマイクで収録というスタンスは今後も変わらないのか、という質問に冨米野氏は「その予定。ベルリン・フィルから、マイク2本で録れるプログラムを考えているからと言っていただいた」と回答した。冨米野氏は「ベルリン・フィル・レコーディングスのクリストフさんの、腕の見せどころでもあると思う。ワクワク聞けるんじゃないか」と説明している。