歌手としての魅力が深まった、ヴィンテージ感溢れる意欲作 / 『ヤンガー・ナウ』マイリー・サイラス(Album Review)

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 10年前の2007年6月、アルバム『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ2』で歌手デビューを果たし、全米アルバム・チャートでいきなりNo.1デビューを飾った、マイリー・サイラス。翌年リリースの2ndアルバム『ブレイクアウト』で2作連続の首位獲得、「7シングス」や「パーティ・イン・ザ・USA」など、シングル曲もヒットを連発し、一気にトップスターの座へ躍り出る。

 キュートなビジュアルからベリーショート・ヘアにイメチェンを図り、様々な奇行(?)が話題となった2013年にリリースした4thアルバム『バンガーズ』からは、自身初の全米No.1ヒットとなった「レッキング・ボール」や「ウィ・キャント・ストップ」などが大ヒット。最先端の流行を取り入れた『バンガーズ』の反響を受け、次作もこの路線でいくのかと思いきや、4年の時を経てリリースされた新作『ヤンガー・ナウ』は、前作とも、初期の作品ともまったく違うテイストの、カントリーやフォークなどを中心とした、ビンテージ感ある作品になった。

 その予兆をみせたのが、5月にリリースした先行シングル「マリブ」。シェリル・クロウやコルビー・キャレイなどを彷彿させる、カントリー・ロック調の爽やかなナンバーで、これまでのイメージを一掃したマイリーに、驚かされたリスナーも多いはず。アルバム・リリースの1か月前に発売された2ndシングル「ヤンガー・ナウ」もカントリーを意識したナンバーで、ミュージック・ビデオでもセクシー路線は封印し、50〜60年代を連想させる、ビンテージ感ある内容に仕上げている。

 60年代のアコースティックを彷彿させる、フォーク・ギターの弾き語り「ミス・ユー・ソー・マッチ」や「アイ・ウッド・ダイ・フォー・ユー」、バンジョーのイントロからはじまる「インスパイアード」、民族音楽のような「バッド・ムード」、ビンテージ・ロック風の「シンキン」〜「ラヴ・サムワン」など、レトロなナンバーが目白押しの本作。カントリー界の女王、大御所ドリー・パートンとデュエットした「レインボーランド」は、最もカントリー色の強いレトロなナンバーで、彼女への敬意を感じる。

 こういった生音を中心としたアルバムにしたのは、荒れた情勢を健全なイメージに変えるためだったという。政治的意味合いも込められている本作『ヤンガー・ナウ』は、マイリーが全曲の作詞を手掛け、楽曲制作にも積極的に参加した、強い思い入れのある意欲作。プロデュースを担当したのは、米カリフォルニア出身の音楽プロデューサー、オーレン・ヨール。オーレンは、マイリーのヒット曲「アドア・ユー」を手掛けた人物で、カニエ・ウェストやワンリパブリックのライアン・テダーの作品にも携わった実力派だ。

 歌い方も、これまでのパワフルで攻撃的な印象から、良い具合に気の抜けた、癒し効果のあるボーカルに変えている。それが特に表れているのが、ラストの「シーズ・ノット・ヒム」〜「インスパイアード」の2曲。優しく丁寧な歌声に浄化され、心地よい状態でアルバムを聴き終えることができる。オーガニックなサウンドに合わせた、マイリーの歌い手としてのキャリア・技術の向上にも注目していただきたい。

 国内盤には、オランダのDJ=ティエストによる「マリブ」のリミックスが、ボーナス・トラックとして収録されている。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ヤンガー・ナウ』
マイリー・サイラス
2017/9/29 RELEASE