経験者の浦和FWズラタンが語る熾烈なW杯欧州予選 「プレーオフにさえ行けば…」

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欧州予選は10月にラスト2試合、54カ国参加で本選出場13カ国の狭き門

 10月のインターナショナルマッチウィーク(5日〜10日)では、来年のロシア・ワールドカップ(W杯)に向けた欧州予選がラスト2試合を迎える。

 54カ国が参加しながら、出場可能なのは13カ国という狭き門だが、その当落線上にある国の選手たちにとって予選とはどのようなものなのか。現在、浦和レッズに所属し、スロベニア代表としてW杯予選を突破した経験を持つFWズラタンに、グループ2位を狙う立場の心境を聞いた。

 欧州予選は、各組1位が無条件で本大会へ出場し、2位の9カ国のうち上位8カ国がプレーオフに進出して残りの出場4チームを決める形式だ。それだけに、2位争いの熾烈さが際立っている。今予選のスロベニアは、イングランドが勝ち点20と頭一つ抜けたグループで、同14の3位につけている。2位は同15のスロバキア、4位が同14のスコットランドと、最後の最後まで予断を許さない位置にいる。

 ズラタンは「どんなグループに入るかによるけど、例えば今回はグッドグループだと思うんだ」と話した。その理由は、「我々にとっては1位というのはヨーロッパにはサッカー大国がいくつもあるなかでは厳しいことで、2位を狙うのはいつものことで、よくあるパターンなんだ」と明かす。

「イングランドは強いけど、それはOKだよ。だけど、他が同じくらいのレベルのチームならチャンスがある。イングランドやイタリアのようなチームばかりでは苦しい。2位を狙うという戦いのなかでは、それがいつものことだからね。プレーオフに行けばチャンスがあるというのは認識しているから、それがスロベニアの場合は共有されているんだよ。もちろん1位になれたら最高だけどね」

プレーオフの怖さと面白さ「サプライズも」

 実力的に抜けたチームが一つ入るのは通常のことで問題ないという捉え方になる。今回で言えば、スペインとイタリアが同居したグループにスロベニアのような立場の国が入れば最悪の組み合わせと言えるだろう。つまり「1強グループ」は、こうした当落線上を争うことが日常の国にとって、抽選結果として素晴らしいものということになる。

 またスロベニアの立場は、例えば日本とは大きく異なる。もし、日本がW杯アジア予選で敗退すれば大きな騒ぎであり、ある種のビッグサプライズになるだろう。しかし、スロベニアが予選敗退となっても、欧州で大きなニュースになることはない。そうした立場の国では、メディアやサポーターの捉え方も変わるという。

「ヨーロッパには大国が多く、ワールドカップに出るのが難しいというのは大体みんなが分かっていることです。今回はイングランドとスロバキア、スコットランドと戦っている感じだけど、行けなければもちろんがっかりするんですよ。ただ、行けなかったこともたくさんある。そうなった時の経験も持っているから、そこは日本とは違うかもしれないですね。ただ、現実的なことを言えば、本戦に出場できたら素晴らしい成功だし、サプライズを与えるという面はあると思う」

 ズラタンは「プレーオフにさえ行けば」ということを強調している。それは、ズラタンが出場した2010年南アフリカ大会は、プレーオフでロシアを破って本大会出場を決めたからだ。前評判ではロシアが圧倒的優位と目されたなか、「メディアも人々も、勝ち抜けるかどうかに対しては疑いの目を向けていた」という。それでも「サッカーは全てが可能なものであるし、サプライズを起こすチャンスもある。それを実現できた記憶だね。イタリアやポルトガルが2位になるかもしれないけど、1回の勝負だから何があるか分からないのがプレーオフなんだよ」と、プレーオフの怖さと面白さを経験則として話した。

当落線上の国にとって生きるか死ぬかの2試合

 自身は南アフリカ大会のグループリーグ第2戦アメリカ戦でゴールを決めており、「忘れられない記憶であるし、サッカー選手としてワールドカップでプレーしてゴールをしたのは、キャリアの中でも最高の経験で素晴らしいこと」と笑顔で話す。すでに代表引退を表明しているズラタンは「たくさんの友達もいるし、スロベニアがチャンスをつかんでくれることを願っているよ」と母国の幸運を願った。

 欧州予選のラスト2試合では、強豪オランダの予選敗退が現実味を帯びている。しかし、多くの当落線上の国にとってはまさに生きるか死ぬかの2試合。欧州予選を経験したズラタンの言葉から、改めてその厳しさと面白さが垣間見えた。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images