BURNOUT SYNDROMES

 文学的要素を楽曲に落とし込むなど様々な仕掛けでファンを魅了する大阪出身3人組ロックバンドのBURNOUT SYNDROMESが18日に、配信限定曲「ハイスコアガール」をリリースした。ノンタイアップにも関わらず、iTunesロックチャートで1位を獲得し話題となっている。青春文學ロックを掲げている彼らは夏目漱石や川端康成など文豪の名文を楽曲に取り入れ話題を集めたが、今作はなんとテレビゲーム。それも80年代を感じさせるビット感を取り入れたサウンドと歌詞、現在20万再生に迫るMVの映像が特長だ。楽曲に様々な伏線を張っている彼ら。今回は同曲の謎解きに挑みたい。

 その前に、彼らは熊谷和海(Gt&Vo)、石川大裕(Ba&Cho)、廣瀬拓哉(Dr&Cho)で構成する。2005年5月に結成し、2016年3月にTVアニメ『ハイキュー!!セカンドシーズン』のOPテーマ「FLY HIGH!!」でメジャーデビューした。今作は、全国ツーマンツアー『Butterfly in the stomach』でも披露され、リリース前の公演で既にオーディエンスと一体となっており、ライブで欠かせない曲に成長している。アッパーなロックサウンドで畳み掛けるノリが良いナンバーだが、特に歌詞を大切にしているということもあり、過去の作品と同様に今作も歌詞の世界観と言葉の選び方が面白いものとなっている。

 まず、タイトルの「ハイスコアガール」は、ギターボーカルの熊谷がファンだというスクウェア・エニックスの漫画雑誌『ビッグガンガン』連載、押切蓮介氏の同タイトル作品からインスパイアを受けており、タイトルからにしてトリビュートソングであることがうかがえる。90年代アーケード・ラブコメディという触れ込みは、その時代を謳歌してきた世代、30代、40代が見れば懐かしさがこみ上げてくる内容。そのノスタルジックな部分もしっかりと歌詞に落とし込んでいる。

 このコミカルさも踏まえた歌詞からは、熊谷の純文学だけではない表現方法の幅広さを感じさせた。特に「グラディウス」などで使用された通称“コナミコマンド”と呼ばれる、“世界一有名な隠しコマンド”として2012年にギネスに登録された、<↑↑↓↓←→←→B+A>を取り入れている点は、この世代にはとてつもなくキャッチーに響く。

 ちなみに「グラディウス」とは85年に横スクロール型シューティングのアーケードゲームとして登場し、このコマンドは、86年に移植されたファミコン版隠しコマンドとして一世を風靡した。なんでも当時の開発者たちが、ゲームの難易度の高さから、デバックモードとして使用していたコマンドで、移植後も消さずに残していたという。その時のスタッフが覚えやすいこのコマンドを使用していたという話がある。(編注=デバックモードとはソフトウェア開発者向けの隠された機能)

 この「覚えやすい」というところが、この楽曲のキャッチーさに一役買っている。このコマンドを取り入れようと思いついたとしても、これを楽曲にきちんと落とし込むのは至難の技だが、彼らはあまりメロディに高低差をつけずに、リズミックにこのコマンドを配置したのにはセンスを感じさせる。ちなみに歌詞にある<残機は∞>は『グラディウス2』や『魂斗羅』でコナミコマンドを入力した際に得られる残機30を飛躍させたものだろう。初代「グラディウス」でのコマンド入力で得られるのはフルオプションだ。

「ハイスコアガール」

 さらに楽曲後半に登場するトーキングスタイルのセクションでは、「ちたに けらは とほら すての はてき らとな りはし てと」という国民的RPG『ドラゴンクエスト』のふっかつのじゅもんを彷彿とさせる文章を配置させている。現在、BURNOUT SYNDROMESの「ハイスコアガール」特設サイトでこの呪文を入力すると、何かが起きるそうだ。

 アレンジにも「8ビットサウンド」もしくは「チップチューン」と呼ばれる、ファミコンなどでよく聴かれたシンセサウンドをイントロで使用し、一気に世界観に惹きこんでいく。最近この手のサウンドを盛り込む若い年齢層のバンドもおり、この時代を通ってきていない分、新鮮に響いているのだろう。このような観点から見ても、音に古さという観念はないのではないか。それは現在のアナログレコードブームにも繋がる要素と言えそうだ。

 総じて、夢中になった頃を思い起こさせる要素が多く詰め込んだ作品になっている。当時、夢中で“連打”した隠しコマンドや復活の呪文は今でも体に染みついているものだ。それを何度も連呼することによって、脳裏にしまい込んだ当時の記憶をよみがえらせる。一方、当時を知らない若者には、当時と同じように何度も連呼させることで、遠い未来、何かのきっかけでこの曲を蘇らせるきっかけを作っているとも取れる。

 いずれにせよ、こうやって年齢など関係なく様々な人々と、共有できる1曲になっている。あらゆる場面でPCのカーソルキーなどでこのコマンドを打ってみたりと、汎用性のあるコマンドは可能性を感じさせた。「ハイスコアガール」にもまだまだ探せば、裏技のように色々な面が見えて来そうだ。

【文=村上順一】