【福田正博 フォーメーション進化論】

 今季J1リーグも7節を残すのみとなった。2位に勝ち点8差をつける首位の鹿島アントラーズが、リーグ制覇に向けてもっとも優位に立っていると見ていいだろう。


監督交代後に大きく勝ち点を伸ばし、首位を独走する鹿島

 9月23日に鹿島ホームで行なわれたガンバ大阪戦は、鹿島の強さを象徴する試合だった。前半こそ先制点を奪われて苦しんだものの、前半終了間際に同点に追いつき、後半は一方的に押し込んで試合終了間際に勝ち越した。

 この試合に引き分けていたら、優勝争いはもう少し混沌としていたかもしれない。だが、セットプレーからの得点や、リードされても慌てずに逆転するという”鹿島らしさ”を発揮して勝ち点3を上積みし、9回目の優勝をぐっと引き寄せた。

 鹿島は、13節終了時では7位と苦しみ、その直後の5月31日に監督交代を発表。それまでコーチを務めていた大岩剛監督が就任すると、起用される選手の顔ぶれが明らかに変わった。プレー機会が増えたレアンドロや中村充孝、三竿健斗といった選手たちが、14節以降の15試合で13勝1分1敗という驚異的な数字を残すチームを支えている。

 そのなかで、最もハマっているのがMFのレアンドロだ。開幕前に鹿島に加わったが、突出したスピードはなく、身長177cmはJリーガーの平均身長とあまり変わらない。これといった武器が見つからなかったため、チームにフィットするには時間がかかると思っていた。

 実際、石井正忠前監督の指揮下では、リーグ戦で先発出場したのは2試合のみ。しかし、新体制に移行してからスタメンの座に収まると、ボールは失わないし、ゴールも決めて、攻守両面でチームに貢献。レアンドロが、”大岩アントラーズ”の体現者になっている。

 こうした選手起用は、大岩監督がコーチとしてチームを支えてきた経験が活きているということだろう。コーチ時代に選手をしっかり見る時間があり、チームの流れを把握できているという利点を、監督になって十分活かしているといえる。

 今季は鹿島のほかに、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、FC東京、ヴィッセル神戸、アルビレックス新潟でシーズン中の監督交代があった。交代後も中位以下で苦戦しているチームもあるなか、鹿島が息を吹き返すことができたのは、優勝という目標から逆算したクラブの”決断の早さの差”にあったと見るべきだ。

 世界各国のリーグを見ても、シーズン途中に監督を交代しても結果につながらないケースが多い。そうしたなかで鹿島は、優勝を目標としていたACLで敗退したとはいえ、リーグ戦では7位ながら首位との勝ち点6差と、十分に巻き返しが期待できる状況で監督交代に踏み切った。

 昨季リーグを制しただけではなく、クラブ・ワールドカップ決勝でレアル・マドリードを追い詰めた監督を、シーズン途中で解任するのは他のクラブなら二の足を踏んでしまうところ。しかし、鹿島が決断に踏み切れたのは、”最低でも”リーグのタイトルを獲得するという目標を達成するための”最善策”を考えたからだろう。

 これこそが、鹿島の”クラブ力”だ。Jリーグ誕生からの25年間でリーグ8回、天皇杯5回、Jリーグカップ6回の優勝を誇る鹿島は、選手や監督、チーム運営者、クラブスタッフ、サポーターといった、チームに携わるすべての人たちの意識が、常に優勝に向いている。

 他のクラブでは、サッカーの内容やチームへの貢献度の高い選手やスタッフへの情が、優勝という目標を上回るケースもある。しかし、鹿島にはそれはない。”優勝至上主義”とでもいうべきクラブの哲学が決断を早め、現在の首位快走へとつながったのだ。

 その鹿島を追う2位の川崎フロンターレ、得失点差で3位の柏レイソルは、かろうじて優勝戦線に踏みとどまった状態にある。

 現在の川崎は、鹿島に次いで「優勝への欲求」が強いクラブだと感じるが、大島僚太が9月23日の神戸戦で全治2カ月のケガを負ったのは大きな痛手だ。早く復帰できたとしても、最後の2、3試合に出られるかといったところだろう。

 攻守でハードワークを厭わない阿部浩之の活躍や、家長昭博がチームにフィットしことで、今季の川崎の攻撃力が増していることは間違いない。しかしそれは、中盤の底でパスを受け、テンポよくボールを捌いてきた大島がいてこその攻撃力だ。

 大島の代わりに中村憲剛をボランチに下げてエドゥアルド・ネットとコンビを組ませるなどの対処はできる。ただ、中村がよりゴールに近いトップ下からボランチに下がる影響は少なくないはずで、その穴をどこまで埋められるかに、首位追走のすべてがかかっている。

 また、川崎はリーグ戦だけではなく、Jリーグカップや天皇杯でも優勝の可能性を残している。大島を欠く状況でどこまで”らしい”サッカーを展開できるかが、シーズン終盤のポイントになるだろう。

 一方、今季の柏は、武富孝介や中川寛斗を攻撃的なポジションに起用し、前線からの守備を重視した戦術がハマって一時は首位に立った。その後、相手に研究されてからは思うように勝ち点を伸ばせずにいたが、ハモン・ロペスを起用するなどして挽回し、さらに27節では久しぶりに武富を先発で起用して結果につなげている。

 司令塔の手塚康平が負傷離脱したことは痛いが、ボランチにキム・ボギョンが補強され、CBの中山雄太、中谷進之介とGKの中村航輔といった若い守備陣も奮闘している。再びいい流れが生まれているといえるだろう。
 
 しかし、今季の逆転優勝を実現させるために、欠けていると思ってしまう要素がある。それは、「勝利にこだわる荒々しさ」だ。キムやクリスティアーノら外国人選手には、そうしたタフさを感じられるが、若い選手や、クラブのスタッフ、サポーターたちからは、「何が何でも優勝するんだ!」という迫力がいまひとつ感じられない。

 確かに、若手の成長でACL出場権を争えるチームになった柏の未来は明るいが、他チームも戦力補強をして臨む来季に、同じように優勝争いに加われる保証はない。「今季は十分善戦した」と考えるよりも、目の前の勝負にこだわってほしい。

 アカデミー出身の選手たちが中心になってチームを構成している現在の柏は、Jリーグが理想とするひとつのモデルケースであり成功例だ。それだけに、頂点を目指してほしい。「残る試合を全部勝つ」というプレッシャーを課して、重圧をはねのける精神的なタフさを身につければ、それが今後のキャリアや代表に招集されたときの糧になるはずだ。シーズン終盤、優勝争いのプレッシャーを経験して、さらに勝利することが、来季の飛躍につながるだろう。

 昨季の浦和もそうだったように、優勝争いのプレッシャーのなかでは、いつも通りにゲーム運びができないことも十分ありうる。そのことを前提に試合に臨んで、想定外のことがあっても勝つためにどうすべきか対応ができるチームが優勝に近づく。そして、鹿島はそれができるクラブチームだからこそ、あれだけの数のタイトルをつかんでいるのだと私は考えている。

 そんな「常勝軍団」がリーグ終盤をどう乗り切るのか。川崎、柏をはじめとした他のクラブが、鹿島を慌てさせるような戦いができるかに注目したい。

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