【ライターコラムfrom仙台】新天地で“走る”野津田岳人…仙台のJ1通算400ゴール目を決める

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 9月23日、明治安田J1リーグ第27節・セレッソ大阪戦で、ベガルタ仙台はゴールラッシュに沸いた。その中で、チームの2点目となった70分のゴールは、仙台にとってJ1通算400ゴール目の記念すべき点。得点者の野津田岳人はこれを決めると、一目散にキンチョウスタジアムに駆けつけた仙台サポーターの前にダッシュし、喜びを分かち合った。

「仙台歴が最も浅い自分が取っちゃっていいのかな」と試合後にはにかんだ野津田は、この夏に仙台に加入した三選手の一人。本人が言うように3人で最も遅い8月8日に仙台に加わったのだが、ゴール後のサポーターとの様子を見れば、本人が心配するまでもなく、もうすっかり仙台の一員だ。

 強い決意とともに、彼は仙台へやってきた。サンフレッチェ広島ではアカデミー時代からその才能が注目されてきた存在で、トップチーム昇格後も2012年と13年にJ1制覇を経験。年代別日本代表でも活躍してきた。しかし負傷に悩まされたこともあり、ここ数年は苦しんでいた。今季は清水エスパルスへの期限付き移籍で復活を期していたが、まだ満足のいくパフォーマンスを得られず。そこで、清水との契約を解除した上で、仙台への期限付き移籍というかたちを取って環境を変えることを決断した。

 仙台は今季より3−4−2−1のフォーメーションを基本としたシステムを採用しており、野津田には広島時代に慣れ親しんだ“シャドー”のポジションでフィットすることが期待されていた。ただし、並びは同じでも動き方などは異なる。野津田本人によれば「スペースに流れる動きが、前より増えました」とのことだ。

 そしてそのフィットまでにも苦労はあった。J1第23節・アルビレックス新潟戦では1点を追う展開で投入され、光るプレーを見せた。だが、加入後初先発を果たした第24節・北海道コンサドーレ札幌戰では、思ったようなプレーができず途中交代した。

 次の週のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝では、前所属の清水で同大会の出場記録があるために、移籍規定に基づきプレーができなかった。もどかしい日が続いたが、野津田は外からチームを見る中で、「相手の背後に抜ける動きなど、自分が入った場合のプレーを考えました」と研究を続けた。

 その姿勢が実り、野津田は仙台式の“スペースに流れる動き”を彼なりの解釈でプレーに落としこんだ。第25節・サガン鳥栖戦では、相手が仙台得意のサイド攻撃を封じようとした中で、野津田は中央から相手のサイドに抜け出す動きを見せて状況を打開。スペースに流れながら富田晋伍からのパスを受け、見事加入後初ゴールを決めた。

 左足からのパスや強烈なミドルシュートも野津田の武器だが、パスの受け手としての動きも目を引く。相手の立ち位置や状況に応じ、攻撃を組み立てるための最適なポジションを取ることが仙台では求められている。その中で、野津田は動き回っていち早くボールを受けるポジションを取れる能力を生かしている。

「もともと、走れる選手なんです」と、仙台の西形浩和フィジカルコーチは野津田の印象を語る。加入後初めての実戦となった8月14日のJサテライトリーグ広島戦で、チームは独自にトラッキングデータを取得したが、その時の出場メンバーでトップの走行距離を記録したのが野津田だったという。「走りながら多くのタスクをこなせることが、周囲の選手を生かすことにもつながっています」と西形コーチは野津田の現在のプレーを見る。

 野津田本人は「自分ではあまり走っている実感はないのですが……」とのことだが、「90分間出られるようになって、その経験を重ねて、少しずつ状況に応じて走れるようにはなっているかもしれません。守備では、前からプレッシャーをかけるときと、それができず素早く帰陣するときを判断し、メリハリの効いた走り方ができるようになったかもしれません。攻撃では、いい立ち位置を取るために早くから動き出すことは意識しています」と自己分析する。

 野津田がフル出場した第25節から第27節までの各試合における走行距離は、いずれも12kmを越える。この数字の背後には、新天地に適応しようとする努力も多く含まれる。そんな彼には、やはり仙台のメモリアルゴールを取る資格があった。そして、次節の浦和戦でも、チームを勝利に導く活躍が期待される。

文=板垣晴朗