裏出良博教授

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「健康をつくるデザイン」とは何か――Aging StyleとGOOD DESIGNがコラボして、医療従事者や研究者、デザイナーらがそれぞれの取り組みを紹介するトークイベントが2017年8月25日にあった。

眠りは脳の中をすっきりさせる役割もある

イベントは今回で8回目。「休息」をテーマに、睡眠を30年以上研究し続けている裏出良博教授(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構、DAAアンチエイジング医師団顧問メンバー)とホテルや旅館、商業施設など幅広い分野で建築設計及びインテリアデザインを手掛ける寶田陵氏が講演した。

裏出氏は、コーヒーを飲むと眠れなくなる理由を解明したことで世界的に知られている。私たちが眠くなるのは、アデノシンという物質が脳内にある睡眠スイッチの穴にはまるから。アデノシンはカフェインと構造が似ているため、コーヒーを飲むとアデノシンより先に睡眠スイッチの穴にカフェインが入り込み、その結果、眠気を覚ますという。

また裏出氏は、眠ると脳の全体の体積が小さくなると解説した。

「脳の周りの脊髄液量を増やし、老廃物を洗い流すためだと考えられています。睡眠は脳を浄化する働きもあるのです」

アルツハイマー病の原因の一つとされるアミロイドβも老廃物のひとつ。よく眠ることは、認知症予防のひとつにもなる可能性があると言う。

「睡眠とは、パソコンを再起動させるように、脳の中をすっきりさせるような役割があります。眠るために生きているのではく、脳機能を維持するために定期的にシャットダウンする。もし眠れなかったら、無理に寝ようとしないほうがいい。いつかは必ず眠れますから」

日本のホテルには「愉しみ」が足りない

寶田氏は、宿泊施設のデザインを考える上で海外50都市のホテルに宿泊した。

そこで、日本のホテルには、自分らしく愉しむ場所という考え方が足りないと感じたという。

  

「世界に提案する日本のデザインホテルのひとつの方向性として、(1)客室には、驚きと家のような居心地のいい寛げる空間を両立させる。(2)パブリックスペースは多様なコンテンツがあり楽しめる。誰でもコミュニケーションがとれるスペースが必要。(3)デザインは地域性が感じられるオンリーワンのものをつくること。これが大切だと考えています」

寶田氏がデザインを手がけたホテルの中には、コンセプトやデザイン性、快適さなどが評価され、グッドデザイン賞を受賞した施設がいくつかある。

これから挑戦したいのは、日本の病院だ。

「待合室をアートミュージアム風にしたり、サプリメントバーがあったりしてもいいと思う。ほかには、ワークショップができるような施設を作ってみるとか。ちょっと元気になって患者さんがアクティブになれば、ぐっすり眠れるのではないでしょうか」

デザインの面から考える、新しい日本の医療機関の姿。実現が楽しみだ。

医師・専門家が監修「Aging Style」