日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

新顔のメンバー入りに期待が集まったが

 ニュージーランド代表(10月6日、豊田スタジアム)、ハイチ代表(同10日、日産スタジアム)とのキリンチャレンジカップ2017に臨む日本代表メンバー24人が28日、日本サッカー協会から発表された。初招集はDF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)だけで、これまで招集されながら出場時間が少なかった選手が中心の編成となった理由を、都内で記者会見に臨んだヴァイッド・ハリルホジッチ監督の言葉から読み取った。(取材・文:藤江直人)

----------

 ゴールキーパーから数えて全体で7人目、サイドバックでは4人目として初招集の車屋紳太郎(川崎フロンターレ)の名前が読み上げられた瞬間、その後の人選に大きな期待が寄せられた。

 しかし、24人が出そろってみれば、初顔は25歳の左サイドバックだけだった。オーストラリア、サウジアラビア両代表と戦った直近のシリーズに招集されなかった復帰組も、倉田秋(ガンバ大阪)と遠藤航(浦和レッズ)の両MFにとどまった。

 28日に都内で発表された、ニュージーランド、ハイチ両代表とのキリンチャレンジカップ2017に臨む代表メンバー。新たな戦力の抜擢もあるのではと思われた選手選考は、表現は悪くなるが、これまでと代わり映えしない顔触れとなった。

 6大会連続6度目のワールドカップとなる、来年のロシア大会出場を決めた直後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「次の合宿のリストには、少し新しい選手を入れようと思う」と語っていた。

 選考の過程では、けがという予期せぬハプニングもあった。新天地ヘタフェでの初ゴールをFCバルセロナ相手に決めたMF柴崎岳が、その試合で左足の甲を痛めて戦線離脱した。柴崎は前回シリーズで約2年ぶりに復帰し、サウジアラビア戦では先発していた。

 直近のJ1ではMF大島僚太(フロンターレ)が左太もも肉離れで全治2ヶ月の、MF齋藤学(横浜F・マリノス)が右ひざ前十字じん帯損傷で同8ヶ月の見込みという重症を負った。

「心配なところはけが人が多いことだ。今回の合宿のために追跡した選手たちのなかにも、3人のけが人がいる。柴崎、大島、そして最近好調だった齋藤も候補の一人だった」

 3人の招集を視野に入れていたことを示唆したハリルホジッチ監督は、今回の国際親善試合を通した10日間の合宿の目的をこう位置づけている。

「今回の合宿では、いままであまり出ていなかった選手たちに出場機会を与えたい。この合宿のテーマのひとつは、チームを成長させることだ。ロシアの美しい街並みを見るだけでなく、勝利、あるいは引き分けという結果をしっかりと残さなければいけない。この合宿から準備が始まる」

W杯メンバー決定までに海外組を招集できるのは最大6試合

 ワールドカップ前の国際Aマッチデーは、10月以降では11月6日〜14日と来年3月19日〜27日しかない。それぞれ最大2試合しか組めないため、ロシア大会に臨むメンバー23人を決定するまでに、海外組を招集できる試合はマックスで6試合となる。

 ゆえに10月シリーズは初選出の選手を、指揮官をして「いつも左利きのサイドバックを探してきた」と言わしめる車屋だけにとどめたのだろう。つまり、これまで招集されながらピッチに立つ時間が少なかった選手たちは、今後へのサバイバルがかかった2試合となる。

 たとえばゴールキーパーは、今年に入ってからは川島永嗣(FCメス)しかプレーしていない。ハリルホジッチ監督は東口順昭(ガンバ)の約1年半ぶりの起用を示唆する一方で、6月シリーズから招集外となっている西川周作(レッズ)の名前もあげて、競争意識をあおっている。

「西川も最近、調子をあげてきていると思う。昨夜のACL(AFCチャンピオンズリーグ)でも浦和はよかった。ぜひとも決勝に進んでもらいたい」

 センターバックは層を厚くすることが急務なポジションとなる。3月シリーズまでは吉田麻也(サウサンプトン)と森重真人(FC東京)がほぼ不動のコンビを組んできたが、6月からは森重に代わって昌子源(鹿島アントラーズ)が吉田の相棒に指名された。

 アントラーズでの経験が豊富な昌子は及第点のプレーを見せているが、けがや出場停止などの不測の事態に備えたリスクマネジメントが不可欠となる。その意味でも、2015年1月のアジアカップで初招集されて以来、まだ出場機会のない植田直通(アントラーズ)には大きなチャンスとなる。

「植田は先週末のガンバ戦でいいプレーを見せていた。槙野(智章)はACLでブラジル人選手に対していいゲームができていたと思う」

 指揮官は自ら視察に足を運んだ先週末のJ1で、植田のプレーに及第点を与えた。前回シリーズでは左サイドバック枠だった槙野智章(レッズ)も、今回はセンターバックとして招集している。

長谷部・本田らは召集外に。コンディションを懸念

 中盤を逆三角形型で組んだ場合にアンカーを託せる選手も、長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)しかいないのが現状だ。不動のキャプテンでもある長谷部が右ひざの古傷を考慮されて、選外となった今回。レッズでは最終ラインを務める遠藤が、6月以来となる復帰を果たした。

「長谷部は試合後にいつも心配を抱えていたので、しっかり治してもらう。守備的MFのところでフィジカル的にもさらにパワーをつけてほしいので、今回は遠藤を入れた」

 3月シリーズで追加招集された際、遠藤は「なぜレッズでボランチとしてプレーしていないのか」とハリルホジッチ監督から質問されている。そのときは答えに窮して苦笑いしたが、6月のイラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選ではボランチとして先発フル出場している。

 これまでの言動や起用を見ても、球際におけるデュエルの強さを含めて、指揮官は遠藤をボランチとしてリストアップしている。だからこそ今回は序列をあげる最大のチャンスとなる。

 トップ下およびインサイドハーフには、左肩脱臼からの回復途上にあることを考慮され、前回シリーズで起用されなかった香川真司(ボルシア・ドルトムント)が招集された。

「(香川)真司はゲームには出ているものの、ドルトムントで完全にポジションを勝ち取ったわけではない。真司とも話をしたいと思っている」

 もちろん、指定席が用意されているわけではない。所属チームでコンスタントに出場している小林祐希(ヘーレンフェーン)や倉田、インサイドハーフになれば「成長し続けている。非常に将来性がある選手だ」と、ハリルホジッチ監督も称賛する井手口陽介(ガンバ)との争いになる。

 フォワード陣では、右ウイングの本田圭佑(パチューカ)が選外となった。自身の体制下では初めて本田を招集しなかった理由を語った指揮官は、同時に代表入りを目指すすべての選手へのメッセージも送っている。

「(本田)圭佑もけがしていた。しっかりコンディションを取り戻して、クラブでより長い時間試合に出てほしい。現時点でのコンディションでは、代表ではプレーできないと思う。コンディションを取り戻したら、またメンバーに入ってくるかどうかを考えたい」

12月には国内組で挑むE‐1選手権が

 左ウイングで招集した原口元気(ヘルタ・ベルリン)は、オフに契約延長の問題がこじれた関係でフロントおよび首脳陣との関係がこじれたのか。今シーズンはまだ先発で起用されていない。そうした状況も考慮したと、ハリルホジッチ監督も心配を寄せる。

「(原口)元気は代表ではいつもいいプレーを見せている。励ます話をしたいということもあって、今回は呼んだ」

 そしてセンターフォワード。大迫勇也(ケルン)が絶対的な存在となったなかで、あえてベテランの岡崎慎司(レスター・シティー)を選外として、ともに1992年生まれの武藤嘉紀(マインツ)と杉本健勇(セレッソ大阪)を招集した。

 前回シリーズで2人はオーストラリア戦でそろってベンチ外となり、サウジアラビア戦では杉本が後半途中からA代表デビュー。武藤はリザーブのまま90分間を終えている。

「今回は杉本と武藤にチャンスを与えたいと考えた。杉本には表現する場を与えたいし、チームで試合に出るようになった武藤は、大迫や杉本とはまた特徴が違った選手だ」

 12月にはEAFF E‐1サッカー選手権(旧東アジア選手権)が東京で開催される。国際Aマッチデーではないこの大会には、海外組を拘束する権利が日本サッカー協会にはない。ゆえにJリーガーたちを見極められる舞台となる。

「いまのところ50人前後の選手を、コーチングスタッフ全員で常に追跡している。彼ら代表候補選手たち全員の競争を促したい。ワールドカップへの要求は、いままでより非常に高いものになる。これからの9ヶ月間、フィジカル、戦術、メンタルのあらゆる面で成長することを私は要求する」

 ラージリストが50人規模となることを明言したハリルホジッチ監督は、まずは10月シリーズで自ら選んだ24人へ檄を飛ばした。ロシア大会への生き残りをかけたサバイバル合宿は来月1日から、愛知県内で幕を開ける。

(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人