9月28日に日本記者クラブで会見する小池百合子・東京都知事(写真:ロイター/アフロ)

「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」ーー。9月28日正午に開催された衆議院本会議で、大島理森議長は解散詔書を読み上げた。公示日は10月10日、投開票日は10月22日。この選挙から10議席減となったため、465議席をかけた熱い闘いの火蓋が切られた。

「考えた考えた挙句の末の提案」

希望の党への合流が話題になっている民進党では、午後1時半から開かれた両院議員総会で前原誠司代表はこう述べている。


前原代表の胸中とは?都内で9月1日撮影(写真:ロイター/Toru Hanai)

「民進党の今の現状を考えた時に、どうすればもう一度政権交代を起こせるか。それを考えた考えた挙句に末に、私はみなさんに提案させていただいている」「もう一度理想社会をつくる。そのために名を捨てて実を取る、その決断を御理解いただきたい」

前原氏が「考えた考えた挙句の末の提案」は以下の3点だ。

今回の総選挙における民進党の公認内定は取り消す。

民進党の立候補予定者は「希望の党」に公認を申請することとし、「希望の党」との交渉及び当分の間の党務については代表に一任する。

民進党は今回の総選挙に候補を擁立せず「希望の党」を全力で支援する。

すなわち党所属の衆議院議員は全員が離党して「希望の党」に公認申請するが、参議院はそのままにするということ。「民進党」の党名は残ることになった。

これはかつて新進党が結成された際に、公明党が用いた手段と同じである。公明党は1994年12月の新進党結党に参加したが、1992年の参院選当選組と地方議員で「公明」を結成。参議院では新進党と統一会派を組む戦法をとった。

この「公明」は1997年12月に新進党が崩壊した時、旧公明党の議員の受け皿となったが、これが1992年当選組の改選期である1998年よりも前だったことは、偶然にはみえない。そもそもが「新進党はその程度の寿命」と公明党内で判断されていたのではないか。

希望の党は選挙のための政党?

参議院の「民進党」も衆院選の後に希望の党へ合流すると言われているが、その実情はどうなのか。

解散の後、自分の選挙区に急ぐ議員たちにその本音を聞いてみたところ、「希望の党への合流は選挙のための便法。そもそも同じ政党でずっとやるというほどの気概は持っていない」という返事が返ってきた。羽田空港に向かう車中のその議員は、こう続けた。「もっとも受ける側(希望の党)も、党利党略があってのことだ」。

別の議員もこう言った。「どうせ4〜5カ月後には、(希望の党と)別れている」。このような同床異夢状態であれば、たとえ当選しても衆院選後の混乱は目に見えている。

また「希望の党は入党希望者全員を受け入れるわけではなく、約30人は拒否される」との話も出ている。希望の党の小池百合子代表が「ひとりひとりを見て、(入党させるかどうか)自分が決める」と述べたことが原因だが、小池代表が決める前にすでに民進党から希望の党へ移動した人たちが「希望の党に入れない面々」について口にしているのだ。

具体的に拒否される人として、菅直人元首相、辻元清美衆議院議員、赤松広隆元農水相などの名前が出ている。いずれもリベラル的な傾向が強い。

これには希望の党への衆議院民進党の合流を支援している連合が反対しているという。民進党からまるごと希望の党への移動ならともかく、議員の考えによって分けられてしまったならば、それぞれの議員を支持する労組が分断されてしまいかねないからだ。

この度の合流に最も腹をたてているのは、野党共闘を進めようとしていた日本共産党だ。共産党の志位和夫委員長は28日、「重大な背信行為だ」と批判し、希望の党の公認候補が立つ選挙区には対抗馬を立てる方針を示している。

ただ、希望の党に入れてもらえず無所属で立候補したからといって、全ての選挙区で必ず不利になるわけではない。希望の党からはじかれたリベラルな元民進党議員に対しては、共産党が応援する可能性は残っている。たとえば大阪10区の辻元氏は、2014年の衆院選では小選挙区で勝っているが、民主党入りした以降の2012年の衆院選では日本維新の会の松浪健太衆議院議員に5706票差で負けている。ここに共産党の1万4706票を加えれば逆転するのだ。

また埼玉5区の枝野幸男元官房長官や東京7区の長妻昭元厚労相などは、もともと選挙に強い。希望の党の支援を仰がなくても独力で当選できると踏んでいる。野党共闘に意欲的だった彼らには、共産党の支援が加わる可能性さえある。

参議院には「民進党」が残っている

さらに希望の党がリベラルな議員の参加を拒否するのなら、衆院選挙の後で予定されている参議院の合流にも混乱が予想される。というのも、参議院民進党にはリベラルな議員がけっこういる。実際に27日夜9時から参議院内で開かれた議員総会では、10名ほどの議員が希望の党への合流に疑問を投げかけたという。

ただし大きな混乱はなく、参議院民進党は衆議院の動向に従っている。しかし、そもそも希望の党には、参議院議員がいない。衆院選の後で参議院民進党が合流すると、同党の参議院は民進党カラー一色となる。それが小池代表の意図のままに動くのだろうか。

仮に衆院選で希望の党が大勝して政権を獲ったとしても、参議院の構成が現状のままでは、まず参議院で過半数を維持する自民党の壁に直面する。それだけでなく、その後ろに民進党の壁も控えているということになる。

前原氏がこうした意図を持って参議院の新党入りを衆院選後に延ばしたのならば、なかなかの策士といえるだろう。その背後には小沢一郎自由党党首が控え、知恵者で知られる平野貞夫元参議院議員が付いている可能性が高い。衆院選後を睨んだ攻防は、すでに始まっている。