車屋紳太郎は貴重な左利きの左サイドバックとして日本代表に新たな戦術オプションをもたらすかもしれない【写真:Getty Images for DAZN】

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左利きSBの有用性。これまで招集された選手たちは…

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は28日、来月6日と10日に行われるニュージーランド戦、ハイチ戦に向けた招集メンバーを発表した。おなじみの顔ぶれが並ぶ中、川崎フロンターレのDF車屋紳太郎の初招集に注目が集まった。Jリーグで高いパフォーマンスを発揮する新戦力の価値とは、いったい何なのだろうか。(取材・文:河治良幸)

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 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、10月6日のニュージーランド戦と10日のハイチ戦に向けたメンバーを発表した。最終予選のラスト2試合を戦った前回のメンバーから長谷部誠、本田圭佑、岡崎慎司など経験豊富な常連選手が外れたものの、初招集は川崎フロンターレのDF車屋紳太郎のみだった。

 今回のメンバー選考におけるハリルホジッチ監督の意図としては、新しい選手をテストするより、これまで招集経験があるもののW杯予選などで出場機会をあまり得られていない選手にチャンスを与え、同時に新しい組み合わせなども試すものと思われる。国内の有力候補は12月に予定されるEAFF E-1サッカー選手権(旧東アジアカップ、以下「東アジアE-1サッカー選手権」)がアピールの場になるのだろう。

 そうした中で唯一、車屋が初選出されたのはなぜか。同選手はハリルホジッチ監督が就任して最初の選考でバックアップメンバーに選ばれ、昨年3月に代表候補メンバーとして千葉県で行われた国内合宿にも参加している。当時は「ちょっと早いなという気持ちもある」と心境を語っていたが、そこから1年半、予選突破からW杯本大会に向けたスタートの段階でようやく正式に選ばれたわけだ。

「車屋はここ最近調子がよく、機会を与えるのに値する内容を見せている。左利きの少ないこの代表において、彼にもチャンスをつかんでもらいたいと思っている」

 そう評価を語るハリルホジッチ監督が起用してきた藤春廣輝(ガンバ大阪)や太田宏介(FC東京)といった左利きの選手たちは、日本代表の左サイドバックに定着できなかった。前々回は右利きながら左足の技術が高い宇賀神友弥(浦和レッズ)も招集されたが、怪我で一歩後退した感は否めない。

 右利きながら左サイドに慣れている長友佑都、右サイドと兼務の酒井高徳、本職センターバックの槙野智章が左サイドバックの戦力だが、左利きの左サイドバックをチームに組み込むことができれば組み立ての幅が広がり、同サイドのウィングの起用法にもバリエーションを持たせやすくなる。

車屋は実力を証明できるか。11月には欧州遠征のチャンスも

 現在はどちらかと言えば酒井宏樹が主力を務める右サイドが攻撃の起点になる傾向が強い。長友も高い位置からの仕掛けやクロスでチャンスを生み出すことはできるが、左からの組み立てに幅をもたらすことができれば中盤から後ろでボールを失うリスクも減少するはずだ。

 車屋には当然ながら守備での強さや素早い攻守の切り替えなども求められるが、彼の持ち味である攻撃センス、特に左利きらしいライン際を使った組み立てを発揮できれば代表定着への道が開けてくるはず。ハリルホジッチ監督はブラジルW杯のアルジェリア代表でファウジ・グラムとジャメル・メスバフという2人の左利きサイドバックを選出している。

 おそらく東アジアE-1サッカー選手権に向けても指揮官は左利きサイドバックに注目して残りのJリーグを視察するだろう。横浜F・マリノスの山中亮輔や清水エスパルスの大型DF松原后などJリーグで高い能力を見せている選手は候補となるし、チームの調子が上がらないG大阪で気を吐く藤春が再びテストされる可能性もあるが、そう候補が多いわけではない。

 10月の2試合で車屋がアピールに成功すれば、11月の欧州遠征にそのまま招集し、世界的な強豪を相手に左利き左サイドバックの性能を確認することも可能になる。高い運動能力と川崎Fで培った攻撃スキルを兼ね備える車屋とはいえ、いきなり原口元気や乾貴士と良い連携を築き、大迫勇也や杉本健勇に良質なクロスを合わせるのは容易ではないだろう。だが代表定着のためには実力を証明する必要がある。彼のパフォーマンスが今後の左サイドバックの競争に大きく影響していくことは間違いない。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸