映画「亜人」主題歌に込めた真意を語るTHE ORAL CIGARETTES(撮影=片山拓)

 4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTESが27日に、通算8枚目となるシングル「BLACK MEMORY」をリリースする。6月16日に『UNOFFICIAL DINING TOUR 2017』の追加公演となった、バンド初の東京・日本武道館公演を経て、リリースされる今作は30日に公開される俳優・佐藤健が主演を務める映画『亜人』の主題歌に起用されている。絶命しても蘇生を繰り返す、新人類“亜人”をめぐる物語である同映画の“エンドレスリピート”というキーワードから、映画の暗くブラックな所に共通点を感じ『亜人』と自身を照らし合わせ制作していったという。山中拓也(Vo、Gt)は今作について、「成長させてくれるための原動力でもある黒は、必ずしもマイナスなイメージではない」と話す。その真意を聞くとともに、6月に開催された武道館公演の話から、次のステップに向かうべくバンドの成長過程にある現在の状況を4人に聞いた。

新しい視界を得たツアー

山中拓也

――夏フェスでの手応えはどうでした?

山中拓也 「掴んでいるな」という感触はありつつも、今まではライブハウスのバンドだったので、迷っていますね。第一章がライブハウスだとしたら、第二章でアリーナ編が始まっている感じです。武道館が終わって、大阪城ホールが見えてきて、そこから先の予定もどんどん決まっていく中で、自分達の今まで通りじゃ駄目だなと。アリーナでの説得力の持たせ方をどうしたらいいかなと。

――その武道館公演をおこなう前と今とではどう変わりましたか?

あきらかにあきら 想像とは全然違いました。ステージ上から見る自分達のお客さんだけで埋められた景色というのは、奈良の「なら100年会館」でやったときに若干近いんですけど、それとも違って凄く多幸感に溢れました。ステージに上がって前半はずっと緊張していました。「この感覚久しぶりだな」と思いましたし。

――その感覚はいつぶりでした?

あきらかにあきら 昨年の「なら100年会館」でもちょっと緊張したんです。ライブハウスやフェスではこういった感じの緊張はしなくなったのですが、指定席や、ホールのような上から見下ろされている環境に慣れるには、もうちょっと色々と必要なのかなと思いました。

――山中さんはどうでしたか?

山中拓也 「武道館ってこういうものなのだな」と、ステージに立って感じました。武道館までの間、リアルじゃなくてずっとどうなるんだろうなと考えているのが凄く良かったなと思いました。そう考えたのが自分の成長にも繋がったし、ステージにも繋がったなと思います。とにかく最高でした。本当に「これが最高か」というくらい幸せでした。

――鈴木さんはどうでしたか? 最後の記念撮影のときも凄い笑顔でしたね。

鈴木重伸 「お前のあんな笑顔見たことない」と知り合いのバンドマンに言われましたね(笑)。確かにあまり表情に出すタイプではないので、それくらい楽しくて幸せだったのだと実感しました。ステージングやパフォーマンスもしっかりできたという実感もありつつ、体力がゼロ以下になったのが初めてでした。アンコールは立っているのがめっちゃしんどかったです。今後、こういう大きさのライブをやるには体力を作っていかないといけないなと思いました。

――ペース配分を間違えた?

鈴木重伸 横に居てくれたギターテック(スタッフ)の人にも「そんなに飛ばして大丈夫なの?」って言われて、そういう状態になっていたんですね。緊張こそしていないものの、あの規模感のライブのパフォーマンスは、あの日やった感じで正解と思いつつ、それを更に引き上げられるくらいの力を身に付けていかなければいけないなと、終わってから思いました。

――中西さんはどうでしたか?

中西雅哉 僕は武道館までが調子悪かったんです。でも、ツアー後半はちょっとずつ調子が戻ってきた感覚があって、それを何とか武道館で戻さないとなと、日々試行錯誤していました。何が原因だったのかと。結局はっきり原因はわかっていないのですが、いつも通りライブはやり切れました。全部終わってステージを降りた瞬間の疲労感は今までに無かったです。多分、色々背負い過ぎたのかなとそのときは思いました。

――この『UNOFFICIAL DINING TOUR 2017』をやり終えて得たものは?

山中拓也 新しい視界を得た気がします。今までの世界から変わって、ひとつ抜け出して、新しい次の場所に来ているという感覚をもらった気がします。普段のプライベートのときも武道館からガラッと変わって、関わる人も変わってきました。喋っていて、これからの自分の為になる人と繋がったり。武道館前は食事や飲みには、全く行ってなかったんです。

――人との付き合い的な部分がなかった?

山中拓也 付き合い的な部分もそうですし、家で曲を作ったりランニングをしてトレーニングをしたり、一人で自分を追い込もうというモードでした。武道館が終わってからは、今は感覚的なものを身に付けないといけないんだなというモードになっています。

――ちなみに、楽器の練習は結構やりますか? フィジカルな練習と言いますか、スケール練習など基礎的な。

山中拓也 やります。ライブ前のアップなんて基礎練習ですしね。あまり練習という感覚ではないのですが。

キーワードは“エンドレスリピート”

あきらかにあきら

――今作「BLACK MEMORY」の制作はいつ頃から?

山中拓也 武道館公演のタイミングには、ある程度形になっていました。

――監督の本広克行さんと随分話し合ったとお聞きしました。

山中拓也 最初から話し合っていた訳ではなくて、最初は「このシーンから流れます」と、制作途中のCGも何も付いていない状態で、映画を2時間観させて頂きました。その映画を観る前に、どういう楽曲を作ってもらいたいかという打ち合わせはしました。

 “エンドレスリピート”というのが『亜人』のキーワードになっていて、そのニュアンスは入れて欲しいというお話があって、「フレーズかサウンドか歌詞に落とし込むかは好きなやり方でやってください」と。

――歌詞だけではなくキーワードをどこに入れ込むかというのは、面白いですね。

山中拓也 そうなんです。「THE ORAL CIGARETTESのライブの最後を締めくくるような楽曲になればいいですね」と。そういうイメージで作ってくださいと仰ってくれまして。ライブのことも考えてくれているんだなと、アーティスト思いの監督さんだなと思いました。

 それを頭に入れながら映画を観させて頂いて、映画を観ている段階でメロディもだいたい頭に浮かんで、映画を観てからすぐに曲を作り始めました。ある程度バンドで形にするのは早かったんです。そこから「ブラッシュアップしていきましょう」ということで、イントロがやっぱり大事だという話になり、本広監督と話し合って作っていきました。

――確かにイントロから凄く耳に残ります。ハードロック要素が強い印象があります。あきらさんは今回の楽曲についてどう感じていますか。

あきらかにあきら 作りながらも作った後も、「どストレートだな」と思っていました。それはそれで正解だなと思っていて、拓也のデモが上がってきたときに、自分達はこういう曲をストレートに作ることもできるんだなと思いました。ハードロック要素やラウド要素というのは、その界隈と一緒に去年たくさん対バンツアーをしたし、今僕らが提示しても受け入れられるだろうなという自信もありました。

 ハードロック要素もありますが、僕はこの曲は歌もちゃんと立っているなと感じます。いい所に落とし込めたんだなと自信をもって言えます。THE ORAL CIGARETTESらしい曲ができたなと。

――ギターがかなり目立つ仕上がりと感じますが、鈴木さんはアレンジ的にはどのように臨みましたか?

鈴木重伸 オールインしたコーラスパートがあるイントロは、歌っているコーラスの邪魔をしないようにということを意識しました。サビもヘヴィラウド系というのを出すんですけど、ミュートのパワーコードで音を下に重ねたりとか、何本かギターをプラスアルファして入れました。

――イントロの<Get it up>のコーラス部分は後から付けたのですか?

鈴木重伸 デモの段階からあって、ここが重要なポイントになるなと思っていました。むしろそこから作ったんです。

――ドラムは最後に?

中西雅哉 それも、最初は拓也が<Get it up>の声から入りたいというのがあって、そこをまずドラムと声で始めたいというのがありました。最初はもっとフィルターがかかったモジュレーションみたいな感じで、ギターが入ってくるというイメージで作っていって、それで監督から「頭からインパクトが欲しい」ということで今の形に変わりました。THE ORAL CIGARETTESにとっては今までにないアプローチになりました。

黒は必ずしもマイナスなイメージではない

鈴木重伸

――「BLACK MEMORY」というタイトルの着想は?

山中拓也 『亜人』の映画を観ている段階で、タイトルを「BLACK MEMORY」にしようと思い浮かべていました。『亜人』とTHE ORAL CIGARETTESの共通点が作品の中にいっぱい出ていて、『亜人』はグロテスクなシーンがあったり過激なシーンが凄く多いので、メジャーシーンに出てきにくかったのかなと、観ていて思ったんです。

 でも、東宝さんが『亜人』をやるとなったときに、今のトップの俳優さんがこれを演じて、人々がこれを受け入れる体制が付いているんだなということが、自分たちとリンクすると思いました。僕らも歌詞が過激だったり、ポップではないからラジオではかかりにくい、みたいな。

 そういうことで苦しんでいた時期もあったので、ブラックな所に共通点を感じました。それが日本の中心にくる時代も近いんだなと映画を観て思ったんです。ブラックってマイナスなイメージを持たれると思うのですが、僕らはこの黒を売り出してここまで来ていて、『亜人』もこの黒の世界をつくって、今こうして大々的にやるということが、映画と音楽で一緒に達成できた感覚があります。

――確かに黒はマイナスのイメージがあります。

山中拓也 黒って必ずしもマイナスなイメージではなくて、何で僕らが黒を押し出しているのかという理由をもう一度リスナーに問いかけたかったし、『亜人』とのコラボというのでブラックというのを最初に使いたいと思っていました。

 『亜人』は主人公の永井圭が、自分は普通に生きたかったのに亜人となってしまって、どう生きていくのかということをテーマに描いている話ではないのかなと思います。与えられた空間の中で自分がどう生きていくのか、親は選べない、生まれてくる環境は選べないなど、世の中の不条理がたくさんある中で生きていかないといけない、その中で自分が発信していくもの、生きていく理由などを『亜人』から凄く感じたので、それを僕らも歌詞にしようとしました。

――作品からそのテーマを感じ取ったわけですね。

山中拓也 「自分がステージに立つ理由って何だろうな?」と考えたときに、やっぱり「誰かを守りたい」という気持ちが今ここの段階でようやく出てきているんだなと思ったので、それを歌詞に落とし込んだんです。それには絶対に“MEMORY”が必要だなと思いました。今までの記憶も、これからの記憶もそうだと思うんですけど。

 人間=記憶と言ってもいいくらいなので、そこに自分達のテーマである“BLACK”というものと、“人間=MEMORY”を合わせて「BLACK MEMORY」というタイトルにしました。

――“BLACK”の持つ感情はネガティブで悪いものではない?

山中拓也 成長させてくれるための原動力だと思っています。それを“負の感情”なのかと考えたときに、何ならそういう感情がないと人間は成長しないと思うので、僕にとって“BLACK”は、かなりプラスなんです。マイナスのものがいっぱい自分に降りかかっていたからこそ、今の自分があるんだなとつくづく思います。逆に、ずっと能天気で何もない方がマイナスだなと思います。

中西雅哉 嫌なことがあっても、その場に手放さないで自分で持っておくことが自分にとってプラスになると思うんです。それを自分でプラスにすることがポジティブな力だと思います。

あきらかにあきら 努力して目標を達成したら、マイナスはプラスになると思うんです。やっぱり頑張れなくなったら終わりだと思うので。平和ボケしちゃうんですよね。常に何かに対して疑問は持っていたいし、憤りを抱えながら生きていた方が人間らしいと思うし、そういう人の方が魅力的なんです。一つの壁に当っても、絶対的な信頼がある4人で立ち向かって行くので、そういう希望と根拠のない自信を持って壁に向かっていくのが楽しいと思うんです。

鈴木重伸 僕はどちらかというと、マイナス思考な人間だと思うのですが、それをステージで曝け出したらプラスに変わったなというところがあります。そういう自分を受け入れたら、結局プラスに変わったんです。昔は自分のことが嫌いだったのですが、それを含めて、それがあるから変わったリフも出てくるのだろうし、そういう考え方に変えただけで前向きになったなと思います。考え方ひとつだと思うので、マイナスなことはこの世に存在しないと思うんです。

“苦しみ”や“もがき”を一緒に経験してもらえたら

中西雅哉

――「Flower」は爽やかな印象の楽曲ですね。いつ頃できた曲でしょうか?

山中拓也 2月くらいです。僕らはシングルの切り方を凄く考えてやっているので、「トナリアウ」と「ONE'S AGAIN」を出した意味をちゃんとこの「Flower」に繋ぎたいなという思いがありました。今回『亜人』と「BLACK MEMORY」を通して僕らのことを知ってくれるお客さんが凄く多いと思うので、THE ORAL CIGARETTESの一面だけを見せるより、色んな面があってちょっとミステリアスな方が惹かれるなと思うんです。

 THE ORAL CIGARETTESはジャンルレスというか、作りたい曲を作って、今やりたいことをやるという楽曲の作り方をしてきたので、それをしっかり知ってもらおうということで、「BLACK MEMORY」とは違う雰囲気の「Flower」を、「トナリアウ」の流れも汲みつつ入れさせてもらいました。

――どこか90年代の懐かしい雰囲気を感じます。

山中拓也 こういうメロディは僕の中で一番出てきやすいと思います。僕はヴィジュアル系のバンドのメロディが凄くしっかりしているところが凄いと思っていまして。日本人にしかできないようなメロディ作りをするので、V系のバンドをリスペクトしています。そういうところを聴いてきたので、メロディには特にこだわりたいんです。

――クリアーなコーラスも印象的でした。これはあきらさんも参加されている?

あきらかにあきら はい。ファルセットの部分はやりました。

――間奏部分のサウンドはベース?

あきらかにあきら そうです。全体的にはメロディを引き立たせるような、歌うようなベースを弾いています。(鈴木)シゲからは間奏部分ではベースソロみたいなものを弾いて欲しいというオーダーがありまして。今までソロ的な演奏はあまりなかったです。今回やってみたらこの曲に思い入れができて、コーラスにも力が入りました。「Flower」はカップリングにするのが惜しいくらい気に入っています。

――ギターに関してはどうでしょうか?

鈴木重伸 こういうテイストの曲は、昔は苦手だったのが、大分自分の中で消化できるようになってきました。コードなども僕からリクエストした部分もありますし、こういう曲でちゃんと引き算ができるようになったと思います。最初作ったときは全編通してギターを弾いていたのですが、パートを抜いていくということが自然にできていきました。

――ドラムも難しそうですよね。

中西雅哉 歌に寄り添うということを一番意識しました。そのアプローチは歌が際立つ曲に関しては、今までもやってきていますし、結構攻めている曲であっても歌は意識してパートを作るんです。展開も多かったりするので、その中でクセが出過ぎないように意識しました。作業的には凄く細かいんです。僕の思っている寄り添い方と、あきらの思っている寄り添い方でも若干違いがあるので、そういう部分を2人でスタジオに入って詰める作業が最終地点となっています。

――楽曲に例えると、今バンドはどのあたりにいると思います?

THE ORAL CIGARETTES

山中拓也 2番間奏じゃない?

あきらかにあきら 1番サビ?

鈴木重伸 1曲が終わって次の曲の頭とか?

山中拓也 確かにそれくらいみんな感覚が違うね。

――鈴木さんは1曲目は終わったところ?

鈴木重伸 そうですね。ライブハウスでずっとやって積み重ねてきたことの集大成で、武道館を経験して、次ここからもっと今まで以上に頑張っていかなきゃな、というタイミングかと思います。1曲の中で考えてしまうと終わりが見えてしまう気がして…。でも、アルバム単位で考えると何曲入っているかわからないし、とりあえず、1曲目が終わって次の曲に入ったという感覚です。

――確かに1曲で考えると終わりは見えてしまう気もしますね。11月1日からスタートする『唇ワンマン2017 AUTUMN「Diver In the BLACK Tour」』はどのような感じになりそうですか。

山中拓也 ツアーは僕らも手探りになると思っています。今悩んでいる段階だし、今からまたどんどん成長していこうとしている段階なので、その第一歩となるツアーになる気がしています。甘えかもしれないですが、それを見届けて欲しいなというところが正直あります。

 僕らも初めてのことをこれから経験していくし、僕らのことを最初にバンドとして好きになってくれたリスナーにも、その“苦しみ”や“もがき”を一緒に経験してもらえたら嬉しいと思っています。それは一緒に成長していくことだと思うんです。ファンとの信頼感や、ファンとよりリアルに何を思っているかということを共有したり、そういうことができるツアーになればいいなと思います。

【取材=村上順一/撮影=片山拓】

映画「亜人」主題歌に込めた真意を語るTHE ORAL CIGARETTES(撮影=片山拓) 山中拓也 あきらかにあきら 鈴木重伸 中西雅哉
山中拓也 鈴木重伸 あきらかにあきら THE ORAL CIGARETTES THE ORAL CIGARETTES
中西雅哉

作品情報

「BLACK MEMORY」
9月27日 リリース
初回盤(AZZS-68):1800円(tax out) 
通常盤(AZCS-2068︎):1200円(tax out)

<収録曲(初回・通常共通)>

M1:BLACK MEMORY(映画「亜人」主題歌)
M2:Flower
M3:接触

<初回盤DVD収録内容>

「UNOFFICIAL DINING TOUR 2017」の4月6日岡山CRAZYMAMA KINGDOM初日公演から5月12日大阪Zepp Osaka Bayside公演までの全公演に密着したドキュメンタリーを収録。