ドルトムント戦ではベイル(右)が左、ロナウド(左)が右でプレーした【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

3つの守り方をしていたレアル

 9月26日、UEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第2節が行われ、レアル・マドリーはドルトムントを相手に3-1で勝利した。2トップの位置にはベイルとロナウドが入ったが、位置関係はベイルが左でロナウドが右。これによって本領を発揮したのがウェールズ人FW。合理的な左右の配置が功を奏し、ロナウドとともに最高のプレーが引き出されている。(文:西部謙司)

----------

 ブンデスリーガで好調のボルシア・ドルトムント、リーガ・エスパニョーラで不調のレアル・マドリー。しかし、勝ったのはアウェイのレアルだった。

 この試合でレアルは主に2種類、いちおう3種類の守り方をしていた。

 ドルトムントの4-3-3に対して、レアルのフォーメーションはイスコをトップ下に置いた4-4-2である。まず、立ち上がりの守り方は4-3-3だった。3トップは中央にイスコ、右にロナウド、左にベイル。ただし、この場合のイスコの任務はドルトムントの中盤底にいるシャヒンのマークだ。

 この形の問題点は、ロナウドとベイルの両サイドである。高い位置へ進出してくるドルトムントの両SBに対して、ロナウドとベイルがしっかり守れるかどうか。キックオフ直後は忠実に守っていたものの、すぐに深追いはせずに攻め残るようになった。もちろんこれは想定内。

 そこで2つめの守り方になる。ロナウドとベイルは深く戻らなくていい。モドリッチとクロースはそれぞれゲッツェ、カストロとマッチアップしているが、カゼミーロは余っている。ドルトムントのSBがフリーになっていたらモドリッチ、クロースがサイドへ出て守備をする。

 彼らが捨てたMFはカゼミーロが拾う。3トップのプレスより相手を引き込む形になるが、引き込んだことで奪った後にはロナウドとベイルが裏をつきやすい。

 3つめは、2つめと似ているがイスコがどちらかのサイドへ戻る形。モドリッチ、カゼミーロ、クロースのセットがボール方向へスライドし、空いた場所をイスコが埋める。

 中盤をフラットにした4-4-2の守備陣形になる。レアルは主に2つめと3つめを使い分けながら守備をしていた。すべてに共通するのは、イスコが守備組織におけるキーマンだということ。

 攻撃時は自由に動くイスコが、守備のときにどこに戻るかで全体の守り方も決まってくる。攻撃におけるイスコの自由を認めているので、守備のパターンが3つあるといったほうがいいかもしれない。

ベイルの左、カルバハルの自由

 各ポジションに圧倒的な実力者を揃えるレアル・マドリーは、伝統的に選手の能力を生かして勝利を重ねてきた。強い奴を集めて強いという典型だ。だからレアルの監督に求められるのは、第一にスターたちを気持ち良くプレーさせること。

 ところが、全員に気持ち良くプレーさせるのは難しい。サッカーはそんなふうにはできていないうえ、補強方針がコレクションに近いのでポジションの重複などは当たり前。その結果、必ず割を食うスターが出てくる。

 ガレス・ベイルもその1人だ。BBCの一角、会長の寵愛を受けるウェールズ人が割を食っているとは思えないが、彼のベストポジションは左サイドなのだ。しかし、ロナウドが左を好むのでベイルは右へ回されていた。どの監督もベイルを左に定着させていない。

 ところが、ドルトムント戦は基本的にベイルが左、ロナウドは右だった。

 ベイルはアクセルを踏み込んだときに最高のプレーをする。驚異的なトップスピード、しかもそのまま左足で強烈なシュートやクロスボールを蹴ることができる。右サイドのベイルは常にブレーキをかけなければならず宝の持ち腐れだった。そもそもロナウドは左右どちらでもプレーできるのだから、ベイルの左、ロナウドの右が合理的なのだ。

 左で起用されたベイルはカルバハルからのパスをボレーで押し込んで先制。2点目もアシストした。クロースの縦パスで抜け出し、ゴール前へ詰めたロナウドへ丁寧なロークロスを供給している。疾走する2台のレーシングカーのようだった。今や放出候補の筆頭とメディアに書かれているベイルだが、これが巻き返しのきっかけになるかもしれない。

 ジダン監督はチームのバランスを微妙に変え始めたようだ。

 ベイルの左もそうだが、上下動専門だったカルバハルがインテリオールの位置でもプレーしている。そのときはカゼミーロやモドリッチが右SBのポジションを埋めていた。誰かが誰かを支える組織から、誰もが誰かを補う組織へ。少しずつだがシフトしているのではないだろうか。

そして今宵もCR7。だが、増えているオプション

 ロナウド集約型ではなく、それぞれの個性と可能性を伸ばしながら全員が応分の負担をする。ロナウド、ベイル、イスコを成立させるために3つの守備を用意したように、ルーカス・バスケスやアセンシオにも見せ場とタスクが与えられていた。

 しかし、そうはいってもやはりレアルのエースはロナウドだ。

 攻め合いになった後半に打ち勝てたのは、ロナウドの決定力があってこそ。ベイルのロークロスを左足のダイレクトで決めたシュートは簡単そうに見えるかもしれないが、スライディングでブロックに来るDFが届かない位置でボールをとらえている。左足は振り抜かずミートに集中、むしろ足を止めるような蹴り方だった。それでいて勢いのある抑えたシュート。そこへ持っていくステップワークの上手さも独特だ。

 ゴール前に専念してからのロナウドは、パスをシュートに変える際のステップワークが目立つようになった。もともとドリブラーで、細かく素早いステップワークには天性のものがあったわけだが、現在はゴール前でそれが効いている。

 レアルの3点目、ロナウドの2点目はモドリッチのパスで裏へ抜け出し、右足でニアポストとGKの間をぶち抜いた。問答無用の一撃。やはり右サイドで何の問題もなさそうだ。

 ジダン監督下のレアルは対応力が上がっている。相手に対応するというより、起用する選手に合わせてオプションを増やしているうちに手数が増えたという印象だ。そして抜群の決定力。どういう相手、状況でも強いオールマイティ道を突き進む。

(文:西部謙司)

text by 西部謙司