by Paul

青・赤・黄・緑など、色を表す言葉の数は文化によって異なり、工業化された文化では使用される色名の数が多いのですが、工業されていない文化では色名の数が少ないことがわかっています。なぜ文化によって色名の数が異なるのかは、これまでの研究では明らかになっていないところなのですが、新たに研究チームが50年にわたって使われてきた定説とは別のアプローチでこの問題の解明に挑んでいます。

Color naming across languages reflects color use

http://www.pnas.org/content/early/2017/09/12/1619666114

Analyzing the language of color | MIT News

http://news.mit.edu/2017/analyzing-language-color-0918

Languages don't all have the same number of terms for colors - scientists have a new theory why

https://theconversation.com/languages-dont-all-have-the-same-number-of-terms-for-colors-scientists-have-a-new-theory-why-84117

工業化された文化圏に住む人は、多くの場合、黒・白・赤・緑・黄・青・茶・オレンジ・ピンク・紫・灰色という11の色を表す言葉を持っています。もちろん、デザイナーやアーティストであれば、「ターコイズ」「アンバー」「インディゴ」など、より細かな色を言葉で表現することが可能。これが大体50〜100個ほどです。

一方で、工業化されていない文化圏に住む人々が持つ「色を表す言葉」は、より数が少ないことがわかっています。パプアニューギニアの「Berinmo」という言語には、色を表す言葉が5つしかなく、ボリビア・アマゾンの「Tsimane」という言語は黒・白・赤という3つの言葉しか持ちません。

上記のように、なぜ文化によって色を表す言葉の数が異なるかということは、これまでも研究されていましたが、その理由ははっきりしていませんでした。

色を表す言葉に関する研究の歴史は、1960年代に活躍したBrent Berlin教授とPaul Kay教授という2人の研究者にさかのぼります。2人の研究者は20言語を対象に色名のデータを集め、それぞれの言語の共通点を調べました。このとき分かったのは、ある文化において色を表す名前が2つしかない時、それは白と黒であること。そして、3つ目は赤、4つ目と5つ目は緑と黄色、6番目は青で、7番目は茶になるということでした。



by Ben Mortimer

複数の言語において色名がつく順序が同じということは、多くの文化において目立つ色から名前が付けられるということ、そして1度に付けられる色名は1つであることを示していると研究者らは考えました。つまり、黒・白・赤・緑・黄・青という色は、黒から順に「目立つ」ということになります。

しかし、その後、研究者らが工業化されていない110の文化の言語からデータを集めて分析すると、上記の法則が当てはまらない「例外」がいくつも現れました。また、「生来的に目立つ色から名前がつけられていく」という2人の仮説は「なぜ工業化すると色を表す言葉が増えるのか」ということを説明しません。 人間の視覚の仕組みは文化によって変わらないので、「生来的に目立つ色が存在する」という事実は、工業化・非工業化によって影響されないはずなのです。

そこで、マサチューセッツ工科大学やロチェスター大学、アメリカ国立衛生研究所の研究者らによる研究チームは、「色の名前はコミュニケーションの効率化のためにつけられる」という、過去の研究とは異なる新たな仮説に基づいて研究を行いました。研究者らはアマゾンの言語「Tsimane」を話す40人の被験者に対し、マンセル・カラー・システムから80色を選択した、以下のような表を渡しました。



表で使用されているそれぞれのカラーチップは黒いチップで格子状に区切られ、並べられた色は一定の割合で変化させられています。そして被験者はこのカラーテーブルを見て、示されたのが何色であるかをラベル付けしていきました。

このとき、取得されたデータは情報理論に基づきサプライザル解析を行うことで、人々の説明がどれほど異なるのかが定量化されました。つまり、青や緑といった1つの言葉が多数のカラーチップを説明するものとして多く使われたとき、チップは高サプライザルということになります。チップを多くの人が同じ言葉で説明したとき、そのチップはサプライザルが低いことを意味しますが、一方で1つのチップの色の説明に多くの人が別の言葉を使用すると、そのチップはサプライザルが高いわけです。

上記の実験をTsimaneを話す人々の他、英語・スペイン語などを話す人々に行ったところ、赤やオレンジといった暖色に比べて、青や緑といった寒色は平均的にサプライザルが高かったそうです。

その後、研究者らはWorld Color Surveyのデータを用い、工業化されていない文化における110言語のデータを比較しました。すると、これらの言語においても、同様の法則が確認されたとのこと。

80カラーチップが並べられた表において、暖色と寒色は同じ量だけ存在します。しかし、多くの言語において、寒色と暖色を細かく分類すると暖色の方が色数が多くなり、ゆえに「青」で表されるチップの数は「黄色」や「赤」で示される数よりも多くなるとのこと。ここから、人は暖色から優先的に名前を付けていったのだと研究者らは結論づけています。

この理由を探るため、研究者らがMicrosoftによってラベルが付けられた2万枚の画像からなるデータベースを解析したところ、多くの画像において暖色は写真の前景に使われ、寒色は背景などに多く使用されていることがわかりました。つまり、空や森といった背景に使われた寒色ではなく、それらの前にある暖色の「モノ」と人々は関わりを持ち、他人との話題に使ったため、優先的に暖色に名前が付けられていったというわけです。



by xommandcity

今回の研究結果は、色名の数と工業化の関係について明らかにするものではありませんが、これまで存在した「生来的に目立つ色が優先的に名前を付けられていく」という説とは異なるアプローチの第一歩の成功だとされています。

研究者らは、この仮説をさらに進めるため、雪や砂漠で覆われた地域の言語についても研究したいと考えているとのこと。これらの地域では背景色が異なるため、異なる実験結果がでるのではないかと見られています。