研究者、外資系コンサル、伝統的日本企業、世界的NPO代表と多様な職を渡り歩いた著者が、自由な働き方を実現するためのスキルを公開した『人生100年時代の新しい働き方』がついに発売! 今回は、同書より、ライフシフト時代を生き抜く世界の一流ビジネスパーソンが愚直に実践している情報整理術を2つ、ご紹介しましょう。

「手で聞く」ことで、情報をスムーズに取り入れる
――情報整理のヒント(1)

 人の話を「聞く」には、アンラーン(第2回 9/27参照)だけでなく、時には論点を整理する力と根気も必要だ。順序立てて話すことに慣れていない人や、いろいろなアイデアで頭がはち切れんばかりの人の話は、論点が行ったり来たりして情報が頭に入ってきにくいからだ。また、自分が門外漢のトピックも理解できないうちに話が進んでしまったりして把握しにくいこともあるだろう。だからといって、有益な情報を聞き逃す、というのは避けたい。

 そんなときに試したいのが、「聞きながら絵を描く」ということ。「絵」といっても、実際は何でもいい。丸や四角や矢印が並んでいるだけのコンセプト図であろうと、類似するキーワードを紙に書き集めたものであろうと、頭の中だけで整理しようとせずに、書きながら聞くということが大事なのだ。

 以前、世界経済フォーラムで、開発途上国における水問題について話しあう分科会に参加したときのことだ。ビジネス、政府、市民セクターなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人たち10名ほどが議論を始めたのだが、話があっちこっちに飛んで議論は混乱し、散漫になりかけた。そのとき、参加者の1人がついと立ってホワイトボードに向かい、サラサラと図を描きはじめた。

 図自体はそれこそ「ポンチ絵」とでもいうようなシンプルなものだったのだが、その図によってそれぞれの考えの論点が整理されたおかげで、議論の内容がさっと頭に入ってきたのを覚えている。それからの議論は、とてもスムーズに進んだ。

 このような話を聞きながら視覚化していく方法はマインドマップやグラフィック・レコーディングといった名前で体系化されている。それを学んでみるというのも1つの方法だが、前述の通りキーワードを書き出し、丸や四角で囲って、矢印で相関関係を示す、というくらいの図でも十分に威力を発揮する。

「手で聞く」くらいのつもりで挑戦してみるといいだろう。

メモ取りを侮れない2つの理由
――情報整理のヒント(2)

 手で聞くことに関して次に勧めたいのは、メモ取りだ。そんな基本的なこと、と思われるかもしれないが、経験上、聞いた情報の理解度と、記憶への保存率を高める効果がある。

 目的は2つあって、1つ目は相手に理解していることを示すこと。これは、前述の図を描くことでも同様だが、話の区切りがよいところでメモや図を相手と共有し、「このような理解で正しいでしょうか?」と確認すれば、相手の言いたいことがきちんと聞けていると判断できる。間違っていれば指摘してもらえるし、話を聞き終えてから再度聞き直したりする手間も省ける。

 2つ目はわかりやすいように論点を整理すること。また、話を聞いた後にメモをなぞっていくと、新しい意味合いが見えたりすることもあるので、これもまた有効だ。

 メモを取るのが難しいような状況、たとえば議論を進行するのに専念したい場合は、同席する同僚に頼んでもいいし、相手の話すスピードが速すぎる場合は、ホワイトボードにメモを書きはじめ、ペースをコントロールしてもいい。

 また、取ったメモを後から見直すことには別の利点もある。自分のメモだけでなく、同席者も話の内容を書き留めていれば、それを突き合わせると聞いた話を多角的に見ることができるのだ。

 コンサルティング会社のニューヨーク支社に勤務していたときのことだ。当時関わっていたプロジェクトを率いていた役員は、必ずメモの突き合わせをミーティング後に実施する人だった。クライアントとのミーティングが終わってオフィスに戻ってくると、末席のアナリストまで含めて同席したチームの全員に、「君は、今日のミーティングをどう感じた? どこが課題だと思った?」と、詳しく聞くのだ。

 その役員は、気難しいクライアントさえもうならせるユニークで貴重なアドバイスを生み出す天才だ、と社内でも言われていた。それは、ひとえに彼の「聞く」力、つまり情報キャッチ力によっている。さらに、メモの突き合わせだけではなく、人の話をオープンマインドで聞いて理解していることも、優れたアドバイスを生み出す助けになっていることは間違いないだろう。

(続く)