デパ地下にオリジナルの惣菜ブランドを出店(写真:ケンコーマヨネーズ)

1983年に制定された8月31日の“野菜の日”については人口に膾炙(かいしゃ)し、今年もJAや調味料メーカー、飲食店チェーンなどでイベントが開催されていた模様だ。しかし、その1週間前の8月24日が“ドレッシングの日”だったことをご存じだろうか。

なぜこの日がドレッシングの日なのかについては、2つの理由がある。1つは、野菜に“かける”から、野菜の日の数字を掛け合わせて「8×3×1=24」。また、カレンダー上で31日の真上に24日が位置するので「野菜の上にかける」ドレッシングを意味するわけだ。この日をドレッシングの日と定めたのは、業務用マヨネーズの老舗メーカー、ケンコーマヨネーズ。昨年5月、日本記念日協会からドレッシングの日としての認定を正式に受けた。

活況を呈する中食市場


経営企画室長の京極敦氏(筆者撮影)

「ドレッシングは野菜以外にも用途が多様化しています。ドレッシングの幅広い活用方法や、メニューをご提案したいという意図で記念日を制定させていただいたものです。単なる語呂合わせでなく、2つの意味を持たせたことから、記念日協会からも“アイデアがユニーク”と評価されました」(ケンコーマヨネーズ 執行役員 京極敦氏)

ケンコーマヨネーズは、マヨネーズやドレッシングの生産量では業界でシェア2位のメーカー。一部商品を除き、ほとんど業務用としてコンビニチェーンやスーパー、飲食店チェーンなどに販売している。京極氏も述べているように、ドレッシングの使い方が多様化したり、健康志向商品へのニーズが高まるなど、わずかな動きはあるものの、市場の伸びは全体で101〜102%と横ばいの状況だ。そこで同社が今、期待をかけているのが、中食・外食市場に向けたサラダや惣菜などの商品である。

共働き世帯の増加、個食化といった社会背景から、中食市場が最近特に活況を呈している。しかし実は、同社では、1977年とかなり早い時期からこの市場に参入していた。そのきっかけとなった商品が「ファッションデリカフーズ」という業務用サラダだ。業界では“ロングライフサラダ”と呼ばれているこのサラダ、サンドイッチにはさむ具材として開発された。最大の特徴が常温で72時間保存できることで、開発当時、画期的だった。

「それまでは、夏場にはサンドイッチの具材はジャム、焼きそば、メンチカツぐらいしかなかったので、このロングライフサラダは非常に受け、現在もトップシェアです」(京極氏)

この商品の発売をきっかけに同社は“サラダの会社”として歩みを進めるようになる。また、マカロニや卵、ポテトなどベーシックなサラダだけでなく、サラダの具材としては当時登場していなかった、ごぼうやかぼちゃもサラダに取り入れた。そのほか厚焼き卵などの卵加工品、野菜のみじん切りなどの素材系などへと商品を拡大してきた。結果、マヨネーズ、ドレッシングなどを含むすべての商品を合わせ、現在同社では顧客ごとの個別対応を含め、約1500種類の商品を扱う。このように商品数が多いだけでなく、さらに、うち250〜260種類ほどは新開発の商品で、つねに入れ替わっている状態だという。

「最近では、居酒屋チェーン向けに、煮物などの和総菜や素材系が伸びてきています。和総菜は1袋500グラムの使い切りサイズで、そのまま器に盛りつけられること、また高級感があるということで人気です。食品素材とはカット、下ゆで済みの野菜などのこと。人手不足を背景に、手間がかからないものが喜ばれるようになっているわけです。また、昔は業務用というと大容量でしたが、最近は廃棄ロスを低減するため、小型化ニーズが高まってきています」(京極氏)

そのほかユニークな例としては、コンビニのおでんの具材として、だし巻き玉子の販売が伸びてきているという。卵サラダなどと合わせ、卵製品は売り上げ前年比11.6%増と好調だ。また商品のなかには、売り上げ前年比20%増のものもあるという。2017年3月期の売上高は708億1200万円(前年比5.8%増)で、6期連続の増収を記録。市場ニーズを細かくとらえつつ、スピーディに対応できるのが同社の強みといえそうだ。


ドレッシングやマヨネーズだけでなく、素材系から和総菜、卵製品と商品構成は幅広い(筆者撮影)

このような成長ぶりには、いくつかの秘密がある。本社7工場、連結子会社7社9工場を擁し、1日に何度も種類を切り替えながら商品を製造できる生産体制や、正確な在庫管理システムといったハードの充実が挙げられる。これにより、1500を越えるアイテム数を抱えながら、利益を維持することができる。

「在庫管理は以前は手作業で行っていましたが、非常に時間がかかり、残業が多かった。そこで10年前に情報システムを入れ替えたのですが、ちょうど中食市場が伸びている時期にあたり、4年前ぐらいから利益が大きく伸び始めました」(京極氏)

「メニュー提案型」の営業

そのほか特徴的なのが、営業と商品開発の方法である。同社の営業は“メニュー提案型”で、たとえばドレッシングを販売する場合には、そのドレッシングを使った新しいメニューを提案する。ドレッシングはサラダにかけると決まったものではなく、魚や肉のソースを作るときにも役立つのだそうだ。

同社の営業・開発・生産等は分野別に18のチームを組み、営業を通じて吸い上げられたニーズを商品開発やメニュー提案に反映させている。営業、開発、生産の担当事業部間で綿密な情報共有を行うことにより、きめ細かな売り込みが実現できているのだ。

今後はさらに、ロングライフサラダや惣菜を武器に、中食市場における商品拡大を目指す。生産拡大に対応すべく、2018年4月にはフレッシュ惣菜やロングライフサラダを扱う新工場を竣工予定だ。そのほか、2019年3月までに3工場について増築や建設が予定されている。

「食品スーパーの惣菜売場が広がってきていることを見ても、今後ますます中食が伸びていくことが予想されます。他業種からの参入も増え、競争が激しくなっています」(京極氏)

消費者との接点を今後どれだけ広げていけるか

課題といえるのが、業務用メーカーだけに、消費者との接点が小さくブランドの知名度も低いことだ。そこで同社では近年、デパ地下にオリジナルの惣菜ブランド「いもたまや」「WaSaRa」、イートイン店舗「自遊庵」を出店するなどし、ブランド強化、消費者ニーズ取り込みに力を入れている。「ドレッシングの日」制定もそうした戦略の一環として行われたもので、昨年は一般消費者を招いてのイベントなども開催したようだ。

また、健康志向を反映した商品の開発にも積極的だ。その1つが、ミドリムシを取り入れたドレッシングやサラダなどの“ユーグレナ商品”である。ミドリムシは藻類の一種だが、アミノ酸類、ビタミン・ミネラル、DHAなどの栄養素が豊富で、健康食材として最近注目されている。ただし同社では2014年7月にユーグレナドレッシングを発売したものの、あまり売り上げが伸びず、現在は販売を中止している。業務用であるため、ユーグレナによる健康効果が消費者に伝わりにくかったのが敗因だろう。

現在期待をかけているのが、“低糖類、低カロリー、減塩”を実現したドレッシング『トリプルバランス』だ。2016年10月に発売し、6種類で展開している。なお、ダイエット法としてよく知られるようになったローカーボ(低糖質)とは、炭水化物や糖分などを減らした食生活。「糖質」と「糖類」は厳密には違う意味なので、注意しなければならない。「糖質」とは、糖類・糖アルコール・甘味料・多糖類をすべて合わせたもの。そのうちの「糖類」とは、ブドウ糖、果糖、砂糖、乳糖などだ。

「ドレッシングでは、脂質、糖類、塩分を抑えると、どうしてもコクが出ないので、おいしく作るのが難しい。トリプルバランスはヘルシーでおいしいということで、他社にはない商品。幅広く提案できると期待しています」(京極氏)

たとえば「ノンオイルたまねぎ」では、1食分の15グラム当たり、糖質は0.6グラム、うち糖類は0.2グラムと低く抑えられている。試食してみたところ、さすがに、一般的なドレッシングに比べれば薄味だ。しかし、女性や健康志向の高い人にとって、ドレッシングのカロリーや糖分、塩分は非常に気になるところ。一般消費者向けに市販されれば間違いなく売れるのではないだろうか。また、ファミリーレストランをはじめとして、サラダバーやメニュー表でカロリーや糖質の表示をしている飲食店も多い。これらを通じて商品の特徴が消費者にうまく伝われば、ヒットする可能性もある。やはり、消費者との接点を今後どれだけ広げていけるかがカギとなりそうだ。