社員の離職を防止するためにすべきことは?(写真:tkc-taka / PIXTA)

社内人材の育成と開発こそ、会社を安定的に成長させるいちばんの方法――。わかっちゃいるけど、いったい何から手を付けていいのか。人事や人材開発部ならずとも、日々こんな悩みを抱えているビジネスパーソンは多いことでしょう。
社員のポテンシャルを最大限に引き出すにはどうしたらいいのか。多くの企業のこんなニーズと日々向き合っている米人材開発支援会社、コーナーストーンオンデマンド経営陣のブログから、今回は社員の離職防止の方法を転載します。

企業にとって離職防止は重要施策

このところ、米国各地の企業にとって非常に深刻で頭の痛い問題としてつねに真っ先に挙げられるのが、社員の離職率です。人口減少に加えて、これから多くの社員が定年退職の時期を迎えることを考えると、この割合は今後も一層高まることが予想されます。また、転職する人の数も過去数年間で急激に増加しており、2016年12月時点の離職者数は300万人を超え、実は景気後退前の水準を上回るまでになっているのです。

絶えず新たな社員を採用して育成していくには多大なコストがかかることに加えて、ビジネスオペレーション全体として本当に打撃となるのは、そうした過程で生産性や顧客満足度、経営管理、従業員エンゲージメントといった側面に影響が出ることです。「売り手市場」の様相を呈してきた今、リテンション(離職防止)に最優先で取り組むことは、どの企業にとっても得策です。

以下に挙げるのは、企業の人事部門がすぐに始められる人材のリテンション戦略強化のための5つのポイントです。

1) 「成長できる機会」を可視化する

社員が会社に留まるには、自分がそこで成長できる余地があると感じる必要があります。ビジネスアドバイザリー会社FMG Leadingの社員分析スペシャリストのジョシュ・ケーラー氏は、「優秀な人材のリテンションのためには、やりがいのある仕事を与えることが最もいい動機づけになります。仕事量を増やすのではなく、トレーニングやコーチングを通じて、あるいは新たな役割を得ることで自己を高め、専門的なスキルを高める機会がつねに得られるようにすることです」と述べています。

コーナーストーンのキャリア・トレンド・レポートによれば、高パフォーマンス組織の75%が社内にいる高ポテンシャル人材を洗い出しているものの、そのことを明確に、相手に伝えているケースは29%にすぎません。

あなたの会社には社員が成長できる機会があるかもしれませんが、見えていなければ、社員はそうしたチャンスが生かせることに気がつきません。

風通しをよくし、社員に対して現在および今後のニーズについて率直に伝えるようにしましょう。そして、社員を新たなチャンスに積極的に導けるようなシステムが確実に機能するようにすること。与えられた役割の中で個人としてどのように成長できるかということが、社員にとっては最大の関心事なのです。

社員が会社を辞めるのは・・・

2) 会社でのキャリアパスを確立する

社員に自らキャリアパスを作成させるよう支援し、社員と上司が互いにそれぞれの目標や期待することを明確に理解できるようにしましょう。

この点について、TheAdvisorCoach.comでフィナンシャルアドバイザー人材のリテンション施策に携わるジェームズ・ポラード氏は、「社員が会社を辞めるのは、行き詰まりを感じたときです。自分の期待がかなえられていないと思えば、会社を辞めようとします。優秀な人材を維持するために最も威力を発揮するものが、強力なサポートの存在です」と指摘しています。

上記のキャリア・トレンド・レポートによれば、社員の74%は、明確な目標を設定することによって、自分のキャリアの進捗状況を能動的にチェックしています。このプロセスに上司も積極的に関与することが、社員が会社に留まりながら目標が達成できるサポートをすることになるのです。

3) 部下を育成する上司が評価される仕組みを作る

社員の仕事への意欲はそれぞれに異なる動機があり、上司も例外ではありません。もし上司が優秀な人材を社内で昇進させることよりも、自分の部署に留めておくことに強い意欲を持っているとすれば、社員をリテンションするうえでの障害になりかねません。

キャリア・トレンド・レポートによると、パフォーマンスが高い組織の3分の2近くが社員の成長のためにコーチングに投資しています。マネジャークラスがコーチングやメンタリングのスキルを身に付けられるよう、積極的にトレーニングやサポートを行うとともに、人材育成と社内共有に取り組めばきちんと評価され、報酬に反映されるようにしましょう。

4) 社内でのキャリアチェンジの機会を作る

社内で人材を調達できれば全般的なコストが抑えられ、外部から新たな人材を採用するよりもよいパフォーマンスが得られることは企業側も理解しています。しかし、コーナーストーンの調べでは、過去2年間で欠員を社内の人材で補充したケースは37%に留まっています。

社員に対して社内キャリアチェンジの機会を約束するには、会社が方針として明確に定めて、これをトップダウンで社員に知らせる必要があります。採用担当者が候補者の選考や後継人材について検討する際にこうした社内でのキャリアチェンジを考慮に入れて、何が何でも外部から採用するのではなく、まず社内の人材を検討してみるような文化を作り上げることです。

単に昇進機会を与えるだけではダメ

5) ラーニングや能力開発に投資する

社員が成長し、目標を達成して昇進していけるような文化を社内に作り出すためには、教育や能力開発に優先的に投資することを、経営陣が明確に理解している必要があります。

キャリア・トレンド・レポートでは、「会社にトレーニングや能力開発制度がある」という回答はわずか38%でした。一方、トップが人材育成を重視する社風を築いている会社は、収益の伸びが他社を2.7倍上回っていることも明らかになっています。まず、企業はラーニングや能力開発が自社のビジネス戦略にもたらす利益を数値化するところから始めて、明確で実行可能な人材育成計画を策定することです。

SDエクイティ・パートナーズの共同創業者兼CEO、エヴァン・ハリス氏は、「多くの会社は社内で十分に昇進する機会を与えていると思っていますが、さらにもう一歩進めて、社員がそうした機会を得るために必要なツールを与えることが重要です。知識を高めたり、スキルを身に付けたりするためのリソースを提供することによって、社員が会社に留まる割合は高まるでしょう」と話します。

調査の結果から、2つのことが明らかになっています。一つは、上司は自分の時間のうち最大50%を新入社員のために割くことができるということ、もう1つは、社員が会社を辞めるリスクが最も高いのは入社後の1年間だということです。ここで挙げた簡単なテクニックを実行に移すことで、大きなリテンション効果が表れるでしょう。