以前の丸みがかったロゴを刷新、新生ビッグローブをアピールした(撮影:風間仁一郎)

9月28日。インターネット接続事業やMVNO事業(通信会社のインフラを借りた通信サービス)などを展開するビッグローブが事業戦略説明会を開催した。

記者会見を開催するのは久々だ。同社はもともと電機大手・NECの子会社だったが、2014年に再生ファンドの産業パートナーズに売却された。それを携帯大手のKDDIが2017年に買収し、完全子会社化した。

今回の会見はKDDIが買収してから初であるばかりか、産業バートナーズに売却されて以来、初の会見である。「ファンド傘下時代は『会見を開催する費用対効果はいくらか。金額で示せ』と厳しく(詰められて)、開催したくてもできなかった」(NEC出身の久保真常務)という経緯がある。

動画や音楽配信が「無制限」のエンタメSIM

ビッグローブの通信料は音声通話付き、データ通信上限3ギガバイトの場合、月額1600円。ほかの格安スマホとさほど変わらない。また、KDDI子会社には格安スマホ「UQモバイル」を展開するUQコミュニケーションズがあり、どう住みわけていくのかという課題がある。


差別化策として打ち出した「エンタメSIM」(撮影:風間仁一郎)

そこで発表されたのが「エンタメSIM」。ビッグローブ独自の制御技術を用いたSIMカード(端末に挿入する通信に必要なカード)で「動画の再生開始が早く、画像がきれいで、途中で再生が止まらないSIM」だという。

しかも、月額480円のオプション料金を払えば、動画配信のユーチューブやアベマTV、音楽配信のApple Music、スポティファイなどの通信料が加算されなくなる(有料コンテンツは別途支払いが必要)。

NEC出身の中野雅昭常務は「ネットフリックスやhuluなど、ニーズがあればコンテンツを増やしていきたい」と意欲を見せ、KDDI出身の有泉健社長は「動画がきれいで見やすいエンタメSIMで(他社やグループ内で)差別化していきたい」と語った。

同時に、サポートの充実も図る。格安スマホでは珍しく、自宅に訪問して行う設定サービスやスマホ教室を10月から全国で展開を開始する。

これは過去のビッグローブでの成功体験に基づいている。「ビッグローブは(パソコン通信時代から)パソコン教室を全国でやってきた。それで、わからないことがあればビッグローブに聞いてみよう、といわれるようになった。ビッグローブのブランドを再起動するには顧客の懐に入るようなサポートが必要」(有泉社長)という思いがある。

こうしたサービス発表とともに、SIMカードやスマホなどのモバイル事業を統合してサービス名を「BIGLOBEモバイル」とした。コーポレートロゴも刷新し、新生ビッグローブをアピールした。

ただ、ブランドの再構築には手間も時間もかかる。それは覚悟の上だ。「地道にやっていかないとよさがわかってもらえない。第2弾、第3弾の仕掛け作りも重要」(有泉社長)。KDDI傘下に入ってすでに8カ月が経とうとしている。グループ内でのシナジーが気になるところだが、「まずはビッグローブのブランドを磨き上げる」と有泉社長は語る。

KDDI回線を用いた新プランも提供開始へ

ビッグローブは現在、NTTドコモの回線を借り受けてサービスを展開している。格安スマホ会社としては契約数で国内シェア6位(2017年3月時点。MM総研調べ)だ。同7位のUQコミュニケーションズと合算すると約9%で、楽天モバイルに次ぐ4位になる。

KDDI傘下になったことで、回線をKDDIに変更するのかが最大の焦点だったが、有泉社長は「今後もドコモのネットワーク上でサービスを提供していく。ただ、複数の選択肢があるのは顧客にとっていいこと。現在準備中で近々お知らせできる」と、既存のドコモ回線プランを維持しつつ、KDDIプランも新たに提供を開始する考えを示した。


久々のテレビコマーシャルも投入する。キャラクターが三人であることについて「auの三太郎とは関係ない」と有泉社長は語った(撮影:風間仁一郎)

また、業界では楽天が国内シェア5位のフリーテルを展開するプラスワン・マーケティングの格安スマホ事業買収を発表するなど、再編・淘汰の動きが本格化している。M&Aへの取り組み姿勢を問われると、有泉社長は「考えていない」と明言した。

「ビッグローブとプラスワンは契約数が40万件前後で規模が近い。プラスワンは債務超過寸前だがビッグローブは大丈夫なのか」との質問には、「格安スマホ事業は黒字に届いていないが、光回線サービスや法人向けサービスもあり黒字だ」と有泉社長は反論。実際、官報によれば2017年3月期は売上高873億円、営業利益46億円で2期連続の増収増益だ。

格安スマホ事業の黒字化のメドについては「契約数が100万件を超えないと今の料金体系では難しい。早ければ2020年には黒字化したい」とした。

1986年に国内初のパソコン通信「PC-VAN」を立ち上げ100万会員を獲得。グーグルの検索エンジンを国内初採用、動画配信では1000万会員を獲得するなど先進的な取り組みで鳴らしたビッグローブ。過去に築いたブランド力をどこまで取り戻せるだろうか。