あなたの遊び方、間違っていないだろうか?

大人になり、ある程度の経済力を手にすると、遊び方の流儀が問われるようになる。

酸いも甘いも経験し、東京で遊び尽くした港区民たちの、次なる遊び方。

そんな彼らの最新事情を、飲食店経営者であり港区おじさんジュニアと呼ばれる剛(32歳)が探っていく。

これまでに、パーティールームで興じるトランプの楽しさや食事会のためだけに香港へ飛ぶ港区女子、ガジェット大好き港区民などを学んできた。

さて、今週は?




爽やかな、とある朝。

僕は豆から挽いたこだわりのコーヒーに、ミルクをたっぷりと入れたカフェラテを味わいながら、iPadを片手に、BOSEのスピーカーで優雅に音楽を聞いていた。

部屋から見える、東京タワー。

僕も成功したと言えるのだろうか...なんて感慨深く自分に酔いしれていると、突然 一通のLINEが入り、せっかくの良い気分がぶち壊された。

-つよぽんって、あのメンバーのヒロトと知り合いなの?

送り主は、先週食事会で出会った三宿に住んでいると言っていた女の子だった。

ちなみヒロトとは、若い女性を中心に絶大な人気を誇るタレントである。

港区界隈で遊んでいる内に仲良くなり、今ではサシ飲みをするくらい仲が良いけれど、こんな連絡をよこしてくる女性には絶対に紹介しないし、仲が良いことも言わない。

とりあえずLINEは無視することにしたが、ここでふと考えた。

港区には、芸能人との交流がある一般人も多い。しかし港区の中心部に生息している一般人たちは、彼らとのツーショット写真をSNSなどに投稿しない。

たとえ投稿したとしても、あくまでも同性の友達のみ。決して異性の相手との写真は投稿しない。

しかし皆、心のどこかで芸能人と知り合いだと自慢したいはずだ。

港区民のこの暗黙のルールのような制度は、一体どこから生まれてくるのだろうか?


隣を見れば芸能人?門外不出のシークレットコミュニティーとは


あえて言わないのが、本物の証?


翌日、タイミング良く友達から誕生日会の誘いがLINEで届いた。

-来週金曜、いつもの場所でヒロトの誕生日会するから。剛は強制参加な。

場所は、いつもの西麻布にあるカラオケバーの個室だった。(もちろん会員制だし、普通の人は中々入れない店なのだが、港区民はスイスイと入っていく)。

そしてここでも、暗黙のルールがある。

写真撮影、一切禁止。そして誕生日会の内容は、口外しない。誰が言う訳でもないが、これを破れば次がないことを皆知っている。




しかしこの感覚は何なのだろうか。たとえ知り合いでも、一緒に遊んでいても、自慢しない。 “知っているけどあえて言わない”方がかっこいい美学を、何故か妙に皆が心得ている。



「あら。つよぽん、来てたんだ。」

誕生日会の会場となる店に着き、エントランスの暗証番号を押して中に入ろうとした所で、聞き覚えのある声がした。

振り返ると、真衣が入り口に立っている。

-本当に、コイツはどこにでも出没するな...。って、芸能人の誕生日にホイホイやって来る、ただのミーハーかよ!?

そう思いながらも、今日の真衣はどの港区おじさんを狙うのか、そしてヒロトという真衣が好きそうなネタに対し、どう接するのか見てやろうという気持ちになっていた。

「今日来る人、誰だか知ってるの?」
「ううん、知らない。」
「ヒロトっていう友達なんだけど、今結構人気の、歌手とか俳優とかもやってるタレントだよ。」
「ふーん、そうなんだ。楽しそうだね。」

相変わらず、心ここにあらずの話し方。僕はやっぱり、彼女が苦手だと心の中で再認識する。

しかし、ここで出会ってしまったのが運のツキ。一緒に店に入ると、嬉しくないことに何故か、真衣が僕の隣に座ってきた。

「え!ここじゃなくても良くない?他に席空いてないの?」

僕はうっかり、明らかに嫌そうな顔をしてしまっていたようだ。真衣がちょっと可笑しそうに笑いながら、耳元で囁いた。

「だって、一番下っ端の人の隣だと飲み物とか頼みやすいから。」

今日は、貧乏くじを引いたようだ。

そう諦めかけていた時、本日の主役であるヒロトが深々とニット帽を被った姿で登場した。

「ほら、ヒロトだよ。」

小声で真衣に言った。

しかしこの後、僕は港区の恐ろしさ、港区で生きるために必要な能力を目の当たりにすることになる。


目指すべきはプロ彼女?!暗黙のルールを破る奴は即破門


目指すところはプロ彼女!?クローズド・コミュニティーで生きる彼らの生態とは


「剛お疲れ...って真衣!?こんな所で何やってんの?まさか今日いるとは!」

ヒロトがニット帽を少し上にあげ、白くて綺麗な歯を見せながら爽やかすぎる笑顔を一人の女性に向けた。

その相手とは、何と僕の隣に座っていた、真衣だった。

「ヒロちゃん、久しぶりー。この前話さなかった?今日お誕生日会があるってこと。」

「言ってたけど、まさか自分の誕生日会なんて思うわけないじゃん(笑)」

-ま、まさかの、そこかよ...!?

明らかに親しげな様子で話す二人を見て、狐につままれたような気分になる。さっき僕がヒロトの話をした時、真衣は一言も発していなかった。

当然のことながら面識もないと思っていたし、ただ芸能人に寄ってきたミーハー女子の一人としか思っていなかったのに。




主役のヒロトが奥の席に座った後、真衣に小声で問いかけた。

「嘘でしょ?何で早く言ってくれないの。俺、超恥ずかしいじゃん。」

「あぁ、ヒロちゃん?飲み友達なんだよね。」

隣で真衣が呟いた。またそのサラリとした言い方に、自分がミーハー心むき出しの気がして恥ずかしくなる。

「だって...知人自慢するほどダサいことはないから。」

真衣の一言に、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受ける。

ただのたかり屋で、港区おじさんにハイエナのように群がる港区女子だと思っていた真衣だが、彼女の方が一枚上手だったようだ。

港区にいると、とんでもない人達に出会えることがある。憧れの人や手の届かない遠い存在だと思っていた人が、実は身近にいたりする。

そもそも、芸能人を交えたコミュニティーに入れる人はごく一部。

一度でもクローズド・コミュニティーに足を踏み入れれば、様々な人と次から次に出会えるが、そこでの出来事を口外するなど、ルールや掟を破ると、永遠に呼ばれなくなる。

-無口の勝利ってやつか...

真衣がこの港区界隈で生きている、正確に言うと皆から可愛がられ、生かされている真髄を見た気がした。

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