私はNHKの朝ドラが好きだ。現在放送しているドラマ「ひよっこ」も欠かさずチェックしている。資料写真。

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私はNHKの朝ドラが好きだ。現在放送しているドラマ「ひよっこ」も欠かさずチェックしている。

朝ドラが好きな理由は3つある。まず、多くの朝ドラが昭和・大正時代の物語であること。平成時代に日本に来た私が興味を持っている時代である。

次に、朝ドラの主人公はほぼ女性であること。女性の視線から世の変化を表現している。視聴者がドラマを通じて、日本の女性たちが時代と共に成長する姿を考察できる。しかも、主人公の女性は皆かわいい。

そして、朝ドラの物語の進行が穏やかで、あたかも時の流れがゆっくりになったと感じられること。役のセリフはとても地味だけれど、奥行きが深い。しかも役はほぼいい人。「ひよっこ」の中でも悪役はいない。もちろん、皆がそれぞれの個性と物語を持っている。

私はすっかり朝ドラにはまってしまい、15分間ドラマを観ている間は無我夢中で憧れの人たちに出会ったような感覚になる。

朝ドラに対する感情から、「正能量」という中国語の新語を思い出した。「正能量」とはもともと「プラスエネルギー」という意味の科学用語だが、現在、人が前向きに生きていくための事柄や心理などを指して「正能量」と表現する。イギリスの心理学者、リチャード・ワイズマン氏の著書のタイトルに由来する言葉だ。

朝ドラの登場人物の明るい人柄から伝わってくる前向きな感情に満ち溢れた雰囲気は、私にとってはまさに「正能量」である。朝ドラから元気をもらっているのだ。

ところで、中国では「正能量」を政治的な人物が使ったことによって「政治的なものの概念」になってしまいそうな雰囲気も。政府がマスコミと世論に政治的に正しいもの、いわゆる「正能量」を求める。「正能量」に反するものはマイナスという意味の「負能量」、つまり「政治不正確」とみなされる。

元気の源は人それぞれである。各々に「正能量」に対する判断基準があると思う。「正能量」は規定され、強制されるものではなく、人々が心から感心すること、つまりある価値観に強く共鳴することによって生まれたプラス思考、言い換えれば、人々のやる気と自信を向上させるエネルギーである。ただし、政治的な「正能量」はただ権力の意思が表れるものだ。

私は朝ドラを日本独特の「文化的な正能量」だと名付けたい。ちなみに、80年代大ヒットした朝ドラの「おしん」は世界に日本文化のエネルギーを広く伝播した。余談だが、「ひよっこ」のような日本の経済高度成長期を描くドラマを中国に輸出できればいいと思う。現在の中国人の暮らしぶりは、「ひよっこ」時代の日本人に似ているのかもしれないから。

■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。