日本代表メンバーを発表したバヒド・ハリルホジッチ監督

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 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督は28日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、10月6日のキリンチャレンジ杯・ニュージーランド戦(豊田ス)、同10日の同ハイチ戦(日産ス)に臨む日本代表メンバー24人を発表した。

以下、ハリルホジッチ監督の会見要旨

●バヒド・ハリルホジッチ監督

「今回は代表発表前に少し話をしたい。私は日本に来てから、ずっと皆さんと話をしているし、日本の指導者の方々ともサッカーの話をしている。そして、私は指導者、メディアの方々からポゼッションという言葉を耳にする。日本のサッカーの教育はポゼッションをベースに作られているのかなと感じた。もちろん、点を取るためにはボールが必要だ。ボールを持つことがポゼッションだが、相手よりもボールを持ったからと言って勝てるとは限らない。ポゼッションが高ければ勝てるわけではない。たくさんの日本の指導者がそれぞれメッセージ、ビジョン、サッカーの見方などをを伝えてきたと思う。たとえばスペイン、フランス、ブラジル、ドイツ、イングランド。それぞれの国にそれぞれのサッカーのアイデンティティーがある。何世紀もサッカーをプレーしている強豪と、現時点での日本は比較できないかもしれない。日本ではサッカーは若いスポーツ。しかし、サッカーは世界で一番人気のあるスポーツだ。日本でもサッカーが人気のあるスポーツになってもらいたいと思っている。私は私のサッカーの見方を皆さんに伝えている。そして一つの資料を作成した。選手たちの組織、メンタル、フィジカル、テクニカルな特長を元に日本サッカーのアイデンティティーを考えた。独自のアイデンティティーを持たないといけないが、モダンサッカーをベースにしないといけない。それぞれの国でサッカーは発展している。日本でも同じことをしないといけない。

 アウェーでオーストラリアと対戦したとき、特に守備の面でほぼ完璧なゲームをした。アウェーでアジアのチャンピオンと対戦した試合であり、チームのコンディションも良くなかった。それに合わせた戦術を採用し、選手もしっかりと実行した。あと少しで勝利も収められたかもしれないし、アジアチャンピオンが日本のゴールを脅かす場面はまったくなかった。その試合でのポゼッションはオーストラリアの方が高かった。しかし、決定機をつくることができなかった。逆に我々は前半に小林悠、浅野が決定機に絡み、素晴らしいキーパーのセーブがあったが、そこで点を取っていれば勝てた試合だった。その試合後、日本に戻って来たらたくさんの方に批判された。それはポゼッション率が低かったから。そのような批判を聞くと、私と批判している方のサッカーの見方は違うと感じる。

 オーストラリアとの2戦目はまったく違う戦術を用意した。我々の今後の基準となる試合。90分間しっかりゲームをコントロールできた試合だった。非常に高い位置でのハイプレッシャー、あるいは引いてブロックを作るという形も状況に合わせてできた。攻撃はスピード、日本人の特長を活かしたグラウンダーのパスもあった。日本のフィジカル、技術に合わせたプレーの仕方だった。結果も残すことができ、20代の選手2人が非常に重要なゴールを取ったのも良かった。そういったところでも、私の見解を皆さんに見せられた。若い選手がそこまで信頼されていないのか、彼らが自分のサッカーを表現する場が日本ではあまりない。私は私のやり方で、そういった選手を鍛えながらうまくやれた。それで結果を残せなければネガティブな捉え方になるが、純粋に能力の部分を見て、ベテランよりも状態が良ければ、その時点で最も状態の良い選手を使うべきだと思う。もちろん全員がそれに同意するわけではないが、そういうふうに私は感じている。

 チャンピオンズリーグの話をしたいが、チャンピオンズリーグはW杯よりもレベルが高いかもしれない。試合によってはW杯よりも高いレベルの試合が見られる。私は監督として、選手として参加したことがあるし、常に見ている大会だ。私はパリSGの監督を経験した。今とはまた違ったチームでチャンピオンズリーグに参加した。現在、パリSGはヨーロッパのビッグクラブの中でも最も大きなチームの一つ。パリSG対バイエルンは非常にレベルの高い試合だった。オールドチャンピオン対新たに出てきているチームという印象。この試合でのパリSGのポゼッションは37%、ポゼッションではバイエルンが大きく支配していた。シュートもバイエルンの方が多く、コーナーもそう。クロスは36対4だった。パリSGが上回った数字もある。それはデュエルの成功率だ。ここでパリSGがバイエルンを上回った。デュエルの成功率は地上戦、空中戦ともに重要なもの。そして結果はパリSGの決定率の高さもあり3-0だった。繰り返しになるが、ポゼッションのみではまったく意味がない。モダンサッカーではゲームプラン、ゲームコントロール、そういったものが重要。引いてブロックを作って深い位置で守るというのも一つ。パリSGはそれを利用した。ネイマールやカバーニらの個人プレーが、ボールを奪ったときに活かされる形だ。現代のサッカーではキーパーとストライカーの役割が非常に大きい。パリSGは偉業を成し遂げ、相手は効果的な守り方をしなかった。モダンサッカーでも非常に重要なポイントになることが分かる。

 日本のサッカーでもどのようにキーパーとストライカーを育てるのか。現在Jリーグでは7、8人の外国人キーパーがプレーしている。なぜそのような状況になったのか、皆さんもお分かりだと思う。日本サッカーではキーパーのところに力を入れ、ストライカーもしっかりトレーニングすることで、偉大なキーパー、偉大なストライカーが生まれると思う。私の意見をお伝えしたいと思い、このような話をした。伝わっているかどうか分からないので、今一度説明した。デュエルについても以前から言っているが、地上戦、空中戦で非常に重要なこと。昨夜のパリSGとバイエルンの試合の説明しながら、お伝えした。日本のサッカーは独自の道を進みながら、日本サッカー独自のアイデンティティーを築くべき。それは日本人選手の特長を元にしたもの。たとえばネイマールがいたら違うかもしれないという人がいるかもしれないが、彼は天才であって、別枠で捉えないといけない。将来的にそういう選手が生まれるかもしれないが、世界中どこに行っても能力のある選手はいる。ただ、それをベースにトレーニングしないといけない。皆さんにとって興味深い話だったかどうかは分からないが、本日の会見の前にお伝えしたいと思った。私にとっては非常に興味深いものであり、不確実な科学なので、もしかしたらもう一度対戦すればバイエルンが勝つかもしれない。ただ、私にとってはスコアが重要で、ここで試合が変わったりする。最終的にサッカーでは結果のみが唯一の真実だ」

「W杯まで9か月の準備期間がある。これからはまったく別世界に足を踏み入れることになる。W杯出場を決めたことでみなさん喜んでいるが、最も厳しいところはこれから始まる。私はチームに大きな意欲を持って挑んでもらいたいと思っている。ロシアの美しい街並みを見に行くだけでなく、しっかり結果を残さないといけない。成功をおさめるためには、我々は現時点からしっかりレベルを上げることを目指さないといけない。次の合宿のテーマの一つがチームを成長させることでもある。この道のりでは選手たちが最も重要な要素になる。選手たちのためのW杯でもあるが、W杯の3週間前に準備を始めては遅すぎる。この合宿から準備は始まる。それぞれのクラブでプラスアルファの努力をしてもらいたいと思っている。心配なのはケガ人が多いことだ。今回の合宿に向けて追跡していた選手の中にも3人、ケガ人がいた。柴崎岳、大島、そして最近好調だった齋藤。彼も候補の一人だった。彼らより前にケガをした選手たちもいる。ケガ人というのは大きな問題になることもある。

 そして海外でプレーしている選手たちには、不運なことにポジション争いで苦しんでいる選手が多い。まずクラブでのポジションを勝ち取る努力をしてもらいたい。何人かの選手たちとは話をした。それぞれのクラブで試合に出なければW杯メンバーは確約できない。ロシアで結果を残すために、選手一人ひとりがそれを念頭に努力しないといけない。以前にも言ったが、我々の第3段階に突入した。最も厳しく、最も難しい段階だが、最もエキサイティングでもある。世界最高と言われるチームと対戦するチャンスがある。そういうチームと対戦すれば自分たちの弱点も見える。より弱いチームと言われているところと対戦すれば、見えないところも見える。個人としても組織としてもフィジカル的、メンタル的、戦術的にしっかり準備していかないといけない。どのチームもリスペクトしながら、自分たちの力を信じて、結果を求めないといけない。例えばサウジアラビア戦、オーストラリア戦の2試合、試合終了間際に(山口)蛍が点を取ったイラク戦、アウェーでのUAE戦、そのような難しい試合でこのチームは資質を見せることができた。ただ同時に最終予選初戦の敗戦も忘れることはできない。フロント、スタッフ、選手、みなさんの表情を見ると、非常に温かく接していただいていると感じている。特に街中を歩いているときにそれを感じる。みなさんにとってはそこまで重要な点ではないかもしれないが、出かけたときに道ばたでサポーターの方に信頼されているということを感じる。それには感謝したい。

 これからリストの発表に移る。いくつかの変更点、新たな選手もいるが、それを説明したい。キーパー3人。川島、東口、中村。西川も最近調子がいい。昨夜、ACLの試合もあったが、決勝に進んでほしい。(川島)永嗣は内転筋に少し問題があったが、合宿に来る。来たところでまたチェックしたい。

 右のサイドバックは(酒井)宏樹、(酒井)高徳、左のサイドバックは長友、車屋。車屋は機会を与えるに値する内容を見せている。このチームでは左利きが少ない。そこで彼にもチャンスをつかんでもらいたいと思っている。私はこのように合宿で毎回新しい選手を見たいと思っているが、もちろん代表に値するレベルを見せなければリストに載ることはない。高徳にもクラブでポジションを勝ち取ってもらいたいが、直接、どのような現状なのか話を聞きたい。センターバックは(吉田)麻也、昌子、槙野、植田。槙野はブラジル人に対していいゲームができた。植田は先週末のガンバ戦で非常に良いパフォーマンスを見せた。

 守備的MFは(山口)蛍、井手口、そして遠藤。昨日の遠藤は右サイドだったが。今回、長谷部が入っていない。ケガの問題もあったので、そういったことも考慮した。試合後にいつも心配を抱えていたので、しっかり治してもらうために入っていない。守備的MFのところでフィジカル的なパワーをこの代表に付けてもらいたいと思っているので、今回は遠藤を入れた。成長し続けている井手口の姿もうれしい。将来性のある選手だと思う。攻撃的MFは3人。(香川)真司はゲームには出ているが、完全に自分のポジションをつかんでいるわけではない。彼とも話をしたい。小林祐希はゲームに出続けている選手で、点も取った。倉田はここ最近2試合でまたコンディションが上がってきているので、今回リストに入った。彼のプレースピードをアップさせる能力、仕掛ける能力は我々にとって面白いと思う。

 右と左のFWだ。(原口)元気は試合にあまりたくさん出ていない。しかし、代表では毎回いいパフォーマンスを見せてくれている。彼を励ます話をしたいということもあり呼んだ。彼は契約延長の問題で今、クラブであまりゲームに出ていない。浅野、久保、乾のほうが試合に出て、点も取ったりしている。しっかり彼らにもストライカーとして点を取ってもらいたい。今回は本田圭佑が入っていない。彼もケガをしていた選手。彼にはしっかりコンディションを取り戻してもらいたい。クラブでより長い時間、試合に出てもらいたい。コンディションを取り戻したら、またメンバーに入ってくるかどうかというところを考えたい。中央は大迫、杉本、武藤。杉本にも彼を表現する場を与えたい。武藤も試合に出るようになってきた。大迫、杉本とは特徴の違う選手だ。今回は岡崎がリストに入ってなく、杉本と武藤にチャンス、機会を与えたいと思った。

 2試合とも違ったメンバーで戦うことになると思う。それぞれの選手にチャンスをつかんでもらいチア。W杯に向けた準備が始まる。不運なことにそれぞれの選手に10回ずつ機会を与えることはできない。選手同士の競争をより激しいものにしてもらいたい。ロシアへのチケットを獲得できる選手は現時点ではだれ一人いない。それぞれがそれを勝ち取らないといけない」

―第3段階ということだが、具体的に何を指しているのか。本田は長く代表に入っていた選手だが、落選ということで捉えたほうがいいのか。

「この合宿ではあまり出ていなかった選手に機会を与えたい。例えば東口をゴールマウスに立たせることもあるかもしれない。何かが起こったとき、東口が今後プレーすることがあれば、それにも経験が必要になるので、そういう機会にしたい。ピッチに立たせることによって、プレッシャーの中でどういうプレーができるのか、メンタル的なことも分かる。車屋がリストに入った。私は左利きの左サイドバックを探していた。サイドバックというのは攻撃でも守備でも大きな役割を担う。車屋は攻撃も守備もできる選手だと見ている。ただ、どこまでのレベルでできるのかというを見たい。W杯での要求は非常に高い。今までよりもさらに高いものになる。自分のクラブでいいパフォーマンスを見せなければ、W杯に行けないかもしれないということを選手たちには理解してもらいたい。ロシアへ確実に行けるという選手はだれ一人いない。45人、50人の代表候補選手の競争を促したい。今回、キリンチャレンジ杯があり、今後も親善試合があるが、より強いチームと当たったときに自分たちの立ち位置が分かると思う。フィジカル、戦術、メンタル、あらゆる面でこのチームの成長を要求する。選手たちは9か月間、その努力をし続けないといけない。

 本田についての質問だが、彼は移籍した。そしてケガをしていた。現時点でのコンディションでは代表ではプレーできないと思う。彼にはしっかりトレーニングしてもらいたいが、彼だけでない。どの選手もしっかりトレーニングして、クラブでポジションを勝ち取ってもらわないといけない。クラブと代表で要求される役割が違うこともある。全員にとって、高いパフォーマンスがロシアに行く条件になる。違った考え方で準備している選手がいれば、それが間違いだったことがのちに分かるだろう。W杯に向けて最終的に23人のリストをつくることになるが、選手を選ぶときにあらゆる基準を使っていく。まだまだ先のことなので、あまりそういった話はできないが。今度対戦するニュージーランドは(W杯予選の)プレーオフが残っているチーム。ラグビーのチームのようなスピリットを持った、戦うチームだ。オーストラリアと比較してもニュージーランドのほうがアグレッシブかもしれない。W杯に向けた準備が始まっているという姿を選手たちにはこのニュージーランドに対して見せてもらいたい」

―今後、9か月間でW杯に向けてどう強化していきたいか。

「チームの強化にはまずいい選手がいるということが大事になる。国内でプレーしているのか、海外でプレーしているのか。今は50人前後を常に追跡している。主役である選手たち、彼らの存在が重要だ。私は来てからずっと言っているが、コンディションがよければプレーするということだ。20歳前後の井手口もそうであれば、34歳の今野が出た試合もある。私は話だけでなく、それを実行している。まず選手。選手一人ひとりがパフォーマンスを上げて自分を見せないといけない。12月になればE-1選手権がある。国内の選手にとって自分たちを見せる非常にいい機会だと思う。選手たちそれぞれが努力して、自分を見せることが代表の強化につながる。戦う姿勢と意欲を常に持っていてほしい。親善試合は軽い気持ちで受け取ったらいけないし、気を抜いたらいけない。W杯に向けての気持ち、意欲をつくり上げていく試合として使わないといけない。私が初めて日本で指導した合宿のことを覚えているが、そのときの選手のメンタル的な状況をよく覚えている。代表の引退を考えるところまでいってしまっていた選手もいたぐらいで、メンタル的な状態は良くなかった。W杯はしっかり準備して挑まないといけない。ロシアの大会が始まるまで待って、飛行機に乗って行くだけではダメだ。私は大きな意欲を持って行きたいし、ブラジルW杯で成し遂げたことをまず再現したい。それに対しては全員が同じ気持ちだと思う。言葉で言うのは簡単だが、それを実行しないといけない」

―今度の試合は日本がポゼッションしながら試合をする立場になると思うが。

「このような親善試合に挑むとき、まずゲームプランを組み立てるが、試合の途中でそれが変化する。今回はもしかしたら日本のほうがポゼッション率が高く、自分たちがボールを持つ可能性が高いと思っている。ある試合でハイプレッシャーをかけるゲームプランを組み立てて挑んでも、いったん引いてブロックをつくる形に変えるかもしれない。だからといって守備的になるわけではない。速攻なのかビルドアップなのか、それらすべてがゲームコントロール、マネジメントになる。それは選手たちがピッチの中で感じながら実行しないといけない。経験あるチームはゲームの状況を見ながらコントロールするものだ。そういったところの発展が大事だ。そのためにはコミュニケーションが必要。ゲーム中に声を聞いたことがない選手もいたりする。朝、『おはようございます』と言ったきり、声を聞かない選手もいる。そういう選手たちも少なくとも試合中は声を出してもらいたい。今となっては選手たちのことをよく把握できるようになっているが、選手にはフィジカル、メンタル、ク技術、いろんな面があるが、それぞれに成長してもらって、チームという組織のためにそれを生かすということをやってもらいたい。修正点がまだまだたくさんあるので、これから伸びる余地はある。ポゼッションが高いほうのチームが勝つというのは正常であると私も思うが、ポゼッションが高いから勝つとは受け取っていない。モダンのサッカーではそれとは違った側面もある。ポゼッションが高ければ勝てるという罠に陥ってほしくない。A代表のコーチングスタッフ、アンダーカテゴリーの監督やコーチングスタッフにも、しっかりこのメッセージを伝えたい。多くの指導者がポゼッションに対して強迫観念に近い気持ちを持っている。ポゼッションがすべてではない。それだけが真実ではないと理解してほしくて、私は私の意見を伝えている」

(取材・文 西山紘平)