「味覚障害」はストレスも引き金に パワハラきっかけで味が感じられなく... 

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【チョイス@病気になったとき】(Eテレ)2017年9月16日放送
「知っておきたい 味覚障害」

生きていく上で欠かせない「食事」は、できるだけ美味しく、楽しく摂(と)りたいものだ。しかし「味がわからない」「嫌な味がする」などで何も食べる気が起きなくなってしまう「味覚障害」の人が近年増えている。

番組では、実際に味覚障害になった人のケースから、原因の解説と予防法、治療方法を紹介した。

高血圧や糖尿病も引き起こす

舌の表面には小さな突起が無数にあり、一つ一つの中に「味蕾(みらい)」という味を感じるセンサーがある。味蕾が味を感知すると脳に情報が伝わって味を認識するが、情報伝達がうまくいかなくなった状態が「味覚障害」だ。

「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の「基本五味」のどれか一つでもちゃんと認識できないと味覚障害となる。

症状は、「味が薄く感じる、味がしない」のほか、「口の中に何もないのに味がする」「本来の味と違う」「特定の味だけわからない」「嫌な味がする」「味がきつく感じる」などがある。

味がわからなくなるので砂糖や塩の量を増やしてしまい、高血圧や糖尿病など、二次的な健康被害を生むおそれもある。

薬の副作用で亜鉛が不足し...

海原さん(仮名、83)は2年半前、大好きな和菓子を食べている時、何も味がしないと気付いた。

その後の食事で摂った、イワシの塩焼きと巻きずしも全く味がしなかった。「何の味もないものを食べられない」と食べ物を受け付けなくなり、次第に食べる量が減って、1か月で体重が7キロも減少した。何も食べず、水だけ飲んでいる日もあったという。

夜中にふと目が覚め、塩や砂糖などの調味料をなめてみたら、全て味がしなかったことで病気と自覚した。耳鼻咽喉科を受診し、味覚障害と診断された。

原因は「亜鉛不足」だった。

亜鉛は味蕾の新陳代謝を助ける役割があるので、不足すると古い味蕾ばかりになって機能しなくなり、味覚障害が起きる。

海原さんの亜鉛不足の理由は、高血圧のために処方されていた降圧薬だった。

降圧薬をはじめ、抗ウイルス薬、抗精神病薬、抗がん薬、抗アレルギー薬、糖尿病薬など、100〜200種類の薬に、亜鉛をうまく吸収できず便と一緒に排泄してしまう副作用がある。

海原さんは「亜鉛製剤」という薬を処方されたほか、毎日自分で血圧を測るよう勧められた。薬を飲まなくても血圧の値が安定していたとわかり、降圧薬をやめたところ、2か月ほどで徐々に味覚が回復。半年後にはこれまで通りに食事が楽しめるようになった。

「あっという間に7キロ太りました。元に戻った」と笑う海原さんだった。

海原さんは降圧薬を飲む必要がなくなったが、味覚障害になってもほかの病気が治っていない場合、原因となった薬の服用を勝手にやめるのは危険だ。治療法は医師とよく相談しよう。

亜鉛を多く含む食べ物は、貝のカキ、牛肉、豚レバー、チーズ、卵黄、ゴマなど。欠乏を防ぐため、普段の食生活に意識して取り入れよう。ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ると、効率的に吸収される

ラーメンが「アツアツの噛み切れるひも」みたい

斉藤さん(仮名、42)は、2016年1月に突然味を感じなくなった。

スナック菓子を食べた時、全然塩気がないと感じた。チョコレートを食べると固いバターをかんでいる感覚になり、ラーメンはアツアツの噛み切れるひもにしか思えない。

何も美味しく感じられないが、「食べ終わる頃には味覚が戻っているかも」と、満腹になっても食べ続けた。

味覚専門外来を受診したところ、「ストレス」が原因として浮かび上がった。

味覚障害になったのは、新しい職場で働きはじめて1か月後だった。「パワハラ」「モラハラ」を毎日受け、「自分が仕事ができないからだめなんだ」と自責の念を抱えていたという。

亜鉛製剤を処方され、4か月服用したが効果はみられず。思い切って仕事を辞めると、1か月も経たないうちに突然味覚が戻った。

ストレスが原因の味覚障害は亜鉛を摂っても改善しないので、斉藤さん同様ストレスの原因を取り除くのがベストだ。ただ、なかなか簡単には排除できないストレスも多いだろう。その場合は、抗不安薬などの薬、心理カウンセリングで治療する。