<国際社会が非難するミャンマーの民族浄化を、人権重視の日本が「看過」するのはなぜか>

民族浄化の典型例だ――。9月11日、国連人権高等弁務官のゼイド・ラアド・アル・フセインは、ミャンマー(ビルマ)で続くイスラム系少数民族ロヒンギャに対する弾圧を、強い口調で非難した。

8月下旬頃から新たに始まったとみられるロヒンギャに対する虐殺行為は、過去最大規模とも目されている。国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が衛星写真で確認したところ、これまでにロヒンギャが住む62の村落が焼き打ちに遭い、40万人以上が隣国バングラデシュへの避難を余儀なくされている。

ミャンマー政府が「自国民でない」とするロヒンギャを強制排除することが目的で、責任は「ミャンマー国軍にある」と、HRWは結論付けている。

国際社会はこれまでもロヒンギャ弾圧を繰り返し非難してきた。ただ、国連の人権問題トップによる「民族浄化」発言はかつてなく強い表現だ。これに触発されたかのように米英、フランスなど主要国の首脳や閣僚らからも非難の声が相次いだ。遅ればせながら日本も9月21日、堀井巌外務政務官がミャンマーの首都ネピドーでチョウティンスエ国家顧問府相と会談し「住民殺害」に懸念を表明した。

さすがは「人間の安全保障」を前面に掲げる安倍外交。人権弾圧には黙っていられないという姿勢を示した――と、胸を張ることはできないだろう。ロヒンギャ弾圧に対して、日本の外務省はこれまで対応が後手に回ってきたばかりか、被害者のロヒンギャよりも加害者であるミャンマー当局に寄り添うかのごとく振る舞ってきたからだ。

「外務省のポリシーは、ミャンマー軍と同じだ」。20年前、当時のミャンマー軍政やロヒンギャ弾圧を批判したことで当局に追われ日本へ亡命し、現在は埼玉県に住むロヒンギャのゾーミントゥット(45)は、外務省の対応を辛辣に批判する。

「加害者」を擁護する?

外務省の姿勢を表すものの1つは、既にロヒンギャ弾圧への世界の注目が高まっていた8月29日に外務省が発表した外務報道官談話だ。そこにはこう書かれている。「ミャンマー・ラカイン州北部各地において発生している治安部隊等に対する襲撃行為は絶対に許されるものではなく、強く非難するとともに、犠牲者のご遺族に対し、心からの哀悼の意を表します」

この談話を読む限り、外務省にとって主たる犠牲者はロヒンギャではなく、ミャンマーの治安部隊ということになる。これは、かねてミャンマー政府が繰り返してきた主張と一致する。だが、バングラデシュに逃れ着いたロヒンギャが国外にいる親族らに語ったところによれば、治安部隊こそ「襲撃行為」を行っている当事者だ。

前川祐補(本誌編集部)