ヤバイTシャツ屋さん、若者に人気の理由は? オリコン2位の新作から考察

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 2016年11月、<ユニバーサル シグマ>よりメジャーデビューを果たした3人組ロックバンド・ヤバイTシャツ屋さん。シンプルかつキャッチーなワードで“日常あるある”を綴った歌詞、意表をつくMVの制作をはじめとしたSNSを効果的に利用した宣伝、そして爽快なメロコアサウンド。耳の早い10代〜20代を中心にその評判は口コミ的に広がり、先日オリコンが発表した「2017年上半期にブレイクしたと思う新人バンド」調査では1位を獲得。この夏も『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』『SWEET LOVE SHOWER 2017』など多数のフェスに出演し、全国各地を盛り上げ、入場規制を連発した。

 充実の夏を経て、このたびリリースされたのが5thシングル『パイナップルせんぱい』だ。リード曲「ハッピーウェディング前ソング」は<キッス!キッス!キッス!>からの<入籍!入籍!入籍!>と勢い任せに結婚を勧める新感覚のウェディングソング。当事者やその親、友人の心中を描くことによって共感と感動を呼び起こしていくウェディングソングの名曲はいつの時代にも生まれてきたが、この曲は“いい感じのカップルを無責任にひやかす第三者”目線で描かれているから斬新だ。2曲目「眠いオブザイヤー受賞」はラップを取り入れられていることが特徴的。“眠い”と“寝たい”しか歌っていないにもかかわらず、サウンドはR&B調でオシャレである。ロッテのキシリトールガムのタイアップソングとしての書き下ろした「とりあえず噛む」は、モッシュが巻き起こる光景が目に浮かぶようなパンクチューンで、Bメロにある“ロッテ”を用いた押韻も巧み。このような曲からはタイアップ案件への対応力の高さを垣間見ることもできる。

 そんな本作は10月2日付のオリコン週間CDランキングで2位を獲得。このことからも、ヤバTはフェスのその場所だけで求められているわけではなく、ライブをきっかけに着実にファンを獲得することに成功しているバンドだと言うことができるだろう。一過性で終わらない人気の鍵は、“誰も歌っていないこと”のみに照準を定め、“真面目にふざける”ことを徹底しているバンドのスタンスにある。岡崎体育による表題曲のリミックスを含む全4曲は、メロディ良し、アレンジ良し、3人の演奏も良しとサウンド面のクオリティが高い一方で、歌詞は相変わらず、わざわざ歌にして伝える必要があるのか? と疑問に思うような内容ばかり。本作ではそのギャップが最高潮に極まっている印象だ。

 綺麗事を歌わないこのバンドのスタンスは非日常を求めて多くの人がやってくるフェスと親和性が高く、頭を空っぽにしてライブを楽しんだ経験は、観客一人ひとりの手によってシェアされていく。その一方で、コール&レスポンスのワードが特殊だという点を除いては意外と硬派なライブをしているバンドでもあるため、口コミきっかけに集まってきた人の“楽しさ”を担保しつつ、その第一印象をひっくり返すことだって可能であるわけだ。

 話題のニューカマーとしてシーンをざわつかせた2016年に対し、大きなステージでも“鉄板の盛り上がり”を生み出す頼もしい存在として各地のフェスに呼ばれていた2017年のヤバT。これからもまだまだ、その人気を同心円状に拡大させていくことだろう。(文=蜂須賀ちなみ)