バングラデシュ南東部コックスバザール県クトゥパロンにあるミャンマーから避難して来たヒンズー教徒の居住区で、メディアの主催に応じるリカ・ダールさん(左、2017年9月26日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ミャンマー西部のヒンズー教徒の村に住むリカ・ダール(Rika Dhar)さん(25)は、夫と2人のきょうだい、その他大勢の近隣住民が村に突然現れた覆面姿の男たちに無理やり丘陵地帯まで連れて行かれ、なたでめった切りにされて殺害される様子を目撃した。

 現在、バングラデシュ国内のヒンズー教徒収容キャンプに2人の子どもと身を寄せているダールさんは、「殺した後に男たちは大きな穴を3つ掘り、その中に遺体を投げ込みました。殺された人たちは後ろ手に縛られ、目隠しをされていました」と語った。

 複数の目撃者がAFPに語ったところによると、虐殺が起きたのは、ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州北部にあるヒンズー教徒が住む小さな村の外れだ。ミャンマー当局は同地で多数の遺体が埋められている集団墓地を発見し、24日以降、掘り出された遺体の数は45人に上っている。

 ミャンマー軍は、これらの凄惨(せいさん)な遺体は、イスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の武装集団が8月25日に行った虐殺の証拠だと主張。同日には、同武装集団が駐在所などの警察施設を計画的に襲撃し、それをきっかけに異教徒間の虐殺が一気に拡大したとされている。

 一方、事件から約1か月が経過した27日、ロヒンギャの武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」はツイッター(Twitter)で初の公式声明を発表し、同組織がヒンズー教徒の村民を大量虐殺したとするミャンマー軍の主張を真っ向から否定。同組織のメンバーらが「殺人、性的暴力、強制的な人員補充を行った」とされていることについて「全面的に否定」するとした上で、ミャンマー軍に対して「(ロヒンギャをめぐる現在の状況は)自業自得」だと非難するのはやめてほしいと訴えた。

 ARSAが声明を発表した同日、ミャンマー軍は多数の女性や子どもを含むヒンズー教徒が埋められていた集団墓地が見つかったラカイン州北部に報道関係者を空輸するため、紛争地帯の厳重な包囲網を解除した。現場では今週初めから掘り起こし作業が行われており、兵士らによって掘り出されたヒンズー教徒の遺体は報道陣に公開された。

■首謀者は誰か、錯綜する情報

 軍が同地域に報道関係者を案内して取材を行わせたのは今回が初めて。現地ではこれまで厳しいメディア規制が敷かれ、襲撃の首謀者をめぐって錯綜(さくそう)する情報を検証することが困難だった。

 当局による遺体捜索に協力したヒンズー教指導者のニ・マウル(Ni Maul)さんは報道陣に対し、ヒンズー教徒の女性8人の証言を手掛かりに埋葬場所を発見したことを明らかにした。この女性たちは、男たちにイスラム教への改宗を迫られて同意した後、殺害を免れてバングラデシュに移送されたという。

 27日には、行方が分からなくなっているヒンズー教徒の村民約50人の捜索活動も継続されたが、バングラデシュやミャンマーの他の地域に逃れたヒンズー教徒らは、家族との連絡も途絶えた中で最悪の事態を恐れている。

 長年、一触即発の状態が続いていたラカイン州で発生した今回の襲撃は、さまざまな民族間で積もっていた憎悪をさらにかき立てる結果となった。

 虐殺から生き延びた女性たちは、覆面の襲撃者らはイスラム教徒の武装集団だったとは特定しなかったものの、自分たちが標的になったのはヒンズー教徒だからだと話した。

 一方、バングラデシュ南東部コックスバザール(Cox's Bazar)県クトゥパロン(Kutupalong)の難民キャンプ近くにあるテントでは、ロヒンギャの武装集団の一員とされる男性が支持者らの前で、襲撃を行ったのは暴徒化した仏教徒であり、彼らは設立されて間もないイスラム教の組織に罪をなすり付けていると非難していた。

 バングラデシュ当局に身元を知られないよう匿名で取材に応じたこの男性は、「仏教徒は私たちのイメージを傷つけようとしている」「私たちは正当な理由もなく、モグ(ラカイン州の仏教徒)や非イスラム教徒に危害を加えたりはしない。彼らは私たちを悪者と見せ掛けるためにうそをついている」と語った。
【翻訳編集】AFPBB News