By David Blackwell.

世界を代表する銃社会とされるアメリカでは、銃の所持は権利そのものであり、自衛のために多くの州で所持が認められています。その根底にある考え方が「銃があることで平和が守られる」というものなのですが、実際の統計からはそのロジックが成り立たないことが明らかになってきているようです。

More Guns Do Not Stop More Crimes, Evidence Shows - Scientific American

https://www.scientificamerican.com/article/more-guns-do-not-stop-more-crimes-evidence-shows/

アメリカでは、2015年の1年間で3万6000人が銃によって命を落としています。この数値は、年間の交通事故による死者数とほぼ同じであり、自衛のための正当防衛のケースも含まれることを考えても、いかに銃が多くの人の命を奪っているのかを感じさせます。

移民国家であるアメリカで銃の所持が認められるのは、なかば「必然」といえます。アメリカで銃の所持が認められる根拠とされているのが、権利章典の修正第二条の規定にある「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」という一文です。かつて、軍隊による保護が十分ではないとされてきた時代には自衛手段として銃などの武器を所持することが権利として認められてきたという経緯があるためといわれていますが、18世紀に定められたこの一文が21世紀の社会でも存在感を示しているというのは実に複雑な印象を与えます。

そんなアメリカでも、国民の間では銃の所持を認めることについて賛成と反対の声が真っ二つに分かれているとのこと。賛成派の最先端として世論を先導しているのが「全米ライフル協会」(NRA)です。NRAは強力な資金力を持ち、これをもとに政治家に対するロビー活動を行うことで、銃社会が未来にわたって続けられる環境作りを綿々と続けてきました。



By ElCapitanBSC

NRAに代表される銃所持容認派が主張するロジックが、「悪い奴がいても相手が銃を持っているとわかったら悪事をはたらくことを止める」というもの。つまり、いくら悪いことをたくらんでいる人物がいても、相手が銃を持っていて反撃を受けるリスクがあると思いとどまるだろうという理論なのですが、いくつかの統計データからはこの理論が成り立っていないことが浮き彫りになっているとのこと。FBIとアメリカ疾病予防管理センターのデータをもとに、ボストン小児病院とハーバード大学が分析した2015年の論文によると、銃が広まっている地域とそうでない地域の間では、火器を使った暴力行為が発生する割合が最大で6.8倍もの開きがあることが明らかにされています。つまり、銃が広まっている場所ほど、銃による攻撃が多く発生する傾向が示されているというわけです。

また、15の異なる研究を組み合わせた分析によると、自宅に銃があっていつでも手に取れる状態にある人は、そうでない人に比べておよそ2倍も殺人事件に巻き込まれる確率が高いという結果も判明しているとのこと。これは、「誰かに殺される」という他殺のケースだけでなく、自ら銃を使って自殺してしまうというケースも含まれているとのこと。必ずしも「銃があるから自殺が増える」ということはできませんが、その手段として銃に手が届くという状況が存在していることは確かです。



「銃の所持は自衛のため」という目的が掲げられることも多いのですが、実際に自衛のために使われたケースは多くないことも判明しています。よく語られる「家の中に銃があると思うと強盗も押し入ろうとは思わなくなる」という考え方も、銃と犯罪の実態を示していないともいわれています。



銃の所持率が高いとされるジョージア州の住人に聞き取り調査を行ったところ、銃の存在によって暴力行為が増加するとは考えていないという声が多かったとのこと。むしろ、暴力行為が先にあり、その横に銃があるという状況が、事態を悪化させているとも。調査を行って記事を作成したScientific AmericanのMelinda Wenner Moyer氏は、銃を取り巻く環境や、統計データは多岐にわたるために単純な答えを見つけることは難しいものの、「銃は犯罪や暴力を減らしてはおらず、むしろ悪化させている」という答えにたどり着かざるを得ないという思いを強くしたとのこと。

NRAが掲げるスローガンに「銃が人を殺すのではない。人が人を殺すのだ」(Guns don't kill people, people kill people)というものがあります。しかしこのフレーズをもじって「銃が人を殺すのではない。人が銃で人を殺すのだ」(Guns don't kill people, people kill people with guns)とされることも。そんなところからも、アメリカの社会において銃の存在が重くのしかかっていることが感じられます。

なお、2008年にはアメリカで使われる銃の使用用途の1位が、なんと「自殺」だったことも明らかになっています。

アメリカでの銃の用途、1位はダントツで「自殺」 - GIGAZINE