血圧が日によって大きく異なる人は要注意(depositphotos.com)

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 高血圧気味の方ならば「血圧日内変動」というコトバもよくご存じだろう。読んで字の如く、血圧はさまざまな要因から1日の中で上がったり下がったりしているものだ。

 一方、上の数値(収縮期血圧)から下の数値(拡張期血圧)を差し引いた値が「脈圧」。こちらは動脈硬化が進むにつれて上昇するので、「脈圧が高い」=「上下差が大きい人」は、血管系の老化が危惧され、心筋梗塞や脳卒中、狭心症になりやすいと示唆されている。

 さらに脈圧が高い人の場合、アルツハイマー病を発症する可能性も高いという新たな知見が一昨年、米カリフォルニア大学の研究陣によって報告されたのも記憶に新しい。

 そこで素朴な疑問がひとつ思い浮かぶ。1日の中ではなく、日によって血圧値が著しく変動する人の場合は、なにか杞憂すべき事項はないのだろうか......というリスク面である。

「血圧日内変動」が大きい人は認知症の発症リスクが高い

 ところがネット検索で「血圧+変動」と入れてみると、「血圧の変動が激しい病気」「血圧変動大きい要因」、「血圧」「 変動」「幅」などの関連キーワードが表示されるが、その内容は大半が冒頭の「血圧日内変動」の話題ばかり。

 つまり「日によっての変動と、その疾病リスク」に関する記事には、これまで上手くたどり着けない状況が続いていた。が、『Circulation』(8月8日号)にずばり、その疑問の回答となるような研究論文が掲載されたので紹介しておこう。

 結論から書くと、血圧値が測定日によって大きく異なるという人の場合、認知症の発症リスクが高い可能性が読み取れた――。

 しかも、そのリスク度は血圧値が安定している人と比べ、2倍を超えるという。これは、九州大学大学院医学研究院精神病態医学の小原知之氏らが実施した研究によって認められた知見だ。

 研究に際しては、福岡県久山町の疫学調査(=久山町研究)に登録されている地域住民の中から「60歳以上」で「認知症のない人(男女)」計1674名が対象に選ばれた。

 彼らへの追跡調査は5年間(2007〜2012年)に及んだが、対象者の中には「高血圧患者」も含まれており、その凡そ40%層が「降圧剤」を使用していた。

 そして被験者たちは、各自の血圧を、研究開始時に28日間(中央値)測定した。その期間中は毎朝3回、家庭用血圧計を用いて計ることが実施された。

 研究陣は、毎朝3回の平均値を「(その人の)その日の血圧値」として「変動係数」を求めた。そして上のSBP値(収縮期血圧)と下のDBP値(拡張期血圧)の変動幅、その大きさ(=高さ)と「認知症リスク」の関係について分析を続けた。

<血管健康>も自己認識から

 そんな追跡調査の結果、5年間の実施期間中に194名の男女が認知症を発症し、うち47名が「血管性認知症」を患い、134名が「アルツハイマー病」に見舞われていた。

 さらに、各自の日ごとのSBP値(収縮期血圧)を「最も大きい」層から「最も小さい」層まで4段階に区分けしたところ、両極比では全体的な認知症リスクにおいて下記のような倍率が読み取れた。

 「最も大きい」:「最も小さい」=’知症リスクが2.27倍、血管性認知症リスクが2.79倍、アルツハイマー病リスクが2.22倍。いずれにおいても2倍強を示した......。

 最も注目すべきは、日ごとの血圧値の変動幅が大きい人の場合、高血圧患者のみに限らず「正常血圧の人」でも、認知症のリスク上昇が確認された点である。

 ただし、今回はあくまでも観察研究の域にあるため、小原氏らも「血圧の変動幅が大きい=それが原因で認知症を発症することが示されたわけではない」と注釈を添えている。

 「各人の血圧値は、測定時の体調や使用薬剤による影響を受けやすいもの。あるいは降圧薬の飲み忘れなどで変動が生じる場合もあるし、(家庭内測定による)研究には複数の限界がある点も否めない」

 これは、小原氏らの報告を論評した米国人のCostantino Ladecola氏(ウェイル・コーネル医科大学)の見解だ。

 それでも「血圧の変動幅と認知症リスクとの関連性を明確に示唆した」点を評価している同氏は、「その変動幅を小さくする対策を講じれば、脳の血管の健康を維持できるかもしれない」と成果の意義も述べている。

 そうした対策を講じるタイミングについても「高齢期を迎えてからではなく、認知機能の低下が始まる中年期から手を打つのが望ましいだろう」としている。

 対策研究の今後の進化が待たれるが、まずは貴方自身の血圧知識を深めることが何よりも肝要だろう。家庭用血圧測定器の入手検討もリスク防衛の一歩である。
(文=編集部)