ガソリンスタンド(朝鮮中央テレビ)

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国際社会の経済制裁が、じわじわと北朝鮮を締め上げている。

中国の税関では北朝鮮へのガソリンの密輸に対して、これまで以上に取り締まりが厳しく行われている。国連安全保障理事会が11日に採択した、原油、石油製品の輸出量をカットする内容を含む制裁決議2375号に沿った措置と思われる。

庶民は不満

デイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、吉林省延辺朝鮮族自治州の琿春市郊外にある圈河税関では、担当者が北朝鮮に向かうトラックの底から運転席の内部に至るまで細かくチェックするなどの厳しい検査を行っている。

以前は、ドラム缶に入れたガソリンを運転席に隠して持ち込む行為が行われていたが、今ではそれも不可能になった。ガス欠などの際に使うための少量のガソリンを積んでいるだけで、「これは何のために積んでいるのか」と問い詰められる。

このようにガソリンの供給が細ったことで、平壌市内の通りからはオートバイが姿を消し、タクシーも半分以上が運行できなくなったとデイリーNK内部情報筋が伝えてきている。

オートバイもタクシーも、人や物を運んで利益を得ているが、運行できなくなることは収入が途絶えることを意味する。また、洗車場や中古車販売業などの関連業種もダメージを避けられないだろう。

(参考記事:「美女洗車サービス」も登場した北朝鮮ニュービジネス

中朝国境の西の端、遼寧省の丹東でも状況は変わらない。

税関における検査はもちろんのこと、船舶やトラックに対する取り締まりも強化されている。新鴨緑江大橋そばの密輸ルートの入り口には、土を積み上げてトラックが入れないようにしていると現地のデイリーNK情報筋が伝えてきた。

中国当局によるこのような厳しい密輸取り締まりのみならず、複合的な要因によるものと思われるが、平壌ではガソリン価格の上昇が続いている。

平壌駐在の西側の外交官は、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、今月20日までは1.6ユーロ(約214円)だったガソリン1キロ(1.34リットル)の価格が、21日から突然2.6ユーロ(約348円)に値上がりしたと伝えている。1月1日に0.75ユーロ(約100円)だったことを考えると、約3.4倍になった計算だ。

この外交官は少し前、ガソリン価格はさほど上がっていないと伝えていた。

デイリーNKの内部情報筋は、今月7日の時点でのガソリン価格が、2万3000北朝鮮ウォン、つまり2.4ユーロ(約320円)まで上がったと伝えていたが、この外交官は14日の時点でガソリン価格に変動は見られないとしていた。

このような認識のタイムラグについて外交官は、北朝鮮国民は様々なルートでガソリンを購入するが、外交官は決められたガソリンスタンドでしか購入できないことが原因かもしれないとしている。

いずれにしても、経済制裁の直撃を受ける北朝鮮の庶民は、体制に対して不満を募らせていく可能性が高い。

しかしそれだけでは、北朝鮮社会に大きな変化のうねりは起きないだろう。民主主義がまったく存在しない北朝鮮で、庶民が権力に異を唱えることは「死」を意味するからだ。

つまりは北朝鮮を民主化に導く努力なくして、経済制裁が決定的な効果を生むことはないのである。