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不法残留(オーバーステイ)で、2016年2月に強制退去処分になっていたインドネシア国籍の女性が、国に処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁はこのほど、女性が日本人と結婚していたことを理由に処分を取り消した。

8月26日の共同通信の報道によると、女性は2003年に入国。在留期限を過ぎた2014年10月、交際していた男性と結婚した。その後、婚姻を理由に「在留特別許可」を求めたが認められず、退去を通知されていた。

どうして結婚していれば、不法残留が帳消しになるのか。在留特別許可の仕組みについて、鈴木雅子弁護士(いずみ橋法律事務所)に聞いた。

●国際人権条約などで家族関係は尊重される

ーー在留特別許可とはどういうもの?

在留特別許可とは、不法入国や不法残留などの退去強制事由に該当する場合でも、「法務大臣が在留を特別に許可すべき事由があると認めるときは」在留を認めるという制度です。もっとも、規則により地方入管局長にその権限が委任されています。

在留特別許可を与えられるもっとも典型的な例が、日本人と結婚した場合です。ただし、婚姻関係が真摯なものであり、安定的、継続的なものであると認められなければ、在留特別許可は認められません。偽装結婚はもちろんですが、まだ婚姻して日が浅いなどの理由で、安定性、継続性に欠けるとして認められないこともあります。

ーー日本人との結婚のほかに認められるのは?

法務省は、在留特別許可に係る透明性を高めるため、「在留特別許可にかかるガイドライン」などを公表しています。それによると、日本人との結婚のほか、難病や子どもが相当長期間日本に在住して日本の教育を受けていること、長期滞在による日本への定着が認められる場合などは、積極要素とされています。

ただし、こうした積極要素にあてはまり、特に消極要素が見当たらない場合も必ず在留特別許可がでるとは限りません。国は、あくまでも在留特別許可は「恩恵」に過ぎないとして、裁判ではガイドラインに反しても問題はないと主張し、裁判例も多くはこの主張を追認しているのが現状です。先日も、日本で生まれ育った15歳の子どもとその母親の在留特別許可が認められず、入管の判断を支持した判決が出ています(ウティナン君事件)。

このように、日本では、どのような場合に在留特別許可が認められるかが実務の運用に任され、また、行政の広範な裁量が尊重される傾向にあります。

ーーそもそも、不法残留しているのに、なぜ滞在を認めなくてはならない?

追放は、その外国人だけでなく、場合によっては周囲の日本人や子どもを含む家族が築いてきた家族生活や社会生活そのものを破壊することを意味します。不法残留は確かに法律違反ですが、それによってあまりに失う利益が大きい場合は、在留を認めることが相当であると考えられます。日本も批准している国際人権条約等では家族関係の尊重が規定されており、実際にこうした規定に反する追放が違法であるとの決定が、国際機関や各国の裁判所で出されています。

特に最近、在留資格のない外国人による治安を悪化させるような言動を見ることもありますが、バブル期には30万人近い不法滞在者がおり、建設業などを支えてきました。私たちが普段使っている施設や建物もそうした方たちの力があって建てられたものかもしれません。

取り締まりの強化により、不法滞在者は6万人台に減っていますが、その中には日本社会で長年生活し、生活の基盤を築いている人も少なくありません。扇動的な言動に惑わされず、そのような人たちを追い出すことが法律上、人道上、また日本の人口が減っている中、政策上も妥当なのか、検討することが必要だと思います。

(弁護士ドットコムニュース)