筆者は今まで1回だけ犬を飼ったことがあります。
ヨークシャーテリアのオス犬だったのですが、年老いても毎日盛っていた精力旺盛な犬で、犬って生殖しか考えていないのかと感じた事を記憶しています。
そんな意識が芽生えてしまったため、筆者はそれ以降、犬は飼っていません。犬の映画もあまり好んで見ていません。人が飼っている犬は可愛いと思いますが、自分で飼うのはちょっと……と思っております。

そんな筆者ですが、今回敢えて『僕のワンダフルライフ』という犬映画にチャレンジしてきました。犬は「性欲」しかないという筆者の冷めた気持ちを、この映画は変えてくれたのか。今回は、犬がそんなに好きじゃない人の気持ちを代弁しつつ、映画の魅力を紹介していきましょう。

ラッセ・ハルストレム監督の犬映画第3弾

本作は、最愛の飼い主イーサンに会うために、50年に3回も生まれ変わる犬ベイリーの物語。
これだけで、犬好きの方々は涙がとまらないでしょう。筆者は「犬も輪廻転生するのか、なるほど〜へぇ〜」というフラットな気持ちをキープ。

『僕のワンダフルライフ』 監督:ラッセ・ハルストレム、出演:ジョシュ・ギャッド(ベイリーの声)、デニス・クエイド、ペギー・リプトンほか。 9月29日全国ロードショー (C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

ちなみに、ラッセ・ハルストレムは、スウェーデン生まれの監督で、過去に『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』、忠犬ハチ公のハリウッド版『HACHI  約束の犬』などを手がけてきました。本作は監督の3作目の犬映画となりました。

「この映画を撮るにあたって、ルールとして決めたのは犬はカメラ目線で喋らないということ。実際に犬が生まれ変わるかどうかはわからないけれど、理屈で説明のつかない魔法のような出来事に対してオープンでいよう」と語ったそうです。

確かに、過去の犬映画の多くが、口元が人と同じような動きをするようにCG処理をしてますよね。カメラ目線でパクパク喋る犬って、ちょっと不自然だなと思っていました。ラッセ・ハルストレムは、そこを改善してくれたわけです。

さらに犬は輪廻転生しないかもしれないけれど、素敵な出来事として捉えようよ、という広い心。筆者も犬が好きだったら、ラッセ・ハルストレム監督のように器の大きい人間になれるのでしょうか。

では、さっそく本作の魅力について迫っていきましょう。

悪意がなさすぎ!犬の素直さにびびる

本作は犬の生涯「犬生」をテーマにした映画です。人生ならぬ、犬生。主人公はゴールデン・レトリバーのベイリー。子犬のベイリーは暑いクルマのなかに放置されたまま、脱水症状を起こします。
「あー、水が欲しいなぁ……。僕の犬生って何だったんだろう」と意識が朦朧とした時、通りかかった少年イーサンがベイリーを発見。そのまま家に連れ帰り、パパを説得して飼うことになります。

ベイリーとイーサンの仲の良さはまるで兄弟のよう。 (C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

イーサンが「ベイリーベイリーベイリー!」と連呼することで、自分の名前を認知するベイリー。そんなベイリーは、すくすくと成長して腕白ぶりを発揮します。パパのスリッパを噛んでしまったり、パパの大切なコインを食べちゃったり……。主にパパが被害を被ってますね。
といった感じで、犬を飼ったことのある人には「あるある」なイタズラネタが満載です。

フットボールが大好きなベイリー。ボールを噛んだら離しません。(C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

よく愛犬家の人たちが「この子は何を考えているのかわかる」「この子は喋る」と言いますが、「本当なのそれ?」と思っていた筆者。

映画ではベイリーの気持ちを俳優のジョシュ・ギャッド(アナ雪のオラフの声を演じた人)がナレーションで代弁しているのですが、そのナレーションが、犬を飼ったことのある人じゃないと思いつかない内容なんですよ。

例えば、イーサンの家は、ネコも飼っているのですが、そのネコちゃんが死んでしまうんです。ママがネコを庭に葬ったところを見ていたベイリーは、急いでネコを掘り起こしてママのもとへ。「ほら、僕見つけたよ」と自慢したかったのに、ママは大騒ぎ。

人間的解釈だったら、死がいを掘り起こすなんて!と思いますが、犬的解釈からすれば、隠したものを見つけたよ、褒めて〜という気持ちなんですね〜。いや〜悪意がないですね〜。

と、こんな具合にベイリーは愛情をたっぷり注いでもらって成長していきます。

やっぱりツライ、犬とのお別れシーン

犬生は、人間よりも短いのはわかっています。でも、自分よりも先に犬が逝ってしまうのは寂しいモノ。本作は犬が生まれ変わるのですが、生まれ変わるには、命をなくすシーンも出てきます。

イーサンも大人になり、彼女ができます。ベイリーと2人はいつも一緒。でもお別れの時期もやってくるのです。(C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

イーサンは大人になり家を出るのですが、その後、ベイリーはすっかり元気をなくしてしまいます。
年齢的な問題もあり、年老いたベイリーは衰弱していきます。イーサンに会いたい、ただただそれだけを思い続けるベイリー。健気すぎて泣けます。

男前のイーサンとベイリー。(C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

うーん、やっぱり動物を飼うには別れを覚悟しないといけないんですよね。筆者が犬を飼わなくなったのは別れがツライというのも理由のひとつ。お別れのシーンがこの映画は3回もあるので、ちょっと心がしんどくなるのも事実です。

でもすぐ生まれ変わるので、しんどさは長続きしません。それが救いです。

というのもこの映画は、愛犬を亡くした辛さを乗り越えようとしていた恋人に向けて、アメリカのベストセラー作家W・ブルース・キャメロンが書いた『野良犬トビーの愛すべき転生』が原作なのです。だから生まれ変わっていくという救いがあるんですね。

めちゃくちゃポジティブな姿勢に感動

さてさて、ベイリーは、コーギーに生まれ変わって大学生の女の子に育てられます。ここではとっても大切に育てられて、最後まで幸せに暮らします。

コーギーとして生まれ変わったベイリー。 孤独な大学生のもとで、すくすくと育っていきます。(C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

その後は、メスのシェパードになって、警察犬として大活躍。ちょっと最後はかわいそうですが、ベイリーの正義感が素晴らしいので、周りなんて気にせず、ガンガン涙を流しながら見て下さい。

そして最後は、飼い主から放置されるかわいそうな犬に生まれ変わってしまいます。

人間だったら生まれ変わって、不幸な目にあったら相当参りますよね。もう生まれ変わりたくない、って思いますよね。

でもベイリーはそんなネガティブなことは言わないんですよ。放置されても、ベイリーは飼い主を責めません。
色々な経緯を経て、家を出ることになったベイリーは、ひとりで生きていくことを決意。いわゆる野良犬になってしまうんです。でもそこでも「あの家には帰らないほうが良さそうだな」と冷静に分析。さすがに何度も生まれ変わっていると、善し悪しがわかってくるんでしょうか。

そんな不幸な目にあいながらも、偶然が重なり、なんと、ついに!50年ぶりに、おじさんとなったイーサン(デニス・クエイド)と遭遇。やっぱり健気に、素直に、人を信じて生きていくといいことがあるんですね。見習いたいですね。

おっさんイーサン(デニス・クエイド)とやっと出会えたベイリー。でも、イーサンはベイリーが生まれ変わったと気づくのか!? (C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC

イーサンと再会できたあたりから、大泣き必須です。ハンカチどころじゃありません、犬好きの人はバスタオル持参しましょう。犬を飼うことをあきらめた筆者ですら、ハンカチなしでは見られませんでした。

結果、この映画を見て思ったのは、自分の汚れちまった心を見つめ直し、犬のように忠実に素直に生きていけば、
回り道をしてでも幸せになれるということ。

まぁ、よくできたハッピーエンドって言う人も出てきそうな映画ではありますが、それでもいいじゃないって思います。

そんな器が広くなる『僕のワンダフルライフ』、劇場でお楽しみください。